小林薫が明かす映画「深夜食堂」の秘密

 深夜の食ドラマブームの先駆けで、ひそかなロングヒットとなっているMBS/TBS系の深夜ドラマ「深夜食堂」が映画化され、31日から公開される。舞台は東京・新宿の繁華街にある通称“深夜食堂”。2009、11、14年と3シリーズが製作されたドラマ、そして今回の映画で主人公のマスターを演じる名優・小林薫(63)が、「深夜食堂」の秘密を明かした。

 -映画版を見て、どう思いましたか。

 「テレビの場合は30分の放送枠で、起承転結で言えば、本当にコンパクトにお話をまとめなきゃいけないわけじゃないですか。どうしてもテンポっていうのも出てくるだろうし、時間をかけて引っ張ってやってると、終わりまでたどり着かないうちに放送枠が来ちゃったりするっていうのがあって。その辺の苦労というのが、(松岡錠司)監督サイドとしてはあったと思うんですよね。映画になると、想像するに、ホントにじっくり撮れるという。そういうものを撮りたいと思ってると思うんですよね。監督としたら。そういう意味では念願かなったというところはあるんじゃないですかね」

 (続けて)

 「僕も見て、いい意味で、映画って-僕はこういう言い方をしてるんですけど-余白がないと映画にならない。お話だけでキュッとまとまってると。ストーリーが分かって、じゃあテレビのお話を3本並べて映画になるかっていうと、また映画にならないところがあるんだよねえ。だから、僕は映画的余白っていうか、要するに転結の結を急がないとか、結がなくてもいいっていう」

 (続けて)

 「テレビの場合は、こういうお話でしたよっていうのをポンとお客さんの方に伝えて渡してあげるっていう作業が必要なんだけど、映画の場合は見た人が自分の中で消化していく時間が出てくるんでね。全部作って『どうぞ』って言うと、何か映画っぽくなくて。『何なんだろう、あの時間』とか『あれって何だったんだろう』的な時間が必要なんだなあと僕、あらためて思っていたんで、そういう意味ではうまく映画にまとめたなって思いはありますね」

 -映画は3つのエピソードで構成されています。1エピソードあたりの時間がドラマより長く、伝わるものが多いと思います。ドラマとは違った丁寧さがあるというか。

 「監督が現場で言ってましたよ。『そこ、間を取ってもいいですよ』みたいな。時間的余裕があるから。(ドラマだと)『コンパクトにしていかないといけない』という思いがどうしてもはたらくと思うんですけど、映画の場合だと、そのセリフがすぐ出てこなかったり、しゃべりにくかったり、『時間かけていいですよ』っていうような時間の取り方ができますよね」

 (続けて)

 「微妙に違うんですよね。最初の(エピソード)が30分くらい。後半(のエピソード)になるとちょっと長くなっていくっていうふうに、ちょっとずつ時間の作り方というか、かけ方も微妙に変えてるんですよ。最初(のエピソード)はお金だけのエピソードとして割とコンパクトにもっていって。不思議な少女が現れるっていうような話のところにもってきたら、そこからずーっと時間かけてるし。最後の話の、福島の男が上京してきてっていう辺りになると、どちらかっていうと丁寧に2話、3話部分は描いてるなっていう感じはしますからね」

 -ドラマでは見られない、マスターの日常も描かれます。

 「(松岡監督は)『日常の点描みたいなものをちょっと入れてるよ』とは言うんだけど。やっぱり映画監督だなと思うのは、そういう撮り方をしつつ、情報としては、マスターの点描を借りて西新宿の高層ビル街を見せるとか、お店(深夜食堂)につながっていく、ここ(深夜食堂の前)の路地にたどり着く街の情景というか広がりというか。結局ここに戻っていくんで。やっぱりここだけで話はなかなか作りづらいだろうから、そこをマスターの買い物とかを見せながら、リアルな新宿の街の様子を撮っていくっていう、どちらかって言ったらそのはたらきの方が強いんで。俺には『マスターの日常っていうか、普段見せないところも撮るから』とかって言ってるけど、果たしてそうだったのかなって、ちょっと思う時がありますね」

 -確かに、マスターについての情報が増えたかと言えば、そんなに増えていません。

 「そうそうそう、同じなんですね。だいたいこれくらいのことやってんのかな、ぐらいのことで。その辺はうまく撮ったと思う。(カメラが)引いてきたら、ちゃんと高層ビルを見せるっていうのが主眼だもんね。あれがあるのとないのとじゃ、やっぱりどこが舞台なの?ってなっちゃうし。ロケーションに行っても、適当な杉並辺りのところを撮っといて新宿の街を思わせるっていうんじゃなくて、ホントに引いてきたらそこにリアルに新宿の高層ビル街が見えるっていうようにちゃんと撮ってるから、その辺りがやっぱり『あ、映画だな』と思わせますよね」

 -マスターが住んでいるのは西新宿なんですね。

 「実際そうで。あの角度で見えたら西新宿だなって誰も思うと思うんだけど、開発がどんどんどんどん進んでる新宿の街の中で比較的進んでない、残ってるところですよね。たぶんロケハンして『ここ使えそうだ』ってとこで。マスターがあまりにもオシャレなマンション住んでたら、ちょっと違和感あるもんね。この飯屋で、オートロックがあるようなところに出入りしてたら。だから、それらしいアパートとか外観を探してきて、なおかつ『ここどこ?』っていうんじゃなくて、新宿の高層ビル街がちゃんと見えてくるっていうところなんだろうと思いますけどね」

 -ドラマの第1シリーズは2009年に放送されました。

 「こういう話があって、やりませんかって話をいただいて、僕の場合は何となく原作を知ってたんですよね。喫茶店辺りで何度か読んでいて『ああアレね』っていうぐらいは。これをドラマ化するとなったら、あのテイストをどうやって映像化していくのかっていうのは難しい問題だなって思ってまして」

 (続けて)

 「ウチのスタッフがたまたま松岡さんと飲み屋でこの話とは別に(話を)してる時に、無防備にもこういうのどうでしょうかね?って話を出した時から始まってるから。何でも言ってみるべきものだなって僕は思うけど」

 (続けて)

 「最初、松岡さんは、僕、映画監督だからテレビはちょっとって否定的だったんだけど、じゃあ原作をちょっと見せてって言って、『原作、面白いね~』って。監督なりに、切り取り方によって、自分たちの映画的ベースで撮れるかもしれないっていうふうにちょっと思ったんじゃないか。それで、じゃあやってみようかなってことで」

 (続けて)

 「松岡さんサイドとしたら、(ドラマの1シリーズを)10本全部(監督する)っていうのは物理的に無理だから、山下(淳弘監督)さんなりを呼んできて、何本かは担当してもらって。スタッフも映画のスタッフを自前で呼んで来ないと、意思の疎通とか、言いたいこととか、希望することがなかなか伝わっていかないってとこあるじゃないですか。だから気心知れてるスタッフをまず集めるっていうのがあったし」

 (続けて)

 「『いいアイデアだな』って思ったのは、飯島奈美さん(フードスタイリスト)を最初から連れてきたっていう。今から思えば主題歌を歌ってる鈴木常吉さんなんかも、想定してたかのように全部キャスティングして。また合うんですよね、常吉さんの歌が『深夜食堂』に」

 (続けて)

 「原作の面白さっていうのを抜きにしては語れないところがあると思うけど、原作におんぶに抱っこ的な感じでやってしまうっていうことではなくて、どうやって映像化していくのかっていう意味では、松岡さんを中心にそういうスタッフを集めてきたっていうのは、今から思うとホントに大正解だったろうなと思いますね」

 (続けて)

 「全然、別物ですよね、コミックの世界と。この映像の世界もちゃんと『深夜食堂』してるって。普通、『原作ものが先行しちゃってるから、どうも(映像化は)違和感があった』ってなるんですけど、コミックの方がいいとか悪いとかっていう言い方があるんだけど、意外とこの映像のファンの人がこれはこれで同時にいて、あまり(原作ファンと)ケンカしないんですよね。そういう意味では珍しいのかな」

 -ドラマが3シリーズも作られるロングヒットになったことについて。

 「3本までは行くと思ったんですか?(と、遠藤日登思プロデューサーに。遠藤氏は『全く思ってないですね』)でも、1本で終わるとも思ってないでしょ?(遠藤氏は『最初は何も考えてなかったんですが。1回で終わると思ってました』)何も考えていない。それが成功してるというか、最初からもくろみとして『こうしたいああしたい』とか『こうもっていきたい』という野心があまりなかったんじゃないか。でも『映画化したい』と言ってたような気がするけどね、プロデューサーはどこかで」

 -私が09年に第1シリーズを見始めたきっかけは、松岡さんが監督して、小林さんが主演していることでした。実際にドラマを見てみると、映画を見ている感覚になって。こういうドラマが好きな人が存在するのは分かる気がします。

 「そうなんですよね。それと、昭和テイストでしょ?こういうのを今どきやる、というのと。松岡さんに、どういう飯屋にしてもらいたいかとお話しした時に、僕、TBSの久世光彦さん(故人。『悪魔のようなあいつ』『ムー』など、歴史的な名作ドラマを数多く演出)と長いこと一緒に仕事していて」

 (続けて)

 「僕も見る側だったんだけど、例えば『寺内貫太郎一家』でも『時間ですよ』でもそうなんですけども、必ずその人たち(登場人物)が近所の赤ぢょうちんのお店に飲みに行ったりするんですけど。『寺内貫太郎』の中で見ると、篠ひろ子さんなんかが、謎のようにきれいな人が居酒屋みたいなカウンターだけの店をやっていて、藤竜也さんはサングラスかけて隅っこにいる設定で」

 (続けて)

 「こちらの方に伴淳(三郎)さんだ由利徹さんだ左とん平さんとかっていい大人がこそこそと集まって、篠ひろ子さん目当てで行ってるにもかかわらず、今夜は何かある、緊張感が走ってるみたいな感じで、藤竜也さんの存在が気になって、こっちの方でいい大人が飲んでるっていう風情がすごいおかしくて。ああいう飲み屋とかっていうのがちょっとあったらいいよね、っていうふうには言ったんですよ。そしたら松岡さん、全部それ見てくれて」

 (続けて)

 「言ってみたらそこだけを30分で。色んなお客さんが訪ねてくる赤ぢょうちんだけを舞台にして何か作ってる感覚で深夜食堂できないすかね、みたいな話をした記憶はあるんですよね。松岡さんもそこ面白いんじゃないの、っていう。ゲストが出てきて、もちろん番組の中ではそういう(ゲストの)エピソードを、ロケーションをやったりして追ってはいるんだけど、基本的に飯屋で、集まった時に色んな話をする」

 (続けて)

 「お客さん(視聴者)としては、そこからどういうことがあったんだろってのは、想像するというかね。舞台は飯屋、深夜食堂だけど、登場人物たちの色んな出来事を、こういうやりとりがあってこういうことになったんじゃないの、こういう失恋をしたんじゃないの、こういう出来事があったんじゃないの、と想像しながら、ああ今ここにこうやってこの人はこういう気持ちで座ってるんだっていう」

 (続けて)

 「ずうっと深夜食堂の中で展開してくっていうベースを作ったっていう意味では、そういう映画的なものを作っていく、監督を含めたスタッフたちに委ねるというか、集合させてくれたということで、ある程度ここら辺のテイストが決まったんじゃないかなと思いますよね。(飯屋の)表にポッと出てきたり、表で出会ったりするシーンがけっこうありますけど、やっぱりここと、店と表がつながってる感じがするんですよね」

 -店から外の路地が見えたりします。

 「そうそうそう。通行人とかもね、通ってるし。映画に関してもそうだし。ここ(店の前)で立ち止まって、中に入るか入るまいかってちょっと(思案)してるシーンとかありますけど、そういうところでも舞台として絵になるというか。そこでパネルっぽかったり、塀を持ってきただけで、表を作りましたっていうんだと風情が出ないっていうか、味わいが出ないと思うんですよね。やっぱりここまで路地をちゃんと丁寧に作るとか、電線をちゃんと張るとかっていうことが、きちんとセットとしてできてないと」

 (続けて)

 「これやった人がね、みんなね、たぶん薄給っていうかね、ギャラ合わないような仕事をやっててね、そこアタマ下がるんだけど、皆面白がってることは確かですよね。美術監督の原田(満生)さんもそうだし、照明も大変なのに、どちらかって言ったらそれをよし、作ろうっていうので作ってますよね。飯島さんの料理もそうだし」

 (続けて)

 「カメラマンの話だけで言っても、普通だとテレビのカメラで撮ったら一発で撮れるんですよ。要するにオールマイティーにピント合わせちゃえば撮れるんだけど、被写体深度を深くするっていうのは、ここ(の1点)にしかピントを合わせない(場合)にしたって、ちょっとでも本番で動きがついちゃうとボケるんですよ。ボケるっていうのは、プロが見た時点で。それが気持ち悪いからってもう1回やらせてくれってなるんだけど、そのカメラマンでさえも、そうやって雰囲気を出すために操作してるんですよ」

 (続けて)

 「映画畑の人が撮ってるなってテイストを作り上げたっていう意味では、さっき言ったように、持ち場持ち場の人がそれを楽しんで深夜食堂をやれたっていうのが大きいんじゃないですかね」

 -飯島さんは持ち出しでやっていたと聞きます。そんなふうに自分から参加していきたいという気持ちにさせる作品ですか。

 「レギュラーの人も小劇場の人とか多いから、芝居(の公演)中に(スケジュールが)引っかかったりするんだけど、それでも『またシリーズ始まります』っていうのが事務所を通して入るじゃないですか。そういう時、やっぱり何が何でも一話だけでも出たいって、楽しみにしてたりする人がいるんですよ。みんながね。それも珍しいですよ、ホント」

 (続けて)

 「条件は決して良くないんですよ。遠いところまで朝早くから行って。都内の近くにあるセットでもないし。今回は(埼玉の)入間の方で。いったん都心に出て、(西武)池袋線に乗って乗り換えてみたいな世界で、すごく手間かかんのに。だけども出たいって人はいるし。実際に監督と飲み屋で会ったら、出たいと訴えて出た人とかね、けっこういるみたいですね。役者さんの中でも見る側のファンだったりして、ぜひ声かけてくださいっていうふうに言ってる人が多いんですよね」

 -料理を実際に作るシーンが多いですね。「イキのいい奴」(85、87年)でも料理人の役でしたが、実生活で料理はしますか。

 「大したことないんですよ。半製品って僕、言ってるんだけど、冷ややっこを買ってきて切って、おかかをばっと上にかけたら食えなくないじゃないですか。しょうがをちょっと丁寧におろしたら。『それ、料理と言えるかどうか』っていう手合いのものはいっぱい作りますけど。仕込みをしてちゃんとだしをとってっていうような料理をしてるかっていうとそうでもないんで。飲みのあてに作るっていうのんだと、ちょこちょこっと作りますけど」

 -出演にあたって、あらためて練習しましたか。

 「最初の時はやりましたね。飯島さんの事務所に行って、一通り豚汁を作るっていうのと、何品か作りました。それをみんなでああだこうだと言いながら食べたり。パート2まではやりましたね。パート3に行った時は、卵焼きの工程に関しては、現場で何回か練習したりとか、そういうことはありましたけど。ものすごく丁寧に教えてくれるんですよ。飯島さんと助手の女性が、心配性なくらいに」

 (続けて)

 「だけど、深夜食堂のマスターが、いわゆる料理人みたいに手際があまりにも良すぎちゃうと、僕の中で深夜食堂のマスターじゃない。(注文を)言われて、ある種の戸惑いみたいのが-男の料理って僕一言で言っちゃうんだけど-手付きの中に現れてていいんじゃないかなって思ってて。ちょっとはみ出したりしてすぐ戻すようなシーンがあっていいんじゃないかってぐらいに思ってやってるんで。一発勝負なんですよね。もう(カメラを)回してくださいって。かつらむきやってるとこなんかも、かつらむきの練習も以前しましたけど、素材の方を回すんだっていうふうなのを覚えていても、それでもう一発勝負で行こうって感じでやりますね」

 -腕が上がったとか、実生活で料理するようになったというようなことは。

 「ことはないんじゃないですかね。豚汁は2、3度作りましたけどね、うちでも。(材料を)買ってくると、分量が多くなっちゃうんですよ。こんな(多くの)量を作って、小分けにして冷凍庫に入れといて、あっため直して食べるってことをずっとやってましたけど。だから1回である分量だけをきれいに作るっていうよりか、同じようにどーんと作っちゃうんですよ、深夜食堂的に。あの鍋にいっぱい作っちゃうみたいな」

 (続けて)

 「でもテレビのシリーズ、原作でも、料理と言えるほどのものは出てきてないですよ。(例えば)タコウインナーっていうのは、プラスに切って炒めてるだけだったり。そういうおかずであり料理ですよね。仕込みをちゃんとやっておくって料理だと、お客さんからふいに『こんなものできます?』って言われた時に、最初っから用意してるっていうのはおかしいんで。その場で言われて『ああ、(今ある)材料で、こんなもんで良ければ作るよ』って。その場で作ってるっていう設定になってるんで。前もって下処理をしとくとかっていうような料理じゃないところがまたミソなんですよね」

 -基本的な食材ですぐできるという。

 「そうですよ。厚揚げを焼いたりとか、そういうことなんで。基本的には。あと、タラコを焼くみたいなことで」

 -「深夜食堂」では、状況劇場の先輩だった不破万作さん、映画「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」「歓喜の歌」で組んだ松岡監督、今回の映画なら過去に何度も共演している田中裕子さんといった、小林さんの歴史に欠かせない方々が絡んでいるのも見どころです。

 「不破さんに関しては、本当に一緒に仕事したかったなっての思ってましたから。芝居の時でも声かけたりとかしてたんで。深夜食堂で一緒にこうやってやれるっていうのは、僕も個人的には楽しみだったりするんですよ。綾田(俊樹)さんなんか、仕事するのは初めてで。近いところにはいたと思うんですけど。ずっと芝居やっておられたし、色んな映像の仕事もやってるってのは知ってたんですけど、一緒の現場になるっていうことはなかったんで。一緒にやれたりして良かったなと思うし」

 (続けて)

 「松重(豊)君とか、あの辺りの若手…なわけじゃないけど、僕からすれば若い人が、芝居やってて、今、世間で言うところの売れたっていうか、そういうふうになってる人と、やっぱり深夜食堂で出会ってますからね。そういう意味では懐かしいなと思いますけど」

 (続けて)

 「須藤理彩なんかも、朝ドラ(『天うらら』)の時に僕、親方の役やって、彼女の大きな意味でのデビュー作に一緒だったんで、そういう意味では懐かしいなあっていう感じにもなるし。そういう意味じゃ、深夜食堂という舞台でそういう人たちとまた会えるというか仕事できるっていうのは、楽しみというか。場所がないとそう思いがあってもなかなか会えないんですけど、そういう形で一緒に仕事をできるっていうのはうれしいですよね」

 -「深夜食堂」のヒットをきっかけに「孤独のグルメ」「めしばな刑事タチバナ」「花のズボラ飯」など、深夜の食ドラマというジャンルが成立して。

 「松重君もやってるしね(『孤独のグルメ』)。だいたい僕、深夜食堂がヒットしてる感覚が全くないんだけど。やってる側は分かんないですね。特別、視聴率がいいわけじゃないんでしょ?ただ、録画するっていうのが今あるから。DVDとかで、貸し出し中っていうのはけっこう多いんですよね。今、レンタルんとこで、意外と借りに行ったらなくなってたとかって話は聞きますけどね」

 -帰宅が遅い職種なら、ちょうどいい時間に放送しています。

 「お店やってる人なんかが、(午前)1~2時で終わって、片付けて家に帰ったら、自分たちが見る番組がないところに、ちょうど深夜枠でやってるという。そういう話は大阪に行ったりとか、地方に行った時も聞いたし。そういうお店の人は、ウチがモデルでしょ?っていう人もいたし。東京でも、僕の店がヒントになってんでしょ?とか言う人がいましたよ」

 -それだけ「深夜食堂」には、普遍的な何かがあるのかもしれません。

 「面白がって見てもらって、次何出てくんのかなあっていう単純な楽しみとか、ベタな話っていやベタな話けっこう多いから、それでこの深夜食堂っていう小さな飯屋の中で人生模様、それぞれ事情がある人がちょっと寄ってそれで何かドラマを見せていくっていうテイストを楽しんでもらって見ていただいているんだったら、作ってる側はすごくうれしいですよね」

 -ドラマが3シリーズできて、映画ができて、ファンとしてはこの後もずっと続けてほしいと思います。

 「ホントに1回とことん凝りに凝って、セットがもう一段拡大するのもちょっと見てみたいっていう気がしなくはないけど。映画がそこそこヒットというか、ま、中ヒット、ちょっとヒットすれば、それなりの話はもしかしたら出てくるのかもしれませんけどね」

 -小林さんは、もう1回と言われたらやぶさかではないですか。

 「ですね。さっき言ったように、色んな役者さんと会ったりスタッフと会うっていうのは、やっぱりこのセットならではなので。この中で徐々に、それぞれの役割っていったらおかしいけど、常連のお客さんの中にはもう、セットが変わってる(シリーズごとに建て直す)にもかかわらず、普通にこう座るもんね。何の抵抗もなく。その辺りまでみんななじんでるっていう感じはするんですよね。なじみ感はやっぱりすごいですよね」

 ◆「深夜食堂」とは

 「深夜食堂」は、累計240万部を発行している安倍夜郎氏の人気漫画が原作で、主演の小林薫いわく「それぞれ事情がある人がちょっと小さな飯屋に寄って、何かドラマを見せていく」作品だ。

 東京・新宿の繁華街にある「めしや」、通称・深夜食堂の常連客を演じるのは不破万作、綾野俊樹、光石研、松重豊、須藤理彩ら。第1、2シリーズでは謎の常連客役だったオダギリジョーが、第3シリーズからは交番の警察官を演じている。

 映画版は、次の3つのエピソードを軸に構成される。

 (1)パトロンを亡くしたばかりのたまこ(高岡早紀)は、深夜食堂で出会った年下のはじめ(柄本時生)と同せいを始め…(2)料理上手で訳ありのみちる(多部未華子)が深夜食堂に住み込み…(3)東日本大震災の被災地にボランティアとして通っていたあけみ(菊池亜希子)を、妻を津波で亡くした被災者の謙三(筒井道隆)が追いかけて上京し…。

 他に田中裕子、余貴美子も今回の映画版で「深夜食堂」初登場。ドラマでは描かれなかった、食堂の外でのマスター(小林薫)の日常も見どころだ。

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