日本で6匹中5匹もいるけれど……今は会えない「ウォンバット」の聖地 市役所職員も推しまくり、1日だけ会えるめでたい企画も

「ウォめでとう!」──そんな声が聞こえてきそうな婚姻届が、大阪府池田市に誕生した。その名も「ウォンちゃん婚姻届」が、9月1日から市役所の窓口で配布される。さらに10月18日の「ウォンバットの日」には、この婚姻届を使ったカップル1組を祝う『結婚うぉ祝いキャンペーン』も開催される。

仕掛け人は、市役所の有志職員13人が2022年に結成した「ウォンバット課(自称)」。名前はちょっとユニークだが、ウォンバットへの愛は、いたって本気だ。

■ 日本のウォンバット、6匹中5匹が池田にウォンバットは、オーストラリア南東部やタスマニア島に生息する草食動物。丸っこくてもふもふの体に、つぶらな瞳。見ているだけで癒やされる、なんとも愛嬌のある動物だ。

池田市の「五月山動物園」では、姉妹都市であるタスマニア島のローンセストン市から1990年に3匹が贈られて以来、飼育を続けてきた。現在、日本で飼育されているウォンバットは6匹。そのうち5匹が池田で暮らしている。つまり、日本のウォンバットのほとんどが池田にいることになる。

中でも“レジェンド”として知られるのが、今年37歳を迎えたワインだ。人間なら100歳を超えるともいわれ、飼育下のウォンバットとして世界最高齢のギネス世界記録を更新し続けている。

そんなウォンバットたちが暮らす池田市は、いつしか「ウォンバットの聖地」と呼ばれるように。市も「ウォンバットと暮らすまち」を掲げ、まちの魅力としてPRを続けてきた。しかし、現在は動物園工事中のため会えず。そんななか、彼らに会える企画がおこなわれる。

■ 半年かけて作った「ウォンちゃん婚姻届」今回の婚姻届で主役を務めるのは、市公式のウォンバットイメージキャラクター「ウォンちゃん」。柔らかな黄色を基調に、森をイメージした木や花を配し、ウォンちゃんが2人の“ウォめでたい門出”を祝う愛らしいデザインだ。

ただし、婚姻届は正式な行政書類。かわいさだけを追求するわけにはいかない。「ウォンちゃん婚姻届」を企画した秘書広報課長の楠田慎太郎さんによると、職員へのアンケートなどを通じてデザインを検討し、完成までに約半年かかったという。

「本当はもう少し濃い色合いで印刷したかったのですが、婚姻届はコピーを取ったときにも文字が正確に読み取れないといけない。総合窓口とも調整を重ねました」。

ウォンちゃんのかわいさをどこまで盛り込み、行政書類としての正確さをどう守るか。半年にわたる「ウォンちゃんと行政書類の攻防」を経て、1枚の婚姻届が完成した。

■「自称」ウォンバット課、愛は本物この婚姻届をさらに盛り上げるのが、「ウォンバット課(自称)」だ。部署の垣根を越えた有志が月1回集まり、「こんなことをしたら面白いのでは」と自由にアイデアを出し合っている。

初期メンバーの一人、中村昌功さんは「カチッとした仕事としてではなく、職員も楽しみながら意見を出し合い、面白いイベントを企画することで、ウォンバットや池田市のPRにつなげていきたい」と話す。

2025年にメンバー入りした山下裕子さんにウォンバットの魅力について聞くと、「表情が豊かで、角度によっておっさんみたいに見える時もあれば、愛らしく見える時もある」と目を細める。山下さんの「推しウォンバット」は、昨秋に来日したばかりの新人・リク。走り回っている姿がかわいいのだという。

中村さんも負けていない。「お尻を振りながら歩く姿を見ているだけで、本当に癒やされます。争いのない平和な生きものなので、見ているだけで心が穏やかになりますね」と顔をほころばす。

「ウォンバット課(自称)」という肩書きこそユニークだが、その愛情はどうやら「自称」ではなさそうだ。

■ 新婚さん、新設ウォンバットエリアで記念撮影もそんな「ウォンバット課(自称)」が本気で仕掛けるのが『結婚うぉ祝いキャンペーン』だ。対象は、イベントで記入した「ウォンちゃん婚姻届」を提出し、10月18日のイベントに参加できるカップル1組。9月30日まで募集しており、申し込み多数の場合は抽選となる。

「うぉ祝い」の舞台は、五月山動物園の近くの五月山体育館。さらに特典がすごい。五月山動物園は現在、リニューアルに向けた第三期工事の真っ最中だが、新設されたウォンバットエリアに特別に立ち入り、ウォンバットたちを前に記念撮影できるという。「ドレスやスーツをお持ちいただければ、ウェディングフォトも撮影できます」と山下さん。

新郎新婦の門出を祝うのは、ウォンバットだけではない。瀧澤智子池田市長や五月山動物園の瀬島幸三園長からも、直接お祝いの言葉が贈られる予定だ。

気になる応募状況だが、すでに1組から応募があるといい、「ウォンバット課(自称)」のメンバーも、ひとまず「企画倒れ」は避けられそうだと胸をなでおろしている。

「ウォンちゃん婚姻届」は、実際に婚姻届を提出する予定がない人でも、市役所の窓口でもらうことができる。山下さんは「婚姻届をきっかけに、ウォンバットをもっと好きになり、池田にも興味を持ってもらえたら」と呼びかける。

愛を誓う2人のそばには、ウォンバット。「ウォめでとう」の声とともに結ばれるのは、2人の縁だけではない。池田とウォンバットとの縁もまた、深まりそうだ。

取材・文・写真/西部マキコ

(Lmaga.jp)

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