Aマッソ、自分よがりの笑いからの脱却「10年かかった」

『THE W』でのプロジェクションマッピングを使ったネタなど、いつも実験的な漫才やコントを披露しているAマッソ。テレビ東京と所属事務所のワタナベエンターテインメントによるライブ『滑稽』が東京、大阪で開催される。今回も、独自の世界観を持つ番組を次々手がけるテレビ東京の大森時生を演出家に迎えており、一筋縄ではいかないものができあがることは必至。そんな同ライブについて、加納、村上に話を訊いた。

■ 「お笑いライブらしく終わるかどうかは分かりませんけど」(加納)──『滑稽』の演出をつとめる大森時生さんは、おふたりがMCをつとめた『Aマッソのがんばれ奥様ッソ!』(BSテレ東・2021年)ほか、『島崎和歌子の悩みにカンパイ』(テレビ東京・2022年)、『テレビ放送開始69年 このテープもってないですか?』(BSテレ東・2022年)など、問題作を連発している方ですね。

加納「『奥様ッソ』は現場でVTRを観ながらいろいろと驚きがありました。番組としてすごくおもしろかったので、一緒になにかを作りたいとずっと思っていて。そこで今回、お声がけさせていただきました」

村上「スタジオで映像を観ていても『いやいや、普通に怖いんやけど』って。考察とかする余裕もなくて、スタジオにもいろいろ仕掛けがあったことは後から気づいて。『気持ち悪っ!』となりました(笑)。多分、まだ気づいていないけど、あのときいろいろやられていたことってあるんちゃうかな。めっちゃ気持ち悪いわ」

──今回のライブもそういう不気味さがありそうですよね。

加納「どうなんでしょうね。まあ、お笑いライブですから。ネタを見てもらえたらって感じで」

──加納さんの「まあ、お笑いライブですから」という言葉自体、いろいろフリになっている気がします(笑)。

加納「このインタビュー、難しいな! あまり隠すと『すごいものがあるんちゃうか』と思われそうやし。いや、お笑いライブはお笑いライブですよ。でも最終的にお笑いライブらしく終わるかどうかは分かりませんけど。あと『滑稽』というテーマは、いろいろなところに関わってきそう。笑うということをテーマにしたお笑い・・・その先のことは言えないです」

村上「うちが現時点で聞いている話は、『東京と大阪でやる』『お笑いライブをやる』ということだけやで」

加納「村上はいつもそうやね、そこまでしか知らないです。私も実はまだ、全部じゃない。だけど制作チームに名だたる人たちが携わってくださっているので、ハンパなものは作れないなという。単独ライブは自分たちが中心にやっているけど、今回はテレ東さんとなのでちょっと違う感じです」

■ 「欲を言えばもうちょっと稼ぎたい」(村上)──Aマッソはこういう大きな規模のライブを年に何度かやりますよね。雑誌のインタビューでは「年に何度かやった方が、1回の公演にかかる期待値が下がるから」とおっしゃっていましたが。でもそれってかなりハードスケジュールになりますよね。

加納「自分たちで勝手にハードルを上げてしまっているところがあるので、『どうにかして下がらへんかな』と思って、何度かやるようにしています。たとえば単独ライブって毎年通っているお客さんは『こういうことやろうな』というのが分かってくるし、芸人側もそうなってしまう。そうじゃなくて『なにするんやろう』というのを、いつもやっていくのがうちらのライブ。新しいものをいつも目指して作ると、観る側もやっぱり期待値は毎回上がっていきますから。そこはもうちょっと下げていきたいというか」

村上「まあ、うちはハイパープレイヤーとして言われたことをやるだけやし、楽して稼ぐんが最高。でも今は、楽ができているのはちょっとだけって感じ。それでも加納は『村上は、打ち合わせとか出んでいい』って言ってくれてるから、まあ楽ですね」

加納「あと、吉本さんに比べたらうちらってライブは全然やっていないと思うんです。吉本さんは芸人の数が多いし、専用の劇場がたくさんあって毎日公演をおこなっている。ネタを叩いていって良いものを作り上げることができる。それと同じスタイルでやろうとしても勝てないから。だったら自分たちの強みでもある、映像を使ったことだったり、企画をどんどん打っていったりとか、そういうワクワク感を強みとしてやっていかないといけないなって」

──それでも年に数回、新しいものを舞台におろしていくのは大変な作業だと思います。忙しいとどうしても、これまでと似たフォーマットだったり、置きにいく内容になるものですし。

加納「40歳くらいになったらそうなるんちゃうかな。さすがにそこまでいくと、現在のペースでやり続けるのは体力的にしんどくなるはず。それに、自分がいつまでネタを書けるか分からないから。だったらとにかく今やっておこうって。焦りみたいなものなんです。かといって村上にはまったく比重が掛かっていないのが、うちらの不思議なところなんですけど」

村上「ホンマに全部やってくれるもんね。取材では『村上さんは自分でなにかをやろうとは思わないんですか?』という質問をコスられまくるんですけど、そういうのは全然ないんです。わりと満足している。欲を言えばもうちょっと稼ぎたい」

■ 「世の中に出ないと分からないことってたくさんある」(加納)──そういうふうに斬新なことに挑戦し続けるという姿勢を「トガった芸風」と表現する人も、多くいましたよね。YouTube『Aマッソ公式チャンネル』の2022年3月8日配信回では、平成ノブシコブシの吉村崇さんを講師に迎えて「尖り」について語ってらっしゃいましたが。

加納「この2、3年は全然言われなくなりました。やっぱりテレビ出演の影響が強いと思います。劇場を中心に活動していたときは自分よがりに生きていけるところもあるから、うちらもそういうスタイルを意識していたのかもしれません。劇場って自分たちが作ったものを自由に出せるから、その点で一方通行になりやすい。つまり、社会性がなくてもある程度はやっていけるんです。だけどテレビって自分たちが作るものではなく、いろんな方に望まれることをちゃんとやっていかなきゃ仕事にならない。自分らでも『全然違うやん』と気づくものがありました」

──なるほど。

加納「うちらはテレビにも出たかったから、現状について『自分たちのスタイルを捻じ曲げて今がある』とは思わない。『ほんまはこういうことがやりたいのに、こうなってしまっている』みたいな精神的反発はないですね。かといって劇場に対しても飽きがないから、かなり良いバランスでやりたいことがやれている気がします」

村上「前は『トガってる』とか言われてたけど、うちは『全然そんなことないやん』とずっと感じてたし。テレビ、劇場、YouTube、どれを観てもうちらの「人(にん)」(※註1)が出てるはずなので」※註1:芸人が持つキャラクター性、個性、人柄のこと

加納「まあ、うちらはもともとそういうやり方しかできなかったというのもあるけどね。だからテレビに出るのに10年かかったんかも。あと、世の中に出ないと分からないことってたくさんある。たとえば劇場でやっているときはカリスマ的な人気のボケだったとしても、テレビではアホみたいなツッコミに回って、それでハネる場合がありますし」

──確かにそうですよね。

加納「大事なのは、そういうことを精神的にダルいと考えないこと。キャラ変もどんどんしたらいいし、そういうチューニングをもっと恥ずかしがらずにやるべきですよね。あとは、そこで起こるミスに対してもっと寛容になっていけばなって」

──たとえば今回の『滑稽』がこれからのおふたりになにか影響を与える可能性はありますか。

加納「もちろんあるはず。なんなら、笑いについて考え直すきっかけになるかもと思っているので。お客さんはなにも知らない状態で観てもらえると、より楽しめるんじゃないかな」

村上「うちから言えるのはひとつだけですね。『楽しみにしていてくださーい、うちも楽しみでーす!』です」

Aマッソライブ『滑稽』の大阪公演は、3月13日・14日に「松下IMPホール」(大阪市中央区)にて上演。チケットは6000円で、現在発売中。

取材・文/田辺ユウキ 写真/Ryo Tateoka

(Lmaga.jp)

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