【スポーツ】3人制バスケ日本代表 “模範解答”じゃない東京五輪への思い

 東京五輪まで、3日であと813日。五輪種目に打ち込む多くのアスリートは、2年数カ月後に来たる夢舞台を見据え、日々努力を続けている。

 バスケットボール3人制、通称「3×3」(スリー・バイ・スリー)は、東京五輪から導入される新種目。コートは横が5人制と同じ15メートル、縦は半分以下の11メートルで、3人対3人で争う。普通のシュートは1点、5人制の3点シュートが2点の扱いとなり、試合時間は10分(随所で時計が止まるので実際は20分程度)。ただしどちらかのチームが21点以上得点するとその時点で終了となる。ショットクロックは12秒と短く、スピーディー。個の力がより必要とされるのも特徴だ。

 日本代表選手は男女4人ずつ。「シュート力」(長谷川誠コーチ)を重視したメンバーが4月27日に発表され、5月1日まで中国で行われたアジア杯を戦った。結果は女子4位。男子は銅メダルを獲得する快挙を成し遂げた。

 その女子日本代表最年長、37歳の立川真紗美はとにかくパワフルだ。20年は39歳で迎えるが、きっと元気にコートを駆け回っているのだろうと思う。

 しかし彼女は東京五輪を目指すと公言してはいない。「モチベーションは毎日『あした』」。週6でバスケのコーチとして生計を立てながら、その合間を縫うように競技と向き合う日々だ。理由は「いい年なんで」。そう笑って言うのだが、それは決して逃げではない。

 立川はもともと5人制の選手。高卒から実業団で計15年プレーし、アテネ五輪女子日本代表にも選ばれた実力者だ。しかし腰痛と膝の故障で「ドクターストップ」(立川)。これ以上現役を続けると今後の生活にも支障が出るだろうという状態まで悪化したため引退を勧められ、13-14年シーズンをもって決断した。

 3人制との出会いはその数カ月後。男子の3人制ストリート大会に出場したことがきっかけだった。

 実業団でプレーしていたときは「私も3人制は、チャラチャラした雰囲気って思っていた」と立川は言う。DJがいて、音楽が鳴り響く中、コートが明るく照らされる。まるでショーのような雰囲気は、365日を体育館ですごす彼女にとって違和感があった。

 しかし、実際は違った。「すごい興奮した。女子でも負けたくないって思ったんです」。その中でプレーする快感は格別だった。しかし当時、女子のエキシビションマッチこそあれ、男子のチームに混じって出場するような女子選手は皆無。それでも現日本代表の男子選手らとも果敢にぶつかり合った。3人制を極めようとする選手らの思いも知った。昔の自分には「本当にごめんなさい!って感じです」。魅力にとりこになった。

 もちろん膝も腰もボロボロだが、「誰にも止められずにバスケができるのがうれしい」。5人制より接触の激しい3人制をプレーしてから、体重は約5キロ増え、腕回りも太くなった。体脂肪率は「現役の時より2%増えちゃった」と苦笑いで明かしたが、11%を維持。それだけで一線級のアスリートのように感じるが、立川の中では少しだけ違うという。

 五輪を夢見た14年前。1年間、1日も休むことなくコートに立ち続けた。常にバスケと向き合い続けること。立川にとって五輪は、全てをささげて臨むに等しい舞台だった。

 いまは生活もある。待っている教え子もいる。当時とは比べものにならないほど、練習量は少ない。むしろ練習するためには自らコート代を支払い、練習場所を確保する必要すらある。代表に選ばれるための大会の参加費も当然自腹。「お金を自分で払う日本代表」(立川)だ。

 男子も含め、競技環境は決して恵まれているとは言い難い。競技性から、軽く見られやすいのも事実だ。それでも「五輪に決まって、世の中に認められたボール競技になったって感じた」と立川。日本バスケットボール協会の三屋裕子会長も「3人制の本格的な強化活動はスタートしたばかりであり、今後の取り組みこそが肝心」とコメントしている通り、今は3人制バスケにとって変革の時だ。

 もちろん若手の台頭は望ましいし、実業団チームからのスカウトなども含め、協会は強化に動く方針という。しかし監督がベンチに入れない3人制では、選手個々が試合を読み、考える力も必要。立川の経験値と明るさは日本の武器だ。

 立川にとって東京五輪は「コツコツと、1日でも長くやる中で、目指せる位置にいたら」という舞台。今の自分が五輪を目指すとは、おこがましく感じてまだ言えない。年齢的なことももちろんあるが、それは五輪を軽視しているのではなく、むしろ五輪を尊く思っているが故だ。

 われわれ記者の立場からすると、選手が「東京に出たい」と言えば応援したいし、原稿にもしやすい。しかし2020年という舞台が近くて大きすぎて、「東京五輪が目標」という“模範解答”が、あまりにも氾濫しすぎてはいないだろうか。彼女のような選手がいてもいい。報道に携わる者としての姿勢を自らに問いかけつつ、「頑張る」よりもはるかに固い決意と日の丸を背負う覚悟を見た気がした。(デイリースポーツ・國島紗希)

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