【サッカー】なでしこリーガー三宅史織、第2のふるさとへの思い胸に戦う

 第2のふるさとへの思いを胸に、ピッチを駆ける選手がいる。女子サッカーなでしこリーグINAC神戸に所属するDF三宅史織(21)。北海道出身だが、中学校からJFAアカデミーに所属し、福島県で生活してきた。

 JFAアカデミーとは「世界基準」をキーワードとし、個の育成を目的とする育成制度のこと(日本サッカー協会より)。セレクションに合格した選手を集め、集中的に指導育成を行っている。現在女子は、三宅も所属した福島、堺(大阪)、今治(愛媛)の3カ所、男子は福島と熊本宇城の2カ所を拠点にそれぞれが活動しており、福島は中高一貫の6年間、その他は中学校の3年間が対象だ。

 (※福島は震災以降、楢葉町にあるJヴィレッジでの活動が不可能になったため、一時移転先として静岡県御殿場市にある時之栖スポーツセンターで活動を続けている)

 三宅の中学校最後の思い出は、恐怖と共に刻まれている。東日本大震災が発生したあの日は、卒業式当日。アカデミーの寮は高台の上にあったため津波の被害は免れたが、「家が全くなくなったという友達もたくさんいた」。丸1日避難所で生活し、卒業式に出席していた親族に連れられて地元に戻った。

 「実家のテレビでニュースを見て、はじめて『あそこにいたんだ』と地震の実感がわいてきた。初めて海が怖いと感じた」。中学校の校舎は地震の被害で倒壊したという。

 アカデミー自体の存続も危ぶまれたが、約1カ月後に静岡県内での再開が決定。定時制の高校に通った。成人式の際に、汗を流したグラウンドのある楢葉町に震災後初めて凱旋。「全然違う町だった」。衝撃だった。

 それでも懸命にサッカーと向き合うのは、その力を信じるからだ。「今でも声を掛けてくださる方がいる。自分たちがお世話になった人たちがわたしたちのサッカーを楽しみにしてくれる。頑張らないとな」。震災直後になでしこジャパンが世界を舞台に活躍して、多くの感動を呼んだように、スポーツは、サッカーは光だ。日常への感謝を忘れず、福島への思いを胸に秘め、三宅はさらなる高みを目指す。

(デイリースポーツ・國島紗希)

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