小3息子に「そんな仕事、AI時代はなくなる」と言われ……46歳コールセンター勤務の母が愕然 「将来のために必要なスキルって何ですか?」【経済・金融キャスターが解説】
関西出身の経済・金融キャスターDJ Nobbyさんが、日常生活で知らないと損をするかも!?という、経済にまつわる疑問を解説。お金・経済には疎い編集Nの疑問をNobbyさんに教えてもらう連載2回目は、「AIに仕事を奪われないようにするためには?」です!
Lmaga.jp編集Nからの質問「AIに仕事を奪われるかも…大丈夫でしょうか」
先日、コールセンター勤務の友人が、「そんな仕事、AI時代はなくなる」と小3息子にまで言われて将来が心配になったという話を聞きました。「AI時代に必要とされるスキル」って、一体何でしょうか?
■ DJ Nobbyさん解説「仕事が少しずつAIに置き換わって…」
多くの仕事がAIに代替されるという話は、もはや現実味を帯びています。大手IT企業での人員削減は、コロナ禍で急増した人員の調整という側面もありますが、AIが人間の仕事を少しずつ置き換えている証拠でしょう。
「夏休みの読書感想文の宿題をAIで済ませた」というエピソードが出るほど、子どもの間でもAIの能力が認知されてきているため、子どもたちでさえも今後、AIが担っていく仕事が増えていくことを感じているようです。
日本でも深刻な人手不足が続くなか、プログラマーや事務作業など、一定の精度でこなせる仕事はAIが担い、企業はコストの削減につなげています。
これは、声の仕事も例外ではありません。渡された原稿をそのまま正確に読むだけの仕事であれば、最低限の需要を満たすという意味で「AIで充分」だと考える人が増えているという現状を、DJという仕事をしている私も肌で感じています。
■ AIに代替されない仕事の条件とは?!
株式会社 学研ホールディングス(東京・品川)のグループ会社、株式会社ベンド(東京・千代田)が、運営する「スキルアップ研究所」にて、2024年5月全国の20~50代の働いている社会人500人を対象にインターネット調査で、「AIの台頭による業務への影響調査」を行いました。
【AIが職場で活用されているのは約4割】
過半数には至っていないながらも、AIの導入は一定の割合では行われており、技術の浸透が進んでいると言える結果に。AIが職場で活用されていると答えた人は37.8%という結果に。
【AIにより業務効率化を実感した人が7割弱】
68.2%の人が「業務の効率化」を最も大きな効果として挙げており、AIの活用によりかなりの業務効率化が実現できていることがわかります。AIの活用により人による作業を実際に代替できたor見込みがあるかという質問には、8割以上の人が「代替できた、代替できそう」と感じているようです。
【コミュニケーションスキルや状況判断力は代替できない】
AIが人間の業務を実質的に代替できなかった最も多い理由として、「人間との対話や感情理解が重要な業務だから」という回答が多くあがりました。その他にも状況判断力、高度な知識の不足もAIが代替できない主な理由として挙げられています。今後必要になってくるスキルに対する質問については、約6割の人が「対人コミュニケーション」と回答。続いて「創造性」「問題解決能力」という結果になりました。
■ では、AIに置き換えられない仕事とは?!
それは、特定のスキルだけでなく、複数の能力を組み合わせた「総合力」が求められる仕事ではないでしょうか。
ナレーターの仕事を例に挙げると、原稿作成から録音、音響技術まで一貫して担当できる総合力が必要です。単純にナレーションが綺麗だというだけでは不十分で、相手のビジネスを理解し、顧客のニーズを的確に捉えて文字に落とし込み、最終的にサウンドチェックまでして納品できるような人材が求められます。
これらの能力を持ち合わせることで、「この案件は私に全て任せてください」と言える存在になれます。細分化されたタスクをこなすだけでは、AIに取って代わられてしまいます。
大切なのは、「この案件の責任者を任せたい」と言われるような、プロジェクト全体を管理する能力です。
これは、一般的な仕事でも同様です。「このエクセルのシートを埋めておいて」といった細分化されたタスクではなく、「この案件を全てお願いします。責任者として全体を管理してください」と言われる仕事こそが今後残る仕事なのです。
■ AI時代にこそ「コミュニケーション力」
もう一つ、AIには代替できない大きな要素があります。それが「コミュニケーション力」です。相手のニーズを汲み取りチームに伝え、タスクを分担しながら全体の方向性を整える。これらの過程はすべて、コミュニケーションによって支えられています。
AIは確かに便利で、下書きや初稿など、クオリティをそこまで求めない作業は得意です。しかし最終的に「何をゴールとするか」「どう見せれば効果的か」を判断するのは人間の役割です。
つまりAIを使いこなしつつ、人間にしかできない意思決定と調整を担う人こそが生き残ります。
■ 責任を託される人の条件
どうすれば責任を託される立場に立てるのでしょうか? 答えは「経験と土地勘がある人かどうか」です。現場を知り、積み上げた経験を持つ人は、判断力や提案の説得力が違います。
たとえばラジオの仕事を依頼された時に「できます。これまでの実績を応用すれば、スポンサーに喜ばれる番組に仕上げられます」と自信を持って答えられる人には、次のチャンスも舞い込みます。一方で「ちょっと分かりません」と答えてしまえば、再び声がかかることはありません。
自分ができる理由と、やるべき理由を明確に述べられるかどうか。これまでの実績を言葉にできない人、自信がなさそうに見える人は、いつまでも責任を託される立場にはなれません。
■ AIが得意なのは、分解されたタスクや単純作業
一方で、人間に求められるのは「総合力」と「コミュニケーション力」を駆使し、プロジェクト全体を見渡して責任を担うこと。そしてその根底には、経験と土地勘から生まれる自信と説得力があります。
AI時代を生き抜くカギは、単なる作業力ではなく「信頼を集める力」。積み上げた知識と実績をもとに価値を提供できる人こそ、「任せたい」と選ばれる存在になれるのです。
AIが進化する今だからこそ、人間にしかできない力を磨くことが、これからのキャリアを築く最大の武器になるといえるでしょう。
【DJ Nobby】
Voicyでフォロワー10万人を超える経済・金融キャスター。関西学院大学経済学部卒業後、シティバンクで海外為替ディーラーとして勤務後、東京金融取引所に転職、その後、プルデンシャル生命、メットライフ生命にてコンプライアンス部門マネージャーなどを歴任、2021年に独立。金融マンとして働く傍ら、ラジオパーソナリティとして活動。高校生のときに兵庫・西宮の「さくらFM」でDJデビューしてから、2025年でラジオパーソナリティ歴28年。ラジオ関西では経済系エンターテイメント番組『絶対わかる経済ニュース 知らんけど』(月~木曜・6時30~7時)を担当。
(Lmaga.jp)
