【野球】野球離れ歯止めのカギは…保護者の“お茶くみ当番”撤廃にあり?

 高校野球では、また新たな改革が進みつつある。日本高野連が発足した「投手の障害予防に関する有識者会議」は20日、来春センバツから1週間に500球の球数制限を設ける答申書を同連盟・八田瑛二会長に提出。29日の同連盟理事会で諮られ、承認された。

 この提案は単なるケガ防止の対策だけではないように映る。議論の発端となった新潟県高野連・富樫信浩会長は「何で落ちているの?と。(何で)野球を継続してくれないの?」と減り続ける野球人口を危惧し、県内でさまざまな取り組みに尽力してきた。今春の新潟大会で「1日100球」の球数制限を導入しようとしたのも、あくまでその切り口の一つだ。

 子どもの野球離れは新潟だけでなく、全国的な悩みの種だ。今夏の甲子園で準決勝の前日に加えて決勝の前日にも休養日が設けられたように、球児の故障リスクを軽減する対策は徐々に実現されてきた。しかし、ルールや日程の改正ではケガで競技を断念する選手が出るリスクを減らす効果しか生まれないと言われれば否めない。

 今秋にかけてラグビーW杯が盛り上がり、来年にはいよいよ東京五輪が控える。野球がこのまま発展していくには、多様化するスポーツ界で野球を選んでもらうことが肝心だ。子どもに野球を始めてもらう工夫として、星稜名誉監督の・山下智茂氏と元ロッテ投手の木樽正明氏とで意見が一致していたことが印象的だった。

 その対策とは、野球チーム内で保護者に課せられるお茶くみ係の廃止だ。山下氏は「あるチームはお茶当番をなくしたら40人が新加入した」と石川県内で実際にあったケースを紹介していた。現在、地元の千葉・銚子市で行政アドバイザーを任せられている木樽氏も「お茶くみだとか役目があって大変だから」と地元の少年野球チームに当番制をやめるように呼びかけている。

 石川県内の中学3年生を対象にした野球塾に講師役として参加する山下氏、銚子市内で小、中、高いずれのカテゴリーでも野球教室を開催する木樽氏。野球少年たちの“現場”を肌で知る2人だからこそ、その言葉には説得力があった。

 考えてみれば、子どもが野球を始めるには親の協力が必要不可欠だ。バットやグラブなど道具も多く、経済的な負担も他の競技と比べれば大きい。保護者にとって平日に仕事をした上で、毎週末にチームの手伝いをすることがどれだけ大変なことか。

 木樽氏は行政アドバイザーの活動を通じ、「母親がイニシアチブを取って、母親の考えでスポーツをやる種目が変わるっていうのがよくわかった」と痛感したという。野球をする子どもを増やすには“選手ファースト”の改革を進めるのはもちろん、保護者目線での対策もカギを握っている。(デイリースポーツ・佐藤敬久)

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