【スポーツ】柔道全日本王者・王子谷は虎党 父から猛虎魂受け継ぐ

 4月29日に行われた柔道の全日本選手権で2連覇し、今夏の世界選手権男子100キロ超級代表に初選出された王子谷剛志(24)=旭化成=。今月行われた代表発表会見で、日本男子の井上康生監督(38)が「個性的なメンバーがそろって(アメリカンコミックの)『アベンジャーズ』みたい。王子谷はそのままハルクのよう」と推薦するなど、権威ある全日本王者でありながら親しみやすい愛されキャラで今夏のブレークが期待される。

 今月4日に都内の講道館で行われた少年柔道教室では、350人の小学生を指導したが、得意技である大外刈りの講習や実戦形式の乱取りでは、特別に講師を務めた日本代表4人のうち王子谷に子供たちが殺到。「自分はオーラがないので(子供が萎縮せずに向かってくる)」とボヤいたが、最初に行われた質疑応答でも王子谷へ質問が集中するなど人気ナンバーワンだった。

 そんな王子谷は、実は無類の野球好き。大阪府泉佐野市出身で、父・高次さんの影響で阪神タイガースのファンでもある。「(90年代の暗黒期は)阪神が負けていると、父がテレビのチャンネルを変えるという得意技を持っているのでちゃんと見た記憶がない」。そんな英才教育を受けたため、18年ぶりにリーグ制覇した2003年の星野監督時代からの印象が強いというが、指導者でもある父からは柔道だけでなく猛虎魂もしっかり受け継がれた。

 さらに、王子谷が柔道以外で師と仰ぐのが、阪神でも指揮を執り、南海、ヤクルト、楽天で監督通算1565勝を挙げた名将・野村克也氏(81)。東海大時代に、ゼミの先生でもあった柔道部の上水研一朗監督の薦められたことをきっかけに野村氏の著書を読み(「ああ、阪神タイガース」や最新刊の「野村克也 野球論集成」も読破)、感銘を受けた。

 186センチ、145キロの巨漢から繰り出す豪快な柔道を信条としている全日本王者だが、世界と戦う上では限界も感じた。「なんせ相手がデカくて怖いので、研究して組み手をしっかりしないと危ない」。海外選手との試合中、相手の一本背負いで頭が畳に突き刺さり、医務室に運ばれたこともあっただけに「豪快さだけではダメ。柔道のデータサイトで海外選手の動画を研究するようにしている」と“ID柔道”の導入を明かした。

 野村氏の数ある名言の中でも、印象的なのは「中心なき組織は機能しない」というフレーズ。大学時代は団体戦が主だったため「中心がいないチームはガタガタ崩れてしまう」と実感し、自身が4年時に主将として団体戦2冠に導いた過去も持つ。

 2020年東京五輪に向けて、重量級の復活がテーマである井上ジャパンでも、狙うのは“エース”という中心的役割。まずは初出場となる今夏の世界選手権で「ノムラの考え」をヒントに、絶対王者のテディ・リネール(フランス)から金星を奪いにいく。(デイリースポーツ・藤川資野)

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