【スポーツ】東京五輪目指す高山勝成が投じた「調停」という一石 対話は実現するのか

 両者の対話は実現するのだろうか-。ボクシングで日本初の世界主要4団体制覇を成し遂げ、17年4月にプロを引退、アマチュアとして2020年東京五輪出場を目指す高山勝成(34)=名古屋産大=が、自身のアマチュア選手登録を認めない日本ボクシング連盟と日本オリンピック委員会(JOC)を相手方とし、日本スポーツ仲裁機構(JSAA)にスポーツ調停の申し立てを行った。

 高山側は日本連盟が自身のアマ登録を不当に拒否し続けていると主張し、JOCには加盟団体規程を基に日本連盟への適切な助言、指導を求めた。19日に大阪市内で行われた会見で高山は「37歳になる東京五輪が自分にとってラストチャンス。自分の思いを届けられるように話し合いの席を設けていただきたい」と訴えかけた。

 アマ統括団体である日本連盟はプロ経験者のアマ転向を一切認めておらず、高山はプロ引退から1年を経た現在もアマ登録を許されていない。3月には高山のアマ登録を求める約2万5千人分の署名とアマ登録申請書類を日本連盟大阪事務局に持参したが、インターホン越しに「責任者不在」を告げられ“門前払い”された。その後も日本連盟側に対し、簡易書留で面会要望の連絡を行ったが、開封されることなく受け取り拒否で返送されている。

 日本ボクシング界においてプロとアマの溝は深いが、世界に目を向けると16年6月には国際ボクシング連盟(AIBA)がプロ選手の五輪出場を解禁し、同年のリオデジャネイロ五輪には元世界王者2人を含む4人のプロ選手が参加している。プロ解禁が決議された臨時総会では日本連盟も賛成票を投じており、高山側の代理人を務める岡筋泰之弁護士はAIBA決議との矛盾を指摘する。岡筋弁護士は他にも全競技でプロ参加を認めている五輪憲章違反、自由競争を阻害することによる独占禁止法上の問題なども指摘。高山がアマ選手登録される権利を有する地位にあることを求めていく。

 一方で日本連盟の山根明会長は調停の申し立てを受け「応じるつもりはない。連盟がルール違反をしているのなら(調停の)テーブルに着くが、何一つ落ち度はない。連盟はびくともしない。(高山は)自分が五輪に出たいためだけにアクションを起こしており論外だ」と怒りを露わにした。

 1926年に全日本アマチュア拳闘連盟として発足し、90年以上の歴史がある同連盟は13年に組織の名称から「アマチュア」の文字を外したが、プロとは依然として一線を画している。山根会長はかつて「プロは生活のために、アマは学校教育の一環としてやってきた歴史がある。その歴史がひっくり返ることはない。(高山の五輪出場は)1000%あり得ない」とも話しており、歩み寄る姿勢を見せない。

 今後は日本連盟の意思確認を待って調停が開始されるが、申し立ての応諾に法的強制力はなく、連盟側が拒否する可能性が濃厚だ。今年2月の仲裁事案でも日本連盟の不応諾により、仲裁開始に至らず手続き終了となった事例もある。

 「世界最高の選手が集う舞台で思い切り拳を交えたい」と語る高山の思いは一途だ。東京五輪まで残された時間はそう多くはない。高山が投じた「調停」という一石が、決して小さくはない波紋となって広がることを願いたい。(デイリースポーツ・山本直弘)

関連ニュース

編集者のオススメ記事

オピニオンD最新ニュース

もっとみる

    ランキング

    主要ニュース

    リアルタイムランキング

    写真

    話題の写真ランキング

    注目トピックス