イチロー引退 45歳決断「悔いなし」日本で花道…感動のスタンディングオベーション

 「アスレチックス4-5マリナーズ」(21日、東京ドーム)

 マリナーズのイチロー外野手(45)が21日、現役引退を発表した。同日行われた東京ドームでの、アスレチックスとの開幕第2戦でも前日に続き「9番・右翼」で先発したイチロー。日米両球界で記録と記憶に残る活躍を演じた大選手のラストプレー。一つの歴史が終わった。

 別れの時がやってきた。八回の守備。イチローが右翼に就くのを見計らい、サービス監督がベンチから飛び出し、選手の交代を告げた。声をからして声援を送ってきた右翼席を振り返り、グラブを挙げる。左翼、中堅、右翼線…。超満員4万6451人が一斉に立ち上がり、涙を流しながら拍手を送るスタンドを見渡し、何度も手を挙げた。

 感動の時間は続く。三塁側ベンチでは仲間たちが待ってくれていた。悲しさを見せまいと作り笑顔のイチローが選手、首脳陣、裏方、一人ひとりとハグを交わす。この日がメジャー初登板だった菊池がこらえきれずに号泣する。背番号「51」を師と仰ぐゴードンのほおにも涙が伝った。

 メジャー通算3089安打。希代の安打製造機は4度打席に立った。1点リードの七回無死二塁の好機は見逃し三振。同点の八回2死二塁の勝ち越し機は遊ゴロ。歯を食いしばり、伸ばした最後の一歩はわずかに届かず。野球人生最後の打席は大きなため息の後、万雷の拍手で締められた。

 前夜の開幕戦は史上最高齢の外野手として出場。「最低50歳までプレーする」。そう宣言したのは18年3月。しかし、故障と不振から同年5月に会長付特別補佐に就任。今年2月、約9カ月のブランクを経てキャンプ初日を迎えた際には不可能だという声を意識し「安易の責任のない意見、そういうものを裏切りたいと思っています」と反骨心をのぞかせた。

 プロ入り以降、バットの長さは33・5インチ、形状やバランスは変わっていない。しかし、かつて910グラムあった重量は900グラムを切った。年齢による体調の変化は否定できなかった。

 勝利の瞬間、笑顔でベンチから飛び出し、仲間たちとハイタッチを交わした。その後、再び、ベンチ裏に消えたが、鳴りやまないイチローコールに応えるかのように三たび、フィールドに出て場内を一周。感謝の気持ちを態度で示した。

 「後悔などあろうはずがありません」。すがすがしい笑顔で、バットを置いた。

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