【スポーツ】松尾雄治氏とコンビを組んだ伝説のラガーマン 立ち飲み店経営で手腕発揮

 中央線荻窪駅。北口を出て、青梅街道の一本裏の路地に、その立ち飲み屋さんはあった。

 モルツの生ビールは250円。自分でジョッキをサーバーにセットして、お金を入れたら注がれる。焼酎、スピリッツ系もワンショット100円。ホッピーは冷蔵庫から勝手にとって、カウンターで250円を払うと栓を抜いてくれる。つまみは名物「煮込み」が300円。「カツ串」が150円。こちらは1人で店を切り盛りするマスターが作ってくれる。

 ほぼ、セルフサービス。そして、安い。マスターは「1人なので、お客さんにやってもらう。新しいお客さんには、常連さんがやり方を教えてくれる。気軽に立ち寄って、さっと飲める店をやりたかったんです」と話す。温和な表情が和気あいあいとした雰囲気を作り出しているようだった-。

 店を訪ねるその数時間前のこと。都内で元祖ミスターラグビー・松尾雄治さんを取材していた。話が一段落したとき、松尾さんから訪ねられた。

 「どこに住んでいるんだい?」

 杉並区であることを告げると、

 「じゃあ、あそこ、行った?小西の店」

 「知らないです」

 「小西の店っていうのがあるんだよ。日本代表で平尾と俺と、9番だった小西っていうのがいるんだけど。店、知らないの?」

 松尾さんはスマートフォンを取りだした。

 「もしもし?俺だよ。あのさあ、おまえの店、なんていう名前だっけ?え?『世界のこにし』?偉そうな名前つけたもんだね。今、新聞の人が来ていてさ。杉並に住んでるっていうんだよ。何丁目?電話は?分かった」

 松尾さんはほぼ一方的に話して電話を切った。住所と電話番号を教えてくれた。

 小西義光さん。サントリーでプレーし、日本代表キャップは23を数える名SH。83年、ウェールズ代表と敵地で対戦し、24-29の接戦を演じた伝説の試合で、トライも決めた往年の名選手である。SO松尾から、SH小西へ、強引に渡されたパス。行かないわけにはいかない。自分がラグビーボールになったかのように、取材を終えたその足で「世界のこにし」に向かったのだった。

 「オープンして1年半ですね」。現在は62歳になる小西さん。ラグビーから離れ、お店に専念している。お客さんが相次いで訪れる。経営は順調なようだ。ラガーマンの面影はあまりないが、訪ねてきたファンのお客さんと、にこやかに記念写真に応じるシーンもあった。

 松尾さんが「偉そう」と指摘した店名の由来を聞いてみた。「世界のお酒が飲めるという意味で『世界のこにし』なんですよ」と説明してくれた。なるほど、こだわりのウイスキー、そしてワインも豊富にある。世界各国のものを安価で飲ませてくれる。

 「W杯のときには、ここで中継を流して、お客さんと盛り上がりたいですね」。酒を酌み交わし、レジェンドの言葉に耳を傾けながら、W杯をテレビ観戦する。今年の秋は、そんなシーンで盛り上がりそうだ。(デイリースポーツ・鈴木創太)

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