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【野球】古豪関大の応援団が神宮の杜で見せた「利他愛」の精神

神宮球場のリーダー台で応援の指揮をとる関大・上杉応援団長(中央)
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 野球の明治神宮大会・大学の部(11月15~20日開催)は慶大の19年ぶり4度目の優勝で幕を閉じた。関大の47年ぶりとなる日本一はならなかった。古豪同士の対決となった決勝戦。両校応援団、ベンチ外の野球部員、OBらが繰り広げた応援合戦もまた、見応え十分の古豪対決だった。

 試合前にはエールを交換し、互いに学歌を斉唱。試合後には再びエール交換で締める。相手からエールを送られている間、応援団長はリーダー台の真ん中に立ち、90度お辞儀をした状態で受ける。終われば顔を上げ、拍手で返す。神事のごとき伝統の光景は選手、応援席の心を一つにする。

 今大会47年ぶりの決勝進出となった関大の応援席は、神宮を庭とする慶大にも負けない盛り上がりを見せた。第97代団長・上杉翼さん(22)ら4年生の応援団員(リーダー部、吹奏楽部、バトン・チアリーダー部)にとっては、大学生活最後の野球応援の舞台。打倒慶大へ一丸となった。

 相手は東京六大学。関西の代表として負けるわけにはいかない-というのが一般的に想像できる思いではないだろうか。しかし、応援団員らの心の中はそうではない。

 上杉団長はまず「知名度は慶応の方が上であるのは間違いないので、神宮の決勝の場でエール交換できたことを誇りに思います」と慶大に敬意を表した上で、こう続けた。

 「相手が強豪校だとか有名大学だとかは気にしていません。自分たちの使命は関大を応援することなので、どこが相手だろうと、全力で関大を応援し続けるつもりで挑みました」

 確かに応援団の熱量は常に高いレベルで一定している。リーグ戦も全国大会も同じ。相手による違いはないし、硬式野球部以外の部の応援でも、その姿勢が変わることはない。負ければ「応援が悪かったから」と自分たちを戒める。その根底には「利他愛」の精神が流れている。

 利他愛(りたあい)-すなわち、自分のことよりも人のために全力を尽くすこと。応援は人のため。だからこそ相手に関係なく常に全力。神宮のスタンドでは、涙を流しながら声を張り上げる団員も多かった。試合後には野球部員らと一緒に記念撮影。遠慮がちにしていた応援団員たちを見た野球部の顧問・田尻悟郎氏(外国語学部教授)が「君らのおかげでここまで来られた。一緒に写真を撮ってほしい」と誘い入れたものだった。

 応援団の厳しさは今も昔も大きくは変わらない。先輩後輩の縦の関係は絶対。華やかなイメージで誤解されがちだが、これはチアリーダーたちも同じだ。ちなみに関大バトン・チアリーダー部は競技チアの大会にも出場しており、今年は全国大会で初めて決勝へ進出。結果は12チーム中11位だったが、スポーツ推薦なしのメンバーで全国大会決勝の舞台に立ったのは、大学関係者、大会関係者をも驚かせた快挙だった。応援活動と並行しての猛練習を支えたのは、応援団で培われた精神力だったのかもしれない。

 あまりの厳しさに「何百回、何千回と辞めたいと思ったことはあった」という上杉団長。それでも続けられたのは「先輩、同期、後輩、いろんな人々とのつながりがあったから、つらく苦しい時でも頑張ろうって気持ちになれたのかも」と4年間を振り返る。

 「日本にしかない“応援”という文化を、もっともっといろんな人々にアピールしていきたいです」。4年生団員の多くは来年4月、社会へと飛び出していく。その形は変わっても“応援”は続く。人とのつながりを大切にしたこと、応援、利他愛の精神は仕事でも必ず生かされるはず。彼ら、彼女らの未来にエールを送りたい。(デイリースポーツ・岩田卓士)

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