【野球】阪神バッテリーのバレ砲フォロースルー対策

 今年の球春も間もなく到来する。選手たちがどんな戦いを繰り広げてくれるのだろうか。好プレーや珍プレー。話題になるシーンは、毎年たくさんある。もちろん今年も、そんな場面が多く見られるはずだ。

 昨年を振り返ってもみても、さまざまな“問題”が起きたことが思い浮かぶ。例えば本塁のクロスプレーに関するコリジョンルール。捕手と走者の激突やラフプレーへの予防線を張ったが、シーズン中に細かい部分が見直されるなど、選手ら当事者はもちろん、ファンをも混乱させた。

 だが、個人的に気になるのはヤクルト・バレンティンの“フォロースルー事件”だ。7月24日に行われた中日-ヤクルト戦(ナゴド)、8月2日のヤクルト-広島戦(神宮)と、2度にわたって選手が負傷する事態が起きた。

 1度目は中日の捕手・杉山の頭部にバレンティンの空振りしたバットが頭に当たり、2度目は同様に広島の捕手・石原の頭部を直撃。両者ともにその場で倒れ込み、負傷退場した。

 当時、主に阪神の2軍担当をしていた僕は山田2軍バッテリーコーチに、聞いてみたことがある。すると、意外な答えが返ってきた。

 「バレンティンは頭がいいんだと思うよ」-。聞いた瞬間は、真意が分からない。深く聞いてみた。「(バットが)当たると分かっていたら、自然とキャッチャーは下がる。そうそうすると、ピッチャーも距離が違って投げにくくなる。バレンティンに聞いたことがないから分からないけど、たぶん、そうだと思うよ」。なるほど、確かに投手は繊細な部分があると聞く。わずかな違いでも、事は大きくなる。

 実際、それまでバレンティンと対戦してきた阪神の捕手・梅野はこう話す。「(下がると)ワンバン(ワンバウンド)も止めづらくなるし、そういう球を要求しづらくなるのはある。ランナーがいる時とか特にね」。

 捕手は投手の信頼を勝ち得ないといけない。地面に着く球でも、後ろには絶対にそらしてはいけない。自信を持って投げて込んでもらうためには、体を張ってボールを止めるのは重要なこと。だが、バレンティンが打席に入った時は配球に少なからず“迷い”が出る。ということは、狙い球も絞りやすくなり得るのだ。

 フォロースルーが大きいのは外国人によくあること。だが、日本記録である13年の1シーズン60本塁打という数字をたたき出した最強助っ人ということを考えると、「故意的」と思われても不思議でない。

 聞くところによると、バレンティンはチャート表などを使って勉強しているそうだ。研究熱心な一面もある。もし、わざとであるなら、そのズル賢さを褒めるしかない。それもプロ。その反面、守る方もプロだ。やられっぱなしになるわけにはいかない。

 では、どう対策を練るか。梅野は現段階では「(後ろに)下がるしかない」という。山田2軍バッテリーコーチも同様のことを言いつつ、「そういう防具とかを身につけるしかないんじゃないかな」と対策を考えていた。

 だが、その上で「防具を付けると、スローイングとか、動きに支障が出てくるだろう」と頭を抱える。「他の球団の人とか、いろんな人に聞いてみてくれよ(笑)」と冗談半分で取材を頼まれたが、いまだハッキリとした効果のありそうな対策は出てこない。

 一人の選手生命を奪いかねない危険なプレーは、各球団にとっても対処すべき点の一つであるだろう。かといって、バレンティンに処分を課すわけにはいかない。今後どんな対策を練るのか、改善法は気になるところだ。

 今月、WBCが開催される。オランダ代表として燕の助っ人も参戦する。そこでヒントがあるかもしれない。また、海外でも同様の選手がいる可能性もある。各国の捕手が、どんな対処法をとって、どんな配球をするのか。そんな細かい部分に注目してみるのも、おもしろいのではないか。また、そういう駆け引きも、野球というスポーツの奥深さの一つだと思う。(デイリースポーツ・山本真吾)

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