【スポーツ】夜の街から減った力士…冬巡業に影響ジワリ

 大相撲は九州場所(11月26日千秋楽、福岡国際センター)中に表面化した元横綱日馬富士(33)が幕内貴ノ岩(27)=貴乃花=を暴行した問題による混乱が収まる気配がない。

 年6場所の中で最も観客動員に苦戦してきた九州場所は15日間、満員御礼となり、21年ぶり年90日間すべて大入りを記録した。相撲人気に陰りはないように見えたが、場所後、九州各地を訪れている冬巡業には少なからず影響を与えている。

 観客はどの巡業地でも7割以上は入っており、例年に比べ決して減っているわけではない。しかし、当日券が伸びていない。

 ある親方は「力士が(夜の街に)出なくなった」ことをその一因に挙げる。巡業先での力士らはいわば存在自体が“営業マン”。大きな体でまげを結い、着物姿で街を歩けば、巡業が行われることを地元の方々は知る。

 豪快に飲み食いし、お金を落とせば街の活性化にもなる。飲食店の関係者も力士から「巡業に来てよ」と頼まれれば、友人、知人らを誘い、見に来ることも、これまでなら当たり前だった。

 「(巡業が)行われていることが、(例年以上に)知られていないんじゃないかな」と前述の親方は実感を込める。

 元日馬富士の暴行問題が秋巡業中の酒席で起きたこともあり、さすがに冬巡業は自粛ムードであふれている。巡業部長代理を務める春日野広報部長(元関脇栃乃和歌)は「外出禁止令」こそ出していないものの力士に節度ある行動を厳命。巡業当初はTVカメラが夜の街にも張っており、無理して繁華街に繰り出す力士は激減した。

 1年で全国各地を行脚する巡業で最も動員に苦戦するのが九州。「相撲人気を持ち込みたかった」(同親方)と、人気を冬巡業の起爆剤に期待したが算段は残念ながら崩れた。

 各巡業先の協会あいさつでは、春日野部長が暴行問題に関し、謝罪する文書を観客の前で読み上げ頭を下げる。支度部屋での取材も制限されるなど、ピリピリムードは漂う。

 角界は10、11年、元横綱朝青龍の暴行事件、野球賭博、八百長問題と立て続けに不祥事にまみれた。本場所の観客はガラガラになり、巡業数も激減した。

 どん底からはい上がり、回復した相撲人気を自らぶち壊すかのような暴力問題。初場所(来年1月14日初日、両国国技館)も前売り券は完売したが、冬巡業を見れば危機は忍び寄っている。待ったなしで真相究明、早期正常化がなされなければ、ファン離れは繰り返されてしまう。(デイリースポーツ・荒木 司)

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