元宝塚トップ娘役の潤花「前向きなパッションをもっていたい」新作を観た宝塚時代の仲間たちが驚いたこととは?7日大阪で舞台開幕
華のある存在感や伸びやかなダンスで宝塚歌劇団の舞台を彩り、2023年6月の退団後も舞台や映像で活躍する、元宙組トップ娘役の潤花。2026年はミュージカル『ISSA in Paris』からスタートし、「日生劇場」(東京都千代田区)の東京公演を経て、2月7日より「梅田芸術劇場メインホール」(大阪市北区)での大阪公演に出演する(2月15日まで上演)。
「若き日の小林一茶が消息不明だった空白の10年、パリに渡っていたら--」。『ファントム』などで有名な巨匠モーリー・イェストン氏原案・作詞・作曲の壮大なファンタジーが、バラエティに富んだ音楽に乗せ、実力派キャストによって届けられる。注目の世界初演の舞台に立つなかで気づいたこと、彼女の感性が表れているダンスや、梅田への想いなどを大阪で語った。
取材・文/小野寺亜紀 撮影/Lmaga.jp編集部
■ 巨匠モーリー・イェストン氏最新作で、パリに住むガイド兼振付家ルイーズ役--本日のヘアスタイル、今までの潤花さんとはまた違って、斬新な印象を受けました。
これは『ISSA in Paris』での指定だったんです。ポスター撮影の時点から、ヘアメイクさんが「ルイーズには金色のインナーカラーを入れたい」とおっしゃって。そこから「本番は地毛でいきます!」とお約束をし、ポスターのときよりトップの髪色は黒く、全体的に短くなりました。
--ビジュアル面から役柄を体現しているのでしょうか。
そうですね。私が演じるルイーズは振付家で、パリにいる日系人。世の中に対して自分の声をきちんとあげる、芯の強い女性です。彼女は副業でパリのガイドをしているのですが、ガイドという仕事も、キャラクターとしてとても大きな意味があると思っています。
--ルイーズは、シンガーソングライターである海人(ISSA/海宝直人)の母、俳句研究家の絹子(彩吹真央・藤咲みどりのWキャスト)とパリで交流があり、海人に大きな影響を与える女性のようですね。
ルイーズが生きていくうえで大切にしていることは、嘘をつかずに自分であり続けること、そして世の中にみんなの居場所があればいいと思っていることなんですね。絹子さんとの出会い、そして絹子さんの原稿、海人への思い、絹子さんの生き方にルイーズはものすごく感銘を受けました。だからこそ誰よりも絹子さんの思いを海人に伝えたいと思っていたはずです。そして海人と出会って知っていくたびにルイーズ自身も変化していっているのを感じています。
今回の稽古場には通訳の方がいらっしゃったのですが、私は「ガイド」という役柄から、その通訳の方をよく見ていました。通訳というお仕事は、その人が「何を伝えたいのか」「何を本当に言いたいのか」を一度受け取ってから、言葉として届ける。その作業が通訳なんだと感じましたし、ルイーズと重なる部分がありました。
--そうなのですね。本作はモーリー・イェストンさんの原案・作詞・作曲のオリジナルミュージカルで、振付には今注目のジュリア・チェンさんが関わられているなど、世界初演として注目を浴びています。
まず、モーリーさんご自身が小林一茶さんを題材にして「この作品を作りたい」と思われた、その思いが、じかに伝わってくるところが魅力だと思います。とても温かい作品です。
演出の藤田俊太郎さんをはじめ、スタッフの皆さん、海宝直人さん、岡宮来夢くんをはじめとするキャストの皆さんと、「いちからみんなで作る」ということを実感しました。オリジナル作品の難しさもありましたが、同時にとても自由でもありました。さまざまな方々の愛や挑戦、技術が詰まっている作品だと思います。
--お客様の反応を受け、作品の魅力についてどのように感じましたか?
あらためてこの作品は、海人の成長物語だなと感じました。今の時代、皆さん本当に忙しくて、どこか生き急いでいるところがありますよね。私は宝塚を退団し、SNSを始めてファンの方との交流が増えたのですが、皆さんいろいろなお仕事をされていて、さまざまな悩みや辛さも抱えていることを、より身近に感じるようになりました。そんな世の中だからこそ、お客様は海人に共感するというか……。
--海人は曲を創作するなかでスランプに陥っている、とあります。
クリエイティブな仕事は心が元気でないと、言葉が出てこなくなることも。皆さまがお金を払って観に来てくださる仕事、自分の発信で何かを生み出す仕事は、その人の人生の密度が豊かでないと、出てくるものも出てこないのでは、と感じます。
--そこは潤花さんご自身も共感できますか?
はい。お客様は舞台に立つ私たちに、元気をもらいに来てくださっていると思うんです。忙しい日々の癒しや息抜きに来てくださっているからこそ、前向きなパッションをもっていたいと思っています。
■ 時空のズレが「事実」を超える「真実」へと導く--『ISSA in Paris』は現代と18世紀、ふたつの時空が同時に進行していく構成になっていますね。
最初に台本をいただいたときは、「お客様、ちゃんとついてきてくださるかな?」と少し思いました。初日の舞台が開くまで、皆さんと本当に試行錯誤しながら作ってきた作品です。
私は現代のパリを生きる人物として、海人と同じ時空に存在しているのですが、そこに絹子さんの原稿によって、小林一茶(岡宮来夢)やテレーズ(豊原江理佳)といった存在が立ち現れてきて、時代を行き来する構成になっています。
--実際に演じられていかがですか。
開幕してみると、不思議と一本、太い線が通っている感覚がありました。「この時空のズレそのものが、最終的には「事実」を超える「真実」になっていくんだな」と感じました。
現実では、目に見えない世界や実際には起こらないことと認識していても、どこかで信じている部分がある。だからこそ、お客様も自然とこの物語の世界に入り込んでくださったのかなと思います。
--ご自身は、そうした「見えないもの」についてどう感じていますか?
私は結構、見えない世界とか信じるタイプです。舞台に立っていると、「目に見えないエネルギーはきっとあるよね」と思う瞬間が本当にあって。最終、ルイーズも海人と一緒に、絹子さんの原稿の世界に入っていくのですが、「海人に絹子さんの思いが伝わればいいな」と思いながら演じています。
■ 「かの、筋肉が!」宝塚の娘役時代とは、筋肉の付き方も違う!?--開幕した舞台のプロモーション映像を拝見すると、潤花さんのコンテンポラリーダンスのようなシーンが印象的でした。
最初に振付家、ジュリア・チェンさんのワークショップがあったんです。そのときコンテンポラリー風だけど、どこかキレのあるジャズっぽさや、クラシック調なところがある、あまり踊ったことのないジャンルだったので、すごく難しいなと思いました。
でも舞台に立って、自分なりに飲み込んで踊ってみると、「あ、ここでマッチするんだ」という瞬間が。今までとは全然違う踊りなので、体の筋肉の付き方も違います(笑)。
--宝塚で娘役をされていたときとは違いますか?
宝塚の仲間たちが観に来てくれたときに、「かの(潤)、筋肉が!」って言われました(笑)。別のジャンルのダンスを踊っていると、筋肉も変わってくるんだなと実感しました。
--海人の前で踊られるこのシーンは、作品の中でも大切な場面のようですね。
はい、大事です。このシーンは特に、「生み出すってこういうことだよね」と思います。ただ決まったことをやるんじゃなくて、人と人とのコミュニケーション、助け合い、感情の震わせ合いで、「クリエイティブ」が生まれていく。そういうときって、言葉はいらないんですよね。
セリフがなくても「今、生まれたよね?」と共鳴している感覚がわかります。だからあのシーンの終わりにセリフがないのも、すごく納得していて。触れ合っている状態でお互い確信しているのを、毎日新鮮に感じています。
--そういう感性の響き合いなどをじかに感じるから、舞台はおもしろいですよね。
舞台は本当に「唯一無二だな」と思います。劇場にはスタッフの方が袖にいてくださり、誰ひとり欠けても成り立たない。
演者も毎日同じ状態じゃないし、お客様も毎日違う。同じセリフ、同じ物語をたどっているのに、毎日どこかが違います。だから自然と新鮮になるんです。「昨日はあそこが生まれたけど、今日は別のところでこう感じた」とか、その繰り返しなのがおもしろくて。何回も観に来てくださる方がいるのも、すごくわかります。
--毎公演、お客様の反応も違いますか?
本当に違います。この作品の東京公演でも、同じ日は一日もありませんでした。お客様が泣かれている様子が伝わってくるのですが、そのタイミングも皆さん違うように感じていて。それだけ、たくさんのメッセージが詰まった作品なのだと思います。
■ 「梅田芸術劇場」での、新しい思い出ができるのを楽しみに…--2月7日からは大阪公演が始まりますね。
劇場も変わり、お客様も変わって、また芝居も変化していくと思います。私たち自身が、どんなふうに変わっていくのか…それを楽しみにしながら、舞台に立ちたいと思っています。
--特に梅田はなじみのある場所でしょうか?
やっぱり「帰ってきた!」と思います。兵庫県宝塚市に10年間住んでいましたし、何かあれば梅田へ来て、「梅田芸術劇場」の舞台にも何度も立たせていただきました。特に楽屋入口に行くと、「今、いつの時代の自分だったっけ?」と思います(笑)。昨年は『二都物語』の皆さんと「梅田芸術劇場メインホール」に来ましたが、今回はまた新たな皆さんと来ますから、「梅田芸術劇場」での新しい思い出ができるのを楽しみにしています。
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ミュージカル『ISSA in Paris』は、2月7日~15日に「梅田芸術劇場メインホール」で上演。その後、愛知でも公演をおこなう。チケット発売中。
(Lmaga.jp)
