【野球】履正社の変わらぬ強さの秘訣 長年の「食育」への取り組み

 夏の甲子園で、悲願の初優勝を果たした履正社が、新チームになっても強さを発揮している。もちろん、個々の技量によるところも大きいが、学年に関係なくチームとして継続されている強みがある。それが「食」へのこだわりだ。

 履正社では10年ほど前から「食育」に力を入れてきた。履正社の平嶋大輔コンディショニングトレーナーは「僕が履正社に来させてもらって11年ぐらいになりますが」と話した上で、そのきっかけについてこう振り返る。

 「甲子園で上位にいく学校はホームランをたくさん打ったり、ガンガン外野を越える打球を打っているのに履正社は少ない。だから飛ばす力を付けるために筋力だけでなく体も変えていこうと。岡田監督の戦略とか勝ち方の勝負になる前に、パワー不足で負けるのはやめたいなと。そのために食事から見直そうと思ったことがターニングポイントでした」

 まず着手したのが、保護者を交えた食事の栄養面に関する講習。10年ほど前から新入生の入学後、ゴールデンウィーク中に講習会を開く。履正社は寮がないため、自宅から通う選手も多く、保護者に知識を持ってもらい、協力してもらうことが必要だからだ。

 平嶋トレーナーは「『これぐらい食べないといけない、こういうものを食べて下さい』ということを話します。入学した時に今年の井上(広大)とか野口(海音)の体を見たら、先輩はどうやってきたのかなと思うでしょう。これが継続している強みです」と話す。

 この講習会に加え、選手には時折、3日間の食事内容のアンケートを取る。それを元に、3年前から太田桃子管理栄養士に年に2、3度来てもらい、アンケートを踏まえて食のアドバイスを選手個々に送っている。効率良く栄養を摂取し、体作りを行うためだ。

 「栄養のこともですが、サプリメントにしても、意外と選手も効果が分からずに飲んでたりするので。『何のために自分はこれを飲んでるんでしょう?』とか。その効果を教えたりもします」と太田管理栄養士。こういったシステムがうまく循環し、チーム全体の肉体強化に成功している。体重が全てではないとは言え、今夏の出場校の登録選手の平均体重が最も重かったのが履正社だった。

 平嶋トレーナーはこうも話す。「量を食べることも大事ですが、それがプレッシャーになると楽しめない。楽しめるはずの食事が苦痛になるのは違います。ただ量を食べるというのではなく、バランス良く食べることが大事で、そういった知識は履正社を卒業してからも生きてくることだと思うので」。野球選手としてだけではなく、人としての基礎でもある食事。今夏の日本一は、地道な取り組みの成果であり、これからも良き伝統として続けられていく。(デイリースポーツ・道辻歩)

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