【ライフ】阪神の奥座敷・有馬温泉を訪ねる 留学生「サイコウデス!」
木枯らし1号が吹いて気温も徐々に下がり、紅葉前線も南下中のこの時季、温泉が恋しくなってきた。今回は「灯台下暗し」ではないが、阪神の奥座敷と言われる、記者が勤務する社屋と同じ神戸市内にある有馬温泉を35年ぶりに訪れた。
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「日本三古湯」の一つで、「天下一の霊泉」とも言われ、江戸時代の儒学者・林羅山が、岐阜県下呂温泉、群馬県草津温泉と並んで日本三名泉に挙げた有馬温泉。渓流釣りの帰りに、北から車で入った。標高400メートル前後の地に温泉街が突然現れると、観光客がかっぽする姿が多く見えた。その昔、豊臣秀吉が訪れたせいで名前を取ったのか、太閤橋付近は意外にカップルなどの若者や家族連れが多く、色づく紅葉が彩りを添えていた。
午後3時過ぎ。まずは民営の駐車場に車を止めて観光案内所で地図を入手し、それを見ながら温泉街を散策した。街はバスを待つ人や、ハイカーらでごった返していた。
ひと通り巡ったところで公衆浴場の金の湯に立ち寄った。有馬温泉の代名詞とも言える赤茶色の湯を見ると、私が小学生のころ、「湯船にタオルをつけるなよ」と入浴のマナーとして初めて父に言われたのを思い出した。
当時のポスターに、外国人男性が湯船に漬かって楽しそうに笑顔を振りまくその湯が今も同じ赤茶色で、「タオルで隠すこともないな」と思ったものだ。
並んだ二つの湯船には、金泉と言われる44度と42度の湯があふれていた。底が見えないので、段差に注意しながら慎重に歩を進め、肩まで湯に漬かった時には、疲れが一気に取れたような気がした。金の湯は、含鉄ナトリウム塩化物強塩高温泉で、pHは6・5。源泉温度は97度。子供のころでうろ覚えなのだが、赤茶色は鉄の成分が高くてもっとサビ臭い記憶があったのだが、今は明らかに塩味がきつかった。
もう一つの丸い浴槽の白湯(水道水)で、イランからの留学生らと一緒になった。来日3年目の彼らは京都の大学のサークルで、登山をした帰りに寄ったという。イランには公衆浴場がないようで、親指を立て「サイコウデス!」とニッコリ。
また、併設で無料開放している太閤の足湯は大勢の人でにぎわい、文字通り足の踏み場もないほどだった。
日暮れも近づいたので、駐車場へ向かったら、浴衣を着た宿泊客らが下駄を鳴らしてそぞろ歩きをする姿が見られ、温泉好きの私も泊まりで訪れたいという衝動に駆られた。
有馬温泉は観光協会に属しているだけで36軒の宿があり、立ち寄りの出来る日帰り入浴施設は18を数える。
この時季の紅葉は、ねね橋からいずれも徒歩20分ほどの瑞宝寺公園や鼓ケ滝公園がお勧め。春にはあたご山公園の梅林。また、善福寺のしだれ桜は夜にライトアップしたのが特にきれいだと観光協会の方が太鼓判を押す。太閤橋から下のさくらの小径に咲くソメイヨシノも例外なく目と心を癒やしてくれるだろう。6月に花を咲かせる、ねねの別邸跡と伝わる念仏寺のサラの木も、一弦琴とコラボする鑑賞会もあって、四季折々観光客を楽しませてくれそうだ。
近いのに行けないのか、近すぎて行かないのか。観光協会では1泊2食付きで約2万円の宿をあっせんしているというので、今度ボーナスが出たら家族で訪れてみよう。(デイリースポーツ・柴田直記)





