【芸能】「NARUTO」完コピ再び 2次元の歌舞伎化で若年観客の掘り起こし成功

 京都南座で新作歌舞伎「NARUTO-ナルト-」(~26日)が上演されている。岸本斉史氏の同名人気少年漫画が原作で、落ちこぼれ忍者のうずまきナルトが友情と戦い、そして成長の物語。主人公のナルトに坂東巳之助、ライバルのサスケに中村隼人といった花形役者が演じ、さらに重鎮の中村梅玉がラスボスのマダラ役で脇を固めている。人気漫画が原作とあって、客席は鑑賞教室などの学生の姿も多く見られ、新たな観客層の掘り起こしに一役買っている。

 少年漫画が原作の歌舞伎といえば、2015年に市川猿之助主演で上演された「スーパー歌舞伎セカンド・ワンピース」が最初。「ワンピース」でも原作の再現度の高さが話題になったが、「NARUTO」も原作ファンから高い評価を得ている。

 敷居が高いと思われがちな歌舞伎だが、このビジュアルでまず若い観客層を引き込むことに成功。セリフも現代語で、ナルトの口癖「〇〇だってばよ」や、サスケの「ウスラトンカチ」なども随所に飛び出す。また初心者には分かりづらい義太夫の語りには、まるで舞台美術の一部のようにテロップが流れるようになっている。

 忍者を描いた作品で、登場人物の自来也、綱手、大蛇丸などは歌舞伎の演目「児雷也豪傑譚話」の登場人物ともリンクするなど、もともと歌舞伎との親和性は高い。立ち回りのツケ打ち、本水を使ったシーンなど、歌舞伎ならではの見どころも多い。また音楽もロックと義太夫が融和している。

 こうした「若者が興味を持つ歌舞伎」ということで、客席は制服姿の学生が多いのが特徴。「人生初歌舞伎はNARUTO。面白かった~」「学校の芸術鑑賞で見てきました!めちゃめちゃかっこいいし違和感なかった」「観に行くのが憂鬱だったけど、満足感半端なし」「堅苦しいかと思ったら、超楽しかった」といった声がネットに並び、掘り起こしに成功している。実際に終演後の劇場周辺では、楽し気に舞台の感想を言い合う学生の姿が見られる。

 ナルトを演じている巳之助は、宿命を背負いながらも、明るくひたむきで、友情に厚いキャラクターのとらえ方が的確。「ワンピース」で演じたボン・クレーも「完コピ」と評判をとったが、なりきり度、振り切り度は今回も秀逸。また身体能力が高いのも魅力のひとつ。しっかりと腰の入った安定した動きは、平成の名優で舞踊の名手だった父の故三津五郎さんをほうふつとさせる。

 サスケ役の隼人は、花形No.1イケメンの呼び声も高く、陰のある匂い立つような色気で客席の女性をノックアウト。ラストのナルトとの本水を使った大立ち回りでは、憎しみや悲しみを希望へと昇華させている。

 こうした若い観客層を掘り起こしやすい漫画やアニメなど2次元の歌舞伎化は今後も続き、宮崎駿監督のアニメ「風の谷のナウシカ」も尾上菊之助主演で、12月に東京・新橋演舞場で上演される。

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