高木美帆を支えたヨハンコーチの金言「同じ人間ができるのに…」
「北京五輪・スピードスケート女子1000メートル」(17日、国家スピードスケート館)
女子1000メートルは高木美帆(27)=日体大職=が1分13秒19の五輪新記録で悲願の金メダルを獲得した。この種目では日本勢初、個人種目では自身初の金メダルとなった。
金メダルが確定すると、ぽろぽろと思いがあふれ出た。目を赤く染めた高木美が向かったのは、15年から指導を受けるヨハン・デビット・コーチ(42)のもと。「ヨハンと一緒にここに立てたこと、自分を見せられたことがすごいうれしかった。お互いにありがとうという言葉しか出てこなかった」。ガッチリと抱擁を交わし、喜びを分かち合った。
コーチの言葉はいつも心の支えだった。5年以上前、今大会でも1500メートルで金メダルのブスト(オランダ)の話をしていると「同じ人間ができるのに、なんで自分はできないと思うんだ」と問われたことがある。度肝を抜かれたが、その言葉があったから、挑み続けることができた。
コーチは開幕前の3日に新型コロナウイルス陽性判定を受けチームを離脱。「いつもそばにいたので、ふとした時に掛けてくれる言葉が急になくなって、すごいつらかった」と高木美は言う。
コーチが合流した最初の種目500メートルでは練習中にふと「肩に力が入っているよ」と声を掛けられた。「無理しない滑りを」と本来の滑りを取り戻した。この日の“金言”は「疲れても滑りを変えるな」だった。最後まで美しいフォームで駆け抜けた。師とつかんだ、黄金の輝きだった。