【野球】藤浪を救った1通のLINE 胸に響いた大瀬良の言葉

2回、大瀬良(右)に死球を当てた藤浪(19)=2017年8月16日
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 阪神・藤浪晋太郎投手(24)が15日の楽天戦で、昨年5月4日以来、407日ぶりの白星をつかみ取った。苦しんだ1年間を経ての待望の1勝。復活ロードには、藤浪を支えた1通のLINEがあった。

  ◇  ◇

 苦しいこともあるだろう

 なき度(た)いこともあるだろう

 これらをじつとこらえてゆくのが男の修行である-

 何度、自宅の壁を眺め、歯を食い縛っただろう。藤浪が住むマンションのリビングに、大日本帝国海軍連合艦隊司令長官、山本五十六の言葉が飾ってある。昨季、必死に耐えたはずの瞳から2度、涙がこぼれ落ちた。まずは4月4日・ヤクルト戦。畠山への死球から両軍が入り乱れ、壮絶な乱闘騒ぎとなった。

 昨季不振の最大要因に挙げられるが、あの試合以上に苦しんだマウンドがある。8月16日の広島戦だ。故障以外で初めて2軍落ちを経験し、3カ月ぶりに臨んだ1軍登板。抹消期間は登板日以外でボールボーイを務め、ネット裏ではビデオ撮影。配球チャートも付けた。「全てが勉強になる」と、5年目にして初体験の連続。苦しんだ期間を経て挑んだ。

 結果的に4回2/3を、7安打7四死球で3失点KO。二回、投手・大瀬良の左肘付近に死球を当てた。降板後、申し訳なさから涙が止まらなかった。親交も深い先輩右腕には、すぐにLINEで謝罪した。「気にしないで」。死球後の笑顔同様、返信も優しかった。大瀬良は文面にこんな思いを込めていた。

 「彼には誰にも投げられない直球がある。僕に当てたくらいで、長所を見失ってほしくない。いろんなことを言う人がいる。でも、自分を信じてほしい」。昨年12月、藤浪は自分探しの旅に出た。理学療法士や動作解析など、各部門の専門家を頼って東奔西走。日の当たる時を信じ、風雪に耐えて咲く。色鮮やかな梅花のように、ひたむきに、ひたすらに花開く季節を待った。

 「男の修行」は今も続く。それでも大瀬良の言葉が胸にはある。「いま、自分が速い球が投げられなかったら、なんの取り柄があるんだろって。ただのコントロールが悪い投手。自分は見失いたくない」。悔し涙を、うれし涙に変えた。藤浪を救った1通のLINE。407日ぶりの勝利は、耐えて、信じてつかんだ1勝だ。(デイリースポーツ・田中政行)

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