どん欲に進化する姿を追い求めていた。昨季Ｊリーグを制し、得点王、そしてＭＶＰに輝いた川崎・ＦＷ小林悠。シーズンを控えて「チャンピオンとして、という偉そうなものはない。チャレンジャーとして相手をリスペクトして、自分たちのクオリティーを上げていきたい」と話した。王座に胡座（あぐら）をかく思いはさらさらない。栄光はもはや過去のこと。シーズンに向けてのキャンプでは、２つの新たな武器を身につけようとする姿があった。

　ひとつは３日の浦和戦（沖縄・中城村）で披露したプレー。中央でボールを保持すると強引に中央突破をしかけ、４人を抜いてゴールを決めた。昨季までなら間違いなくパスを回して相手を崩そうとしたシーン。それを「自分で打開してのゴールを、今年はやっていきたい。いいチャレンジができた」と明かした。

　そしてもうひとつ。キャンプ中の居残り練習で目についたのは、左足でのシュート練習を繰り返すシーンだ。「嘉人（大久保）さんが入って、自分が右に入ることもある。左からのクロスに対応して、左でのシュートも決められるようにしたい」。前線ならどのポジションもこなせる選手が増える。ポジションは流動的。その中で、右ＭＦに回った際に、左足のシュート力を上げる狙いだった。

　新シーズンを迎えて、鬼木監督は「去年と同じなら後退だと思う。練習していく中で一番大事なのは、同じことをやっても勝てないということ」と強調した。小林を筆頭に、個々が昨季以上のレベルアップを追求する姿があった。そんな土台がある上に、ＦＷ大久保が復帰し、ＭＦ斎藤が加入した。リーグ屈指の攻撃陣はさらに厚みを増した。

　小林は「すごくいいイメージが湧いている。楽しみ」と新戦力を歓迎。そして練習試合を通して大久保の存在を「すごくやりやすい。お互いアシストもしあえる。パス出しが憲剛（中村）さんだけでなくもう１人増える。うまい選手。１年たってもやりやすい。お互いにね」と十分な手応えを口にしている。

　目標は全タイトル獲得。そしてリーグ戦では昨季記録したチーム総得点の７１点超えだ。「７１点？それ以上、点数は増えると思う。チームとしてよくなっていくと思う」。小林自身も、もちろん、個で打開するプレー、そして左足でのシュートで、進化の跡を刻むはずだ。（デイリースポーツ・鈴木創太）