【競馬】ツイッターから広がったスマートレイアー応援の輪 “姐さん”の走りに注目

宝塚記念でパドックを周回するスマートレイアー。奥に応援する垂れ幕がチラリ(写真提供:Misha様)
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 天皇賞・春が終わった数日後のこと。栗東トレセンの調教スタンド1階にあるうどん屋さんで、スマートレイアー(牝8歳・栗東、大久保龍志厩舎)を担当する加藤公太調教助手と何気なく話をした時のことだ。

 彼とは、かつて私が僚紙・馬サブローに在籍中、解散した佐山厩舎を担当していた時からの仲。幸運にも、昨年暮れの香港遠征の取材をさせてもらった縁もあり、私の中でレイアーは特にお気に入りの一頭だ。

 「次は宝塚記念?」

 「どうなんですかねえ。もし使うとして、出られそうですか?」

 「まあ、例年の感じなら大丈夫じゃない?万が一、賞金下位でもレイアーならファン投票で出られるっしょ」

 「いやいや。そんなに人気ないですよ。今までパドックで引っ張ってても、横断幕なんて一度も見たことありませんもん」

 「えっ?意外。一度もないの?」

 「ええ、一度も。やっぱりクラブの馬と違って、個人の馬主さんだからですかね」

 心の中で思った。“レイアーは絶対に人気がある”。一度も横断幕が出ていなかったのは意外だったが、あの鮮やかな芦毛に魅了されたファンはかなりいるはずだ。そこでこんな提案をしてみた。

 「迷惑じゃなければ、SNSで呼びかけてみようか?ウチもツイッター(うま屋・デイリースポーツ編集部)やってるし、担当者に声かけてみるわ。もしかしたら反響があるかもよ」

 その後、レイアーの宝塚参戦が決定。無事にレース当日を迎え、パドックを見てみると…ありがたいことに、ツイッターに反応してくれたファンのご厚意で、鮮やかなピンクの横断幕が掲げられていた。「2枚ありましたね。ありがたいです。馬主さんも喜んでくれたと思います」と加藤助手。サッカーでいうサポーターのように、競馬関係者にとっても、ファンの応援は大きな励みとなる。

 ところで、その横断幕を見て気になったのが“姐”と書かれていたこと。人づてに聞くと、レイアーは一部のファンに“姐さん”と呼ばれているそうだ。「去年の秋ぐらいからですかね、そう呼ばれるようになったのは。恐らく、年を取ってきたからでしょう」。そう言って苦笑する同助手だが、香港遠征では初の海外渡航に戸惑うレッツゴードンキ(牝6歳、栗東・梅田智之厩舎)に寄り添い、寂しがらないようにサポートしていたそう。梅田師が「助かった」と感謝を口にしたように、年長馬として頼もしい一面もある。

 ちなみに、この“姐”という字。主に家族を指す“姉”ではない。辞書を引くと“任侠な集団で、目上の女性や兄貴の妻・愛人を呼ぶとき”と書かれている。つまりファンが重ねるレイアー像は、清楚なオネーさんではなく、男勝りのアネさんだ。「確かに、レイアーは男馬と戦うレースによく使いますし、またそこで結構いい競馬をするんですよ。なかなかセンスがいいですよね」。今では加藤助手もお気に入りだ。

 ちなみに、宝塚記念後にネットを見ると「姐さん、大丈夫ですか!」「姐さんになんてことを!」という書き込みがあった。レースは10着に敗れたが、VTRを確認すると、ゴール前で前の馬に挟まれ、大きくバランスを崩す場面が映し出されていた。はた目から見るそのさまは、危険をかえりみず男馬に戦いを挑む姐御と、気が気じゃない舎弟達…まるで任侠映画のワンシーンのようだ。

 幸い、レース後は「無事でした。今は放牧中です」とのことで、まずはひと安心。それでも、年齢的なことを思えば、そろそろ“引退”の2文字が頭をよぎる。今後はどうなるのだろうか。舎弟達(?)もさぞかし気になっているに違いない。「どこに使うかは未定ですが、現役続行のつもりで放牧に出ています。8歳の牝馬にこれだけたくさん応援をしていただいて…。“ありがとう”と感謝の言葉を伝えたいです」とメッセージを送る。

 私もファンの一人。現実的に可能性は薄くなりつつあるが、レイアーには悲願のG1タイトルを手にしてもらいたい。そのためには、ファンのさらなる熱い応援が必要だ。競走馬として、終幕迫るこれからの戦いは尊いものとなる。まだまだ横断幕は大歓迎。ぜひ競馬場へ足を運び、全身全霊をかけて戦う姐さんの“残照の輝き”を見届けてほしい。(デイリースポーツ・松浦孝司)

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