【スポーツ】ブラジル出身魁聖“ケガの功名”で開花

 大相撲春場所(11~25日、エディオンアリーナ大阪)で、平幕魁聖(31)=友綱=が初日から9連勝するなど土俵を盛り上げている。194センチ、205キロの巨体で迷いなく前に出る。ブラジル・サンパウロ生まれ。のんびり屋の31歳が待ちに待った開花だ。

 「久しぶりですね。どうしたんだろう」

 連勝街道もまるで人ごとのように豪快に笑い飛ばす。翌日の対戦相手を聞くと「もうダメだ」と、弱気になるのも恒例。日に日に増える報道陣を素通りしようとして笑わせ、「優勝意識」と問われると「あー」と耳をふさぐしぐさでおどけた。

 祖父母が日本人で日系ブラジル人3世。16歳で相撲を始めて06年に来日し、あこがれの大関魁皇(現浅香山親方)のいる友綱部屋に入門した。14年に日本国籍を取得し、本名は菅野リカルド。

 「暖かいのが好き。寒いとダメ。起きられない」

 南国生まれで温厚な男もこの1年、苦難を味わった。しかし、これを乗り越えたことが力になっている。

 昨年春場所で右膝前十字靱帯(じんたい)を断裂し、十両にも転落した。「手術をすれば復帰に1年かかる」とメスを入れない方法を選択。毎日、地道にインナーマッスルで患部回りの細かい筋肉を鍛え、サプリメントも自ら調べて取り入れた。

 これがケガの功名となった。再発を防止するには、無理な体勢にならないこと。前に出る意識は高まり、自然と巨体の生かし方を覚えた。四つ相撲を得意としながら今場所は押しもパワフル。八角理事長(54)=元横綱北勝海=も「大きい人が前に出ると怖い」と、成長を認めた。

 ブラジル人だからといって全員がサッカー好きではない。魁聖は幼少期に父に無理やり習わされてサッカー嫌いになり、今ではW杯にも興味を示さない程。趣味はゲームで、部屋での一番のリラックスタイムだ。

 来日15年もたてば体も日本人。何と昨年春巡業から花粉症を発症した。「風邪かと思って薬を飲んでいた」とぐずぐずの鼻は一向に治らず、病院で発覚。今春は症状を抑える薬を2箱持ち込み、鼻うがいも欠かさない。花粉の飛散量が多い春場所での好結果につなげている。

 ブラジルの陽気さに日本の心を併せ持つナイスガイ。先場所の栃ノ心に続く平幕Vへの興味は示さず控えめ。「三役はもう一度やりたい」と、自己最高位の関脇返り咲きを目標にしている。(デイリースポーツ・荒木 司)

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