【野球】オリックス・アルバースこそ日本のすべての投手の先生だ
来日2年目を迎えたオリックスのアンドリュー・アルバース投手。その投球スタイルはいつも変わらない。どんどんストライクを投げ込む。遊び球などない。“慎重にボール球から入って”なんて言葉はこの助っ人の頭にはないだろう。たとえ本塁打を打たれても次の打者には何もなかったようにドンとストライクを取りに行く。どんな場面でも攻めの姿勢を崩すことはないのだ。
このアルバースこそ日本人投手の、それもプロだけでなく、少年野球から高校野球、草野球まで、すべての投手のお手本ではないかと見る。
剛速球があるわけではない。直球は平均すれば136、7キロといったところ。日本人でも150キロを投げる投手がザラにいる世界では異色にも映る。スピードはなくてもとにかくストライクを投げ込む。その勇気が素晴らしい。
本人に投球スタイルについて聞いてみた。
「1番打たれない可能性が高いのは追い込んだときなんだ。自分の持ち球の能力を考えたとき、カウントを悪くすると打たれやすくなる。ストライクゾーンで勝負するのが自分のスタイルだ」
自分の持てる能力を最大に発揮するために、攻めの投球を貫いていると明かす。
では、弱気になることはないのだろうか。例えば本塁打を打たれたら慎重になるものだが。
「打たれた打者に次の打席で投げるまでに原因は考える。こういう問題があったからだという答えを見つけられれば違うアプローチができる。どんな場合にも攻めることは変わらない、アグレッシブにならないという選択肢には決してならない。もちろん状況によっては仕方なく四球というのはありえるけどね」
アルバースの辞書に“逃げる”の文字はない。攻めの投球を続けられる秘けつはなんだろうか。
「質のいい球を投げようと心掛けている。外の低めというのが一つの持ち球。ヒットされたら切り替えて次の打者に向かう。常にカウントを悪くはしたくない。自分の有利になるように。そこはこだわっている」
日本プロ野球でも長くいわれてきた外角低めが生命線だと言う。そこに投げられる技術を習得したことが現在の活躍に至っている。
高山投手コーチは「右打者の内角に投げるクロスファイア。あの武器があるから攻められる。それと野球に対して真摯(しんし)に向き合っている。よく考えている。頭がいい投手。マウンドにいるときは絶対に弱気は見せないしね。素晴らしいよ」と称賛した。
弱気を見せない-。チームメートもマウンドにいるときのアルバースは別人だと口をそろえる。獲物を求める獣のように攻撃的なのだと言う。
「大の負けず嫌いなんだ。何でも負けたくない。野球でもそう。一対一になれば戦いだからね。やるかやられるかだと思っている。そういう気持ちを持っているから燃え上がってくる。球場を離れたらみんなと楽しくやりたいけどね」
ニッコリと笑った。戦闘モードとオフを切り替えられる精神力も見習うべきだろう。
米国のマイナー時代に生活費を稼ぐためにオフは臨時教員を務めたアルバース先生。この左腕こそが投手のお手本に違いない。そう確信した。(デイリースポーツ・達野淳司)