映画「国宝」の李監督が来阪 吉村知事がラストシーンについて質問→まさかの返答「映像化できない」
大阪府&大阪市が中心となり大阪の文化芸術を世界に発信する『大阪国際文化芸術プロジェクト』。その一環として12月17日にトークセッションがおこなわれ、ゲストに映画『国宝』の李相日監督が登場。映画化に至るまでの経緯やラストシーンに込められた意味が明かされた。
■ 吉村知事の問いに李監督「それでいいんじゃないですか?」上映時間約3時間の大作ながら、6月6日に公開されると大きな反響を呼び、観客動員数1231万人、興行収入173.7億円という記録を打ち立てた映画『国宝』(原作:吉田修一)。
トークセッションには、同作を手がけた李相日監督、同作に出演し歌舞伎指導もおこなった中村鴈治郎、振付や所作指導を担当した中村壱太郎が登壇した。鴈治郎が李監督に「監督から吉田さんに映画化したいって言ったとき、吉田さんの反応ってどうだったんですか」と聞くと、「映画化したいって言った記憶があまりなくてですね…」と意外な回答。
以前から歌舞伎役者を扱った作品を撮りたいと決めていたという李監督。原作者の吉田が同作を執筆するため鴈治郎のもとで取材を始めた当時を振り返り、「僕は連載を読まずに、全部まとまってから読もうと思っていたんですけど。吉田さんから製本される前の状態で、ドンと送られてきまして。(吉田の)コメントは特にないんですけど、来たってことは、やるのかって」と映画化に至るまでの話を語った。
原作の小説は上下巻に分かれた一代記となるが、「すごいじゃないですか、ボリュームが。いろんな人たちの壮大な50年のストーリーがあって。これ、どうすんの…って」と当時の心境を振り返った李監督。鴈治郎も「監督から映画化したいって言われて、『2本ですか?』って聞いたら『1本にします』って言われて、こちらも『どうすんの?』って(笑)」と明かした。
またイベントの冒頭には、プロジェクトを主催する吉村洋文大阪府知事と横山英幸大阪市長も登場し、作品に関する質問をぶつける場面も。作中ラストを飾る主人公・喜久雄(吉沢亮)が舞台に立つシーンについて「最後のシーンって何を表現したかったのかなって。僕の解釈では、人間国宝に到達した人だけが見る景色なんかなと思ったんですけど…」と吉村知事が尋ねると、李監督は「それでいいんじゃないですか?」と回答。
そして「多分、彼が見た景色はもう映像化できないんですね。彼にしか見えてないんで。我々は、彼が何かを見ているだろう、ということだけは見せられる。そのための何か『入り口』を映像化したということなので、それでいいと思います」と解説した。
取材・文/つちだ四郎
(Lmaga.jp)
