たくろう、初めて掴んだ「M-1決勝」…勝ち切れなかった7年と本音「信じられるように」
12月21日に開催される、漫才日本一決定戦『M-1グランプリ2025』決勝。大阪を拠点組は、豪快キャプテンと共に、2016年結成・たくろう(赤木裕、きむらバンド)がファイナリストに選ばれた。
2018年に初めて準決勝へ進出したものの、以降は関西の賞レースでも「あと一歩」が続いた。ただ、「なんばグランド花月」(大阪市中央区)で開催された『M-1』準々決勝で大きな笑いを巻き起こし、勢いそのままに準決勝も突破。初の決勝戦を前に、たくろうの2人に話を訊いた。(取材・文/田辺ユウキ)
■ 「ここ3、4年は完全に心が折れた状態で」(赤木)──『M-1』決勝進出を聞いた瞬間は、どのような感情が湧き上がりましたか。
きむら:やったー!とかじゃなくて、まずはホッとしました。準決勝まではウケてはきていたので、これでアカンかったら、来年以降はしんどいやろうなっていうのと、赤木に対して「ありがとう、ようがんばってくれたね」と思いましたね。
赤木:僕もホッとしましたね。準決勝は会場的にもお客さんのウケが返ってきづらいそうなので、反応がどうだったのか自分では分からなかったんです。でも周りの芸人は「絶対に決勝行きましたよ」って言ってくれて。例えば炎の田上なんかは『M-1』の密着カメラに勝手に映りこんできて「行きました!」とかワケの分からんことまでしてきて…。
きむら:決勝進出者の記者会見でも言ったんですけど、あんなに微笑んでいる赤木は初めて見ました。良い表情でしたね。7年前に1度だけ準決勝へ行って以降、笑顔が消えましたから(笑)。ただ今回の『M-1』は周りの芸人からの評判もすこぶる良くて、逆に怖くなる瞬間もありました。僕らは関西の賞レースでも勝ち切ったことがないから、半信半疑なところもあったんです。
赤木:僕はここ3、4年は完全に心が折れた状態でなんとかやっている感じでした。日の目を浴びてなかったので…だいぶ暗い気持ちをまとっていたんですかね。でも決勝発表のあと、(会見のMC・マヂカルラブリーの)村上さんからずっと「めっちゃいい顔してるなあ」と声をかけられていました。
──コンビ結成から3度目の『M-1』で準決勝へ初進出して以降、準決進出も遠ざかっていた状況でしたね。
赤木:正直なところ、初めて準決勝へ進んだ当時は「来年は決勝や」と思っていました。2度目の準決勝進出、そして決勝進出までこんなに時間がかかるとは想像していなかったです。
きむら:何度か3回戦落ちもあって、「さすがに結構しんどい状況やな」とか思うことはありましたね。同期のカベポスター、ダブルヒガシ、ドーナツ・ピーナツが賞レースで結果を出していたし、後輩の勢いも感じるようになって、「みんなに置いていかれたくねぇな」みたいな焦りもありました。
──ただ2025年は状況も一変しました。「NGK」での準々決勝は会場が揺れるくらいウケていましたね。
きむら:間違いなく芸人人生であの日が一番ウケました。でも赤木のつかみがものすごくウケたとき、逆に冷静になれました。「このつかみに、なんでこんなに笑ってるんや!?」って冷静に考えるとめっちゃおもろなって、俯瞰で見ることができました。
赤木:準々決勝は漫才中も「会場が破裂するんちゃうか」「ウケすぎちゃうか」と不安すら覚えました。でもつかみで笑ってもらえたのは、ほんまに嬉しかったです。長いこと大阪でこのつかみをやってきたから、お客さんにも受け入れてもらえたんやなって。
■ 「赤木の顔に、まだまだ飽きない」(きむら)──ネタのスタイルも初期とは徐々に変わっていきましたよね。特にここ2、3年は今のスタイルを「見つけた!」という感じがしています。
きむら:コンビのスタイルはグラデーションで変わっていった感じですね。ただ、僕のスタイルは初期とは全然違います。前までは赤木の話に乗っていたことが多かったですけど、今は赤木が僕の要求に乗っかるしかない状況になっていますし…僕の役割はツッコミというより、アプローチという気がしています。
赤木:ネタの中のきむらさんはかなり無茶なことを毎回言ってくるんですけど、決勝でもその部分がスッと受け入れてもらえたらいいですね。
きむら:僕自身の気持ちの変化で言うと、「腹を括ることができた」という部分が大きい。以前は「2人で立ち向かって行くぞ」という意味で、ネタ中も赤木のサポートをしていました。でも今は、赤木がどう転んでも「おもろなる」と信じられるようになったんです。特に、赤木が2024年の『R-1』で準決まで進んで結果を残したときはめっちゃ嬉しかったですね。あのとき「俺が相方のことをめっちゃおもろいと思っていた気持ちは、間違ってなかった」って。自分は腹を括って、ドーンと構えてやっていくことにしました。
──きむらさんが感じている赤木さんの一番のおもしろさってどこですか。
きむら:一番は…やっぱり顔ですかね。10年くらい一緒にいますけど、まだまだ飽きないです。なんも分かってない顔をしてるじゃないですか。それが本当に魅力だと思いますし、実際、ほんまになんも分かってないときがありますし。
赤木:僕はマルチタスクが苦手で、バイトもすぐにクビになるタイプなんです。焼肉屋で働いていたときも、お客さんがいっぱい来てどうしようもなくて、注文を受けるだけ受けて、「あーしゃす!あーっしゃす!」と返事だけして注文を全部無視して、店を大パニックに陥れたことがありましたから…。
きむら:でも『M-1』きっかけで、もしいろんなバラエティ番組に出させていただけるようになったら、赤木のそういうパンパンになるところがおもしろいはず。大御所の方の前で緊張してパンパンになったら、それはそれで笑える。いつも賞レースの決勝のときは直前に「(ネタを)飛ばします」とか言うんですよ。でも僕は「オッケー」って。赤木の場合はネタが飛んでも、それがブーストになることがあるから。
赤木:ハードルを下げておいた方がええかなっていつも思っちゃって。その方が自分はやりやすいんです。
──大阪拠点のファイナリストの『M-1』優勝は、ミルクボーイ(2019年)以来、遠ざかっています。お2人に向けられる期待は大きいはず。
きむら:でもあんまり知られていないはずですし、ノーマークが一番楽です。
赤木:準々決勝のあと、ネタについて、バッテリィズの寺家さんから「あそこさえ良くなれば絶対に決勝へ行ける」と言われたところがあったんです。だからブラッシュアップして準決勝でやってみたけど、良くならなくて(笑)。それでも決勝へ行けたので、ネタ的にはまだノビシロがあると思っています。
きむら:みんなが頼もしい言葉をかけてくれるので、それを支えにしてがんばりたいです。
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『M-1グランプリ2025』決勝戦の模様は12月21日・18時30分より、敗者復活戦は15時より放送される。
また12月31日の大晦日には、2人の所属する「よしもと漫才劇場」(大阪市中央区、通称:マンゲキ)で5時間公演「大晦日大祭典2025~ダブルヒガシゲートからこんにちは!確かにお前の盆踊~りは、ヨヤクナッシングトゥーマッチ!大屋根ぇ~リングでワャクワャクカウントダウン!!~」を開催。詳細は同劇場の公式サイトにて。
(Lmaga.jp)
