【スポーツ】関取最年長の豊ノ島、年齢重ねるごとに染み込む“味”

 大相撲は元関脇安美錦(41)=現安治川親方、元関脇嘉風(37)=現中村親方=が相次ぎ引退し、現在は元関脇の十両豊ノ島(36)=時津風=が関取最年長を張る。若手の台頭著しい角界にあって、やはりコメントはベテランに味がある。

 現在行われている九州場所の2日目、21歳の琴ノ若(佐渡ケ嶽)に敗戦。父の初代琴ノ若(現佐渡ケ嶽親方)とは幕内で2戦2勝。その子、琴ノ若(当時は琴鎌谷)とは幕下で1度対戦し勝っていたが、これで対琴ノ若父子には計4戦目で初黒星になった。

 「自分が上を目指す上でまだ対戦できるように。幕内で対戦できるように。向こうはこれからだから負けないように」。壁になることを宣言した。

 今場所は元横綱朝青龍のおい、豊昇龍(20)=立浪=も新十両昇進。朝青龍とは9度対戦し2勝7敗。「おれたちが上がってきた時もそういうもんだった。まだそんなことは考えないけど、引退するというのはそういうこと。若手が上がってくるということ。その中でできるだけ辛抱できるように老け込まず頑張ります。(琴)光喜関の子が上がってくるまで」。まだ小学生の元大関琴光喜の長男との対戦まで現役続行を予告し?!笑わせた。

 豊ノ島といえば験(げん)が大好き。昨年の九州場所は負けては験直し、勝っては験担ぎで取組後にラーメンを食べて部屋に帰るのがルーティンだった。

 今年は初日、白星発進後、館内で販売されている梅ヶ枝餅(うめがえもち)を購入。太宰府名物の白い円形のお餅で白星を連想させる。しかし2日目に敗れると、さっそくラーメンを投入した。

 誤算は年齢だった。「35歳から36歳。たった1年が大きな違い。夕方にラーメンなんか食べられなくなった。夕方にラーメンを食べると夜が食べられなくなる。もともと腹は弱いからね」。食べるのは若い食べ盛りの付け人に任せて「俺は店の外で待とうかな」と、苦肉の策を披露した。ただ、毎日となれば付け人も喜ばない。「おい、ラーメン、食うよな」と、付け人に言っても生返事が返ってくるだけになっていた。

 自身が身長168センチのため、対戦経験が少ない小兵を不得意としてきたが、5日目、体重131キロでスピード自慢の翔猿(追手風)を突き落としで下した。どうやって苦手意識を克服したのかも、年齢を重ねて、たどりついた考えがあった。

 「得意、不得意を気にするのでなく自分の思う相撲を取れば悔いはないかな、と。相手に合わせにいくから得意、不得意ができる。合わせにいかなければいい。何も気にならなくなる」。

 プロ18年目。勝負の極意に深さを感じさせる一方、トークも冴(さ)え渡る。

 初日から○●○●○で勝敗が交互。相撲用語でいわゆる“ヌケヌケ”。6日目、行きの車中、気分を盛り上げるため付け人に音楽をかけるようお願いしたという。

 付け人が選択したミスターチルドレンの曲を聴きながら気分も上々。その気分のまま場所入りしようかという時、かかった曲が「シーソーゲーム」。

 「むちゃくちゃ俺の星のことやん。俺の星がシーソーゲームって言ってるのか」と、突っ込み。車中が和んだ効果か、6日目にして初連勝し、ヌケヌケを脱出した。

 7日目も勝って3連勝で5勝目。来年1月の初場所での十両残留が当確した。場所前から右アキレス腱の状態が良くなく、稽古が十分に積めなかった中、経験値でノルマをクリアしたのはさすが。「令和2年も関取で迎えられる」との言葉に実感を込めた。

 そして、この日も「きのう行ったら『お帰りなさい』って店長に言われたよ」と言う、すっかり顔なじみになったラーメン店へ直行した。(デイリースポーツ・荒木 司)

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