阿部詩とは 名前は「ななみ」の予定も父が顔を見て即決 目標は「怪物」
「東京五輪・柔道女子52キロ級・決勝」(25日、日本武道館)
阿部詩(21)=日体大=が、難敵アマンディーヌ・ブシャール(フランス)にゴールデンスコア方式の延長戦の末に勝ち、悲願の金メダル。21歳の若さでニューヒロインとなった。
日本女子では同階級初の金メダルとなり、涙。「絶対に金メダルをとってやろうと挑みました」と語ったが、「お兄ちゃんが今から気を抜けない。しっかり応援したい」と続けた。
兄の阿部一二三も男子66キロ級で決勝進出。「2人の力を出し切ることができれば絶対に優勝できる」。ふたりは口をそろえてきたが、妹がひと足先に金メダルを獲得した。
▽阿部詩メモ
◆生まれ…2000年7月14日、神戸市兵庫区出身。
◆サイズ…158センチ。
◆家族…父浩二さん、母愛さん、5歳上の兄勇一朗さん、3歳上の兄一二三。
◆経歴…兄の影響で5歳で兵庫少年こだま会で柔道を開始。神戸・夙川学院中高を経て、現在は日体大3年。
◆得意技…右組みで、一二三と同じ袖釣り込み腰や背負い投げが得意技で「70%くらいは兄のスタイルが影響している」。他にも内股、大外刈りなども得意とする。
◆「YAWARA2世」…17年に史上最年少でワールドツアーを制した際、日本女子の増地克之監督は「何かやってくれそうという、人を引きつけるスター性を感じる。あえて名前を挙げるなら、期待も込めて田村亮子選手のようになって欲しい」と評した。
◆名前の由来…「ななみ」の予定だったが、病院で我が子の顔を見た父浩二さんが「この子は『詩』や」と即決。詩自身は「覚えてもらいやすい。最初の頃は不思議な名前だなと思っていたが、最近は周りにも増えてきて、すごくいい名前」と気に入っている。
◆兄一二三の存在…昔、兄がふがいなく負ける姿を見て「お兄ちゃんクソ弱いやん」とうそぶいたこともあるが、自身も世界のトップで勝負の厳しさを知った今は「こういう立場になって気持ちがわかるようになったので(人に)弱いとかは言えない」。
◆転機となった1敗…高校1年で出場したインターハイ初戦。緊張から反則技の「河津掛け」を掛けてしまい、反則負け。数日間は泣き続けるなど大きなショックを受けたが、「初戦から油断せずに戦うことが決勝につながる」と糧にし、その後の快進撃につなげた。
◆苦手を克服…高校時代は寝技が苦手で、シニアの大会では関節技で一本負けを繰り返した。母校夙川学院高は立ち技に力を入れていたが、苦手克服のために寝技の名門である長崎明誠高に何度も出稽古。1日4時間寝技だけのメニューもこなすなど、阿部にとっては地獄の練習だったが、今では寝技も武器の一つにするほど成長した。
◆息抜き…オフは映画を見て頭を切り換える。最近ではネットフリックスで「ヤクザと家族 The Family」を見たといい、「あまり2時間の映画で集中できないタイプだが、集中して見ちゃった。面白かった」。
◆好きな音楽…最近はブルーハーツの音楽を聴くことが多いと言い、「聞いたらやる気になる、すごく気持ちが上がる」。以前はEXPRESSの「もぐらの唄」を挙げていた。
◆目標は「怪物」…高校時代にボクシング世界王者の井上尚弥の本を読み、感化された。「絶対的な強さを手に入れることが第一歩。五輪では絶対的な強さで優勝したい」