【競馬】一口馬主事業に参入するDMM.comに注目

 今月10、11日に、日本最大規模の競走馬市場「セレクトセール2017」が開催された。2日間の落札総額173億2700万円(以下、価格は全て税抜き)は新記録。ディープインパクト産駒の「イルーシヴウェーブ17」が、国内セール史上2番目の5億8000万円で競り落とされるなど話題も豊富で、セール20周年にふさわしい盛り上がりだった。

 話題と言えば、ネット通販やオンラインゲームなどを手掛ける(株)DMM.comに触れないわけにはいかない。新クラブ法人「(株)DMMドリームクラブ」の設立を発表。G1で7勝の名牝ジェンティルドンナの全妹「ドナブリーニ17」など、複数の高額良血馬を落札した。1頭最大1万口で募集し、引退までの必要経費を算出して定額前払いで徴収する新しい仕組みを導入する。

 ジェンティルドンナの全妹は1口4万円台、リアルスティールの全妹は同3万円台を検討中だという。現在の一口馬主の募集額を考えれば、破格の安さ。リスクを嫌う傾向にある日本人には、受け入れられやすい考え方かもしれない。同社の野本巧取締役は「多くの方と感動体験を共有したい」と募集数を増やした理由を説明。愛馬の近況はアプリを通じ、動画やコメントなどで配信される予定だ。

 スマホで開発中のアプリを見せてもらったが、タッチ式の使いやすそうなユーザーインターフェース。スマホに慣れた世代ならすぐに扱えそうだし、そうでない方にも直感的操作が可能だと感じた。

 報道後のネットの反響は大きかったようで、「賛否両論、五分五分で興味深かった」と野本取締役。前代未聞の仕組みやアプリなど、事前に周到に準備されていた点から考えれば、メディアで扱われることや、この反響すら想定内だったように思えてくる。競馬に興味はないが、ゲームは好きという層には、レースごとに自らの証券口座に配当金が入るシステムは新鮮かもしれない。成功する要素は、大いにありそうだ。

 競馬関係者はどう見ているのか。会場に訪れていた方に話を聞いたが、感覚としては、賛否両論、五分五分というより、若干、懐疑的な意見が多かった。

 「前金がね。馬主さんとは喜びだけではなく、痛みもその都度、共有しながらというのはある。もちろん、その部分を先にということなんだろうけど。競走馬は生き物。毎月、預託料を払うことで実感できることもある」

 「ネットメディアは今、新たな優良コンテンツ探しに必死なんだろうね。今回のシステムがハマればいいけど、いざ、ふたをあけたら違ったという場合はどうするのかな?」

 これはごく一部だが、まだ実際に何も始まってない段階だけに、こうした反応が多くなるのは、ある意味必然だろう。現時点で意見を求めて回ること自体がアンフェアかもしれないが、放置して取材しないのはもっとナンセンス。これも我々の仕事と、ご理解いただければ幸いだ。一方、好意的な声もあった。

 「かつての競馬人気は、競走馬やレースの魅力に加え、ダビスタなどゲームが後押ししていたところもあった。今回の件が新たなファン拡大につながり、競馬が盛り上がればいいことだと思う」

 個人的には、馬主に興味がある人たちの選択肢が広がることは、悪いことではないと感じる。競合が増えれば、サービスの質向上にもつながるだろう。既に同社は育成面で、大手牧場からの協力も取りつけているという。一度、参入すると決めた以上は、本気で腰を据え、長期的な視点で取り組んでほしい。新たな楽しみ方として定着すれば、競馬はさらに幅広く愛されるはずだ。(デイリースポーツ・大西修平)

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