【野球】大谷が宝刀フォーク控えた理由

 先発5試合で19失点。メジャーで二刀流の実現を目指すエンゼルスの大谷翔平投手(23)が、不安を残す内容で米国1年目のシーズンを迎えようとしている。しかし、決め球のフォークを意図的に投げていないことはあまり知られてない。日本では無双だった右腕が伝家の宝刀を抜かなかった理由とは何か。大谷本人、そして、チームメートらの証言から答えを探る。

 なぜフォークを投げない?めった打ちにあう背番号17をもどかしい思いで見ていたのは筆者一人ではなかったはずだ。

 3月16日、アリゾナ州テンピで行われたロッキーズとのオープン戦。昨季ナ・リーグ1位のチーム打率を誇る強力打線に大谷が2回途中7失点でKOされた。

 初回。直球は渡米後最速の158キロを計測した。切れ味鋭いスライダーとカーブに観客がどよめく。1死一、二塁のピンチを無失点で切り抜ける粘りの投球を見せた。

 ところが、二回は別人と化す。先頭にツーボールから不用意に投じた153キロ直球を左翼芝生席に運ばれる。死球の後に5者連続安打。15、16年打撃2冠のアレナドに151キロ直球を左中間3ラン。全50球のうち、フォークはたったの2球。不可解な配球だった。

 しかし、試合後、捕手のマルドナドが「プラン通りだった」と話せば、大谷も「今、フォークを引っ掛けてるので、そこが計算できてない。もうちょっと練習する必要がある」と説明。その表情に焦りや悲壮感はみじんもなかった。

 フォークが少なかったのはこの試合だけではない。最初3試合は計147球のうちフォークは13球。大谷が日本で打者を支配できたのは160キロを超える剛速球と140キロ台のフォークの組み立てがあったから。打者の目線を変える縦の変化がない23歳が炎上するのは当然だった。

 「スプリット(フォーク)は湿度に影響する。乾燥したアリゾナでは動きが違います」。そう断言するのは昨季、配球の3割がフォークだったエ軍の先発シューメーカーだ。大谷が炎上したロ軍戦の湿度は、エ軍の本拠地アナハイムのおよそ半分の30%。9日に先発した練習試合に至っては10%だ。メジャー6年目の中堅右腕は「球の変化を気にせずに投げること。“感じ”をつかむことが大切なんです」と持論を展開した。

 開幕前最後の実戦登板となった24日の紅白戦。一転、大谷はフォークを多投した。全85球のうち実に21球。カウントに関係なく投げたことに「確認する順序があるので、こういうタイミングになった。ヘンな話、まだそういう段階でなかったら、今日も投げてなかった」と説明した。

 メジャー1年目。滑りやすいメジャー球や傾斜のきついマウンドなど、課題は多々ある。5試合の登板結果は13回を投げて19失点。米メディアはこぞって「マイナー行き」を提言したが、意図的にフォークの数を制限していたことを考えれば、これらの数字は意味をなさない。

 大谷が本気で伝家の宝刀を抜いた時、周囲はどんな反応を見せるだろうか。手のひら返しの論調が容易に想像できる。(デイリースポーツ・小林信行)

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