川井友香子が金 “アメ役”の父にも届けた姉妹メダル
女子62キロ級は初出場の川井友香子(23)=ジャパンビバレッジ=が決勝で2019年世界選手権優勝のティニベコワ(キルギス)を4-3で破り、今大会の日本勢で初の金メダルを獲得した。姉の川井梨紗子=ジャパンビバレッジ=が16年リオデジャネイロ五輪63キロ級女王に輝いており、五輪の夏季競技で日本勢初の姉妹金メダリストとなった。57キロ級は川井梨が2試合を勝って迎えた準決勝でリオ五輪53キロ級女王のマルーリス(米国)を2-1で下し、5日の決勝に進んだ。
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川井家はよく験を担ぐ。梨紗子がリオデジャネイロ五輪に出場する直前、金沢市の金箔(きんぱく)入りソフトクリームを食べてから臨んで優勝したことから、今回の五輪前にも父孝人さん(53)が車を出して家族で同じ店まで足を延ばした。
3姉妹とあって、5人家族の中で男性は孝人さんただ1人。「夫婦ゲンカをすると、いつの間にか1対4になって。気づいたら1人ってことが多かった(笑)」
姉妹に厳しくレスリングを指導する母初江さん(51)がムチなら、父はアメ役だった。練習から帰宅した娘の様子に異変を感じると、決まって夕食後に外へ連れ出す。「母娘でけんかしたんだなとか、顔を見れば分かる。車を出して、遠くのコンビニに行って好きな物を選べと」。お菓子を2、3個買い、車中で娘の話を聞いて“ガス抜き”をするのが父の役割だった。
離れて暮らす娘からは毎年父の日のプレゼントが郵送で届く。今年は梨紗子からは孝人さんの顔の焼き印が入ったドラ焼き。友香子からは、い草の枕が届いたが、「もったいなくて、まだカバーをつけている」。うれしくて、使えないという。
そんな孝人さんにはジレンマがあった。娘の試合に応援に行くと、なぜか負けてしまう。18年12月の全日本選手権では、梨紗子が伊調馨に敗れて五輪切符に黄信号がともった。「見に行くと負けるジンクスが破られないから、その後しばらくは家族からの電話にも一切出なかった」
今回は無観客大会とあって、いずれにしても会場には足を運べなかったが、孝行娘たちは遠くで待ちわびる父に何よりもうれしいプレゼントを届けてくれた。(デイリースポーツ・藤川資野)