【野球】巨人新コーチ田代富雄氏の人柄

 今季途中まで楽天の1軍打撃コーチを務めていた田代富雄氏が、巨人の2軍と3軍を巡回する「ファーム巡回打撃コーチ」に就任した。

 先日、直接会談したという堤GMは「人間的にしっかりした方。技術だけじゃなく、野球選手じゃなくなったときに、社会人としてどうするかを指導できる方。人間教育ができる。ファームを任せて、十分な能力を発揮してくれる」と、その人柄にほれ込んだ。賭博問題という暗いニュースに直面している巨人。選手の教育、指導という意味でも、田代氏にかかる期待は大きいと言えそうだ。

 2009年に横浜担当で1年間、2012年から楽天担当で3年間、田代富雄を取材してきた。「ぼくとつ」という言葉が似合う男。だが、私が語るよりも、周囲の人間の反応にその人柄が表れている。

 巨人・村田修一は横浜在籍時代、田代氏がシーズン中に監督代行に就任すると「田代さんを男にしよう」とチームメートを集め決起集会を開いた。ソフトバンク・内川聖一に話を聞きに行くと、毎回のように「田代さん元気?」と確認された。元楽天・マギーは大リーグに復帰した際「田代サンに感謝している」と語ったという。

 打撃コーチとしての指導方法は、まずそれぞれの選手の打撃を見る。その上で、強制、矯正はしない。「オレはこうだと思ってる」。自身の見解を伝え、あとは選手に任せる。自由と工夫を与え、実力をつけた田代門下生は多い。

 義理と人情の男。個人的にも、食事に連れて行ってもらった。各地に“行きつけ”がある。「あそこの天ぷら屋の大将がよ、カウンターで丁寧に揚げてくれるんだよ。ああいう姿見ると、また行ってやりてえなと思うんだよ」。味よりも、お店の雰囲気や空気を大事にする人だ。ちなみに、天ぷらの味も最高だったが(笑)。

 昨年、星野監督(当時)が辞任したことで、自身も辞表を書いた。決意は固かったが、最終的に「デーブを支えてやってくれ」という星野監督の言葉に翻った。「監督はオレを呼んでくれた人。親分が言うんだ。やることにしたよオレは」。その言葉を聞いて、うれしかったのを覚えている。

 だが7月末に楽天を辞任した。8月、茅ケ崎に戻った田代さんに会いに行って、聞いた。「星野さんには何て言ったんですか?」。「電話したけどつながらなかったから、メールしたよ。『(星野)監督の言われたことができなくなったので、辞めさせていただきます』」。さまざまな思いはあれど、自分の決断に後悔はなかった。

 シーズン中に辞めた人間が、すぐに他球団に、しかもこれまでゆかりのなかった巨人に入るというのは、田代富雄の人柄そのものだろうと思う。茅ケ崎でつぶやいていた。「またユニホーム着てえなあ」。すぐに訪れた、その機会。田代富雄の今後と、そして新たに出てくる門下生の活躍を期待している。

(デイリースポーツ・橋本雄一)

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