【野球】「あれがあったから」ヤクルト高津2軍監督の支えは伝説の日本シリーズ

 日本シリーズの熱戦が続いている。初戦の引き分けを含め、第5戦まで2試合が延長戦。頂上決戦には、レギュラーシーズンとはまた違う1試合、1プレーの重みをあらためて感じさせられる。

 そんなポストシーズンの戦い。「あのプレッシャーの中で試合に出られたら、選手にはすごい経験、財産になるんだよ」と振り返ったのは、NPB歴代2位の286セーブを誇るヤクルト・高津臣吾2軍監督。幾多の修羅場をくぐり抜けて来た名投手にも、足がガクガクと震えるような場面が「一度だけあった」という。

 “伝説の日本シリーズ”と称される93年のヤクルト-西武。2勝1敗で迎えた第4戦だった。試合は四回に池山の右犠飛で1点を先制。八回表の守備では、中堅・飯田が本塁への好返球で同点となる走者の生還を防いでいた。八回を終えて1-0。虎の子のリードを絶対に守り切らなくてはいけない展開。ブルペンで九回の出番に備える間も、球場全体を包む異様な緊張感が、守護神にのしかかった。

 「水を飲んでも飲んでも、喉がカラッカラ。あんなのはあの時だけだった」。マウンドに向かうと、打席では西武の主砲・清原が威圧感たっぷりに仁王立ちしている。「どうせえっちゅうねん、って思ったよ」。先頭の清原には四球。しかし、何とか後続を打ち取って、役目を果たした。この試合でシリーズ制覇に王手をかけたヤクルトは、結局4勝3敗で前年のリベンジに成功した。

 高津監督にとって、この年がプロ3年目。抑えに転向して初めてのシーズンだった。伸び盛りの時期に体験した天下分け目の大一番。貴重な体験は「あれがあったから、その後はどんな試合でも『あれに比べたら大丈夫』と思えるようになった」とプロ生活の支えになったという。

 25年が経った今、若手を1軍に送り出す立場。今季のヤクルトは2年目の中尾や梅野、3年目の高橋らがプロ初勝利を挙げ、ドラ1ルーキーの村上はプロ初打席本塁打も放った。確実な成長を感じるからこそ、桁違いの重圧がかかり、大きな糧にもなるポストシーズンの舞台を「経験して欲しいな」と願っていた。

 今年の日本シリーズでも、ソフトバンク・上林ら存在感を示している若手がいる。いつの日か「あのシリーズはすごかった」と、選手のターニングポイントとして語られるような戦いになることを期待したい。(デイリースポーツ・藤田昌央)

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