【野球】ソフトバンク・ブルペン捕手が気にする阪神に移った弟の存在

阪神・飯田優也とソフトバンク飯田一弥ブルペン捕手
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 「今日、プレーボールは何時ですか?」

 8月26日、試合前のグラウンドで声を掛けてきたのはソフトバンクの飯田一弥ブルペン捕手。一瞬、「え?」と思ったが、すぐに理解できた。もちろん自軍のはずはない。東京ドームで行われる“伝統の一戦”を気にしていた。「14時だよ」と答えると、ちょっと残念そうな顔をした。この日、ソフトバンクは西武と13時から試合だったからだ。

 その日、阪神の先発は移籍後初登板の飯田優也だった。2人は兄弟。優也は5つ下の弟だ。

 阪神・飯田は3回6安打4失点と役割を果たせずに降板。黒星は免れたが、ほろ苦い虎デビューとなってしまい、翌日に2軍降格となってしまった。「連絡はちょこちょこ取っています。むしろ今までは同じチームにいたから会って話せたので、今の方が取り合う機会は多いですね。だけど、今はショックを受けていると思うので控えています」と兄・一弥は弟を思いやった。

 一弥もかつてはソフトバンクの選手だった。独立リーグの高知から11年育成ドラフトで入団。優也は1年遅れで、同じく育成ドラフトで入団してきた。「年齢が離れているから同じチームで一緒にプレーをするのはホークスが初めてでした」。捕手と投手だ。いつかは1軍で兄弟バッテリー実現か、と話題になった。

 当時「それが夢ですね」と語る一弥に対して、優也は「支配下になれる選手は一握り。そんな甘いことは言っていられない」とつれない言葉。「兄ちゃん」とは言わず「一弥」と呼んだ。思いやる兄とクールな弟。どの家庭にもありそうな構図だった。結局、一弥は2年で戦力外となる。共にプレーできたのは1シーズン限りで、夢は実現できなかった。

 14年からはスタッフ、選手という立場になった。一弥は言う。

 「ヒトから聞いた話ですが、優也は契約更改で背ネームの「Y」を取ろうかと球団に提案されたのを断ったらしいんです。『兄貴がいるから』と。そんなところもあるんだなと、うれしかったですね。小さな頃は兄弟げんかばかりで仲は悪かった。今は違う。2人で食事にも行きますし。今回のトレード。アイツにとってはチャンスだと思うし、地元兵庫でプレーする機会が増えるから親孝行にもなる。本当に頑張ってほしい」

 一弥は昨年までずっとファーム担当だったが、今年から1軍に帯同している。「いつか日本シリーズで会えればいいですね」。それぞれの道を歩む兄弟に、新たな夢ができた。(デイリースポーツ特約記者・田尻耕太郎)

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