【野球】首位広島の陰に現役時代実績ゼロ2軍監督の存在

 広島にシンデレラボーイが現れた。3日・中日戦(マツダ)でプロ初登板初先発したプロ4年目の中村祐太投手は、打線の援護もあり5回3失点でプロ初勝利を挙げた。昨年25年ぶりにセ・リーグ制覇した広島は、10勝を挙げた黒田博樹投手が現役を引退。戦力ダウンは否めないが、次から次へと若手が出てきてセ・リーグ首位にいる。

 ペナントレースで好位置をキープするが、チーム状況は決して明るいわけではない。特に投手陣はエースのジョンソンが咽頭炎の影響で長期離脱。守護神・中崎もいない。加えて開幕から先発ローテーションに入っていたドラフト3位・床田(中部学院大)も左ひじ痛で出場選手登録を抹消されている。野手も2日に松山が故障離脱した。

 そんな有事にもすぐに新外国人ペーニャが1軍に昇格し、結果を残している。故障者が出ても1軍に次々と戦力を供給する2軍は、人員不足に悩まされる。2軍のローテーション投手が足りないほどだが、水本勝己2軍監督は「1軍が勝てばいい」と愚痴の一つもこぼさない。

 昨年から2軍の指揮を執る。名前になじみがない。それもそのはず。プロでの現役生活はわずか2年。1軍実績ゼロである。昨年、2軍監督に阪神は掛布、中日は小笠原、オリックスは田口と一流選手ばかりが就任した。昨年の開幕前に「トラウマはあるよ」とポツリともらしたこともあった。

 しかし、現役引退後にブルペン捕手を長く務め、ブルペンコーチ補佐、3軍統括コーチ、2軍バッテリーコーチなどを歴任した苦労人は熱いハートで2軍を引っ張る。あるチーム関係者が水本2軍監督のことを「だれにでもモノが言える人」と評した。曲がったことの嫌いな人間で、だれにでも平等に接する。

 若手にもベテランにも平等に接し、多角的な目でチームを見る。1軍予備軍の調整、将来への若手選手の育成、そして試合での勝利。3つのバランスを保ちながら指導する。

 現在、2軍には来年以降の助っ人となる可能性があるバティスタ、メヒアのドミニカからの育成選手がいる。「向こう(ドミニカ)ではなかなか試合ができる環境がなく、野球を知らなかった。去年から野球を教えている」。試合では2枠さいて、実戦を積ませながら来季以降の戦力になるように育てている。

 2軍で勝敗にこだわらないわけではない。それでも同級生の緒方監督が求める戦力補充に努める。水本2軍監督は「1軍が強かったらなんでもいいんよ。1軍が強くなるために、何を補うかを考えながらやっている。パズルをするように」と話す。1軍へ選手を送り、将来を見据えて若手を育成。常勝球団を目指すチームにおいて水本2軍監督の役割は重要だ。

 今、1軍の選手はベテランと呼べるのは新井と石原くらい。投打とも20代の選手がほとんど主力で2軍選手にとっては厚い壁もある。「だからこそチームは強くなる。厚い壁を打ち破って入っていけるのかどうか、そこの差でしょ」と熱く語る。次なる中村祐になる選手を1人でも多く1軍に送り込むために、水本2軍監督は熱い気持ちで指導している。(デイリースポーツ・岩本 隆)

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