注目女優・木竜麻生、共演者した藤原季節に気づかされた言葉「もう思い上がりも甚だしい、と」

2018年に初主演作となった瀬々敬久監督作『菊とギロチン』で300人のなかから主演に選ばれ、同年公開の『鈴木家の嘘』でもヒロインを演じて、その年の新人賞を総なめにした女優・木竜麻生だ。

そんな彼女の最新作は、20代の恋愛にありがちな歯がゆさやすれ違いを赤裸々に描写した、6月10日公開の映画『わたし達はおとな』(加藤拓也監督)。恋人にも友人にも言いたいことを飲み込んでしまう主人公・優実を演じた木竜に話を訊いた。

取材・文/華崎陽子 写真/本郷淳三

「どれだけ感情を隠すか、がテーマ」(木竜)

──本作は、今までの恋愛映画では描かれなかった、まるでどこかのカップルの生態を覗き見しているような、現実世界と地続きのようなリアリティがある作品でした。まず、木竜さんは脚本を読んでどのように感じられましたか?

純粋に面白いと思いましたし、話し言葉がそのままセリフになっている映画はあまりないので、新しいなと感じました。読んですぐにマネージャーさんに「この脚本面白いです。やってみたいです」と言いました。

──確かに、体調の悪い優実(木竜)が恋人・直哉(藤原季節)のために朝食を作っているオープニングや、妊娠を告げる際の「すぐに怒るから、怒らないで聞いてほしい」というフレーズで、映画が始まってすぐに2人の関係性を理解させる脚本はすごいと思いました。

それはすごくうれしいです。私も脚本を読んで、わずか1~2場面で2人の関係性や空気感を感じました。最初は軽い興味で覗いていたのに、後半は覗いていいのか? という気持ちになってくるような感覚があると思います。

──恋愛映画では珍しく、食事の用意や洗濯物を片付けなど、やたら生活感を感じさせる部分が多かったですね。

加藤監督から「今回は、暮らしや生活の映画を撮りたいと思っている」と言われていたので、1人の女の子の数カ月間に起こった日常というのを最後まで意識していました。

通常の作品ではお客さんの目線が散ってしまうからやらないでと言われることの方が多いのですが、食事を作るとか洗濯物を取り込むなど、加藤監督から動きを増やしてほしいと言われていました。でも、仕草をやろうとは思わないでくれと。

──また難しいリクエストですね。

難しかったです。でも、初号試写でこの映画を観たときに、自分が知らない顔をして、自分の知らない声を出していたことに驚きました。特に後半の藤原さんとの2人のシーンは、私はこんな声で話していたのか!? と。

出演作を観て、そういう感覚になったのは初めてで、自分にとってすごく大きな体験になりました。今後は、これをどうにか逃さずに自分のなかに留めておきたいと思っています。

──それ以外に加藤監督から言われたことはありましたか?

加藤監督からは、現場で言われたわけではなく、後からインタビューで話されていて印象に残っているのは「木竜さんと僕のリアリティの認識が違うと思うから、そこを合わせる必要がある」と。私は今までセリフとして言葉や会話を話していて、感情も「こう思っているからこうなる」というように真っすぐに捉えていたのですが、加藤監督の演出はまったく違っていました。

──具体的にはどう違ったのでしょうか?

今回は、思っていることと言いたいこと、実際に言ったことと伝えたかったこと、全部が違っていました。でも、それって当たり前ですよね。人はひとつの面で表せるものではなく、もちろん表と裏でもなく、もっとたくさんの面を持っている。その多面性をきちんと作りながら表現することが必要でした。いわば「どれだけ感情を隠すか」がテーマでした。

──優実が思っていることを素直に伝えられない性格であると同時に、それは誰しもが持ち得るものだ、と。

直哉を好きなのも何かを言いたい気持ちも、腹が立ったのも悲しいのも、何とも言えない気持ちもとにかく全部隠す。演出でも、「ちょっと(感情が)出すぎ」とか「もうちょっと(感情を)出して」という細かな調整がシーンごとにありました。

「噛みつきたいぞと思った言葉は・・・」(木竜)

──そのように感情を隠して僅かな部分を出すのは相当難しいと思うのですが、すぐにできるようになりましたか?

最初は全然できていなかったと思います。優実のように相手の表情を伺うような女性を演じると、相手の一挙手一投足に敏感に反応したうえで隠しているのに「出すぎ」と言われることの方が多かったです。でも、後半になると加藤監督から、「もうちょっと正面切って言い返していい」と言われても、言えなくなっていて。ずっと直哉の様子を伺っていたので、それが身体に馴染んでしまって(苦笑)。

でも、後半になると加藤監督から、「もうちょっと正面切って言い返していい」と言われても、言えなくなっていて。ずっと直哉の様子を伺っていたので、それが身体に馴染んでしまって(苦笑)。

──そのことは、次の出演作でも考えるようになりましたか?

そうですね。今は、思った気持ちをそのままセリフに乗せるのではない表現を探すようになっているかもしれません。セリフと気持ちが直結するのではなく、もっと内面にあることを意識するようになりました。今までよりも気持ちを抑えたり気持ちを隠したりするようになっているかもしれません。

──木竜さんの初主演作で、大正時代の女性力士を演じた『菊とギロチン』(2018年・瀬々敬久監督)とは真逆のような感じですね。

あのときは私が感情を解放できていなかったので、瀬々監督さんには「なにを思っているのかわからない」「芝居が一辺倒だ」とずっと言われていました。言われていることは理解できるけど、どうしていいかわからないので、現場ではとにかく「はい!」と答えてました(苦笑)。

でも、瀬々監督にそのことを教わらなければ、その後の作品で感情を解放することはできなかったと思います。感情を出さないお芝居はすごく難しいですが、それは内側に感情を抱えているからできるお芝居なのだと気づきました。

──ここまで全編通して恋愛を描いた映画への出演は初めてでしたが、いかがでしたか?

今まで恋愛の要素がある場面はやったことがありましたが、こういう日常のなかで恋愛を大きく扱った作品は初めてだったので、すごく苦しかったですが、終わってみれば楽しかったです。それは普段の恋愛と同じだなと思いました。

──恋愛と同じというのは?

恋愛には苦しいことや悲しいこともあるけど、 楽しいこともありますよね。映画を作っているときも、あくまでも役の上でのことですが、映画には真実みたいなものがあって欲しいし、あると信じているので。

事実とは違いますが、その登場人物たちが織りなす真実が映っていて欲しいと思っています。この映画を携われてすごく良かったですし、恋愛映画にもまた挑戦したいと思うようになりました。

──恋愛中の男女の違いあるあるだと思いますが、理詰めタイプの直哉と感情型の優実の会話は、観る人にさまざまなことを考えさせます。あくまでもセリフですが、さすがにそれはないんじゃないかと感じた言葉はありましたか?

笑い話で終わらせようとする優実の気持ちもわかりますが、私が噛みつきたいぞと思った直哉の言葉は「それ、俺が頼んだことあったっけ?」ですね(笑)。

確かに、優実もよくないところはあるんですけど、直哉が帰ってくる時間に合わせてご飯を作ること、してあげることを楽しんでいたのに。あれを言われると「言われてないけど(怒)」ってなっちゃうだろうな。

──直哉のセリフには、女性としてはちょいちょい引っかかるところがありますよね(笑)。

直哉は「ありがたいと思ってるよ」と何回も言うけど、優実の言うことを肯定しない。優実の意見は「仮にそうだったとしよう」という風にしか捉えてもらえないから、それはすごく引っ掛かるなと思いました。あと、壁をドンッと叩くとか大きい音を鳴らすのは駄目ですね(笑)。

「あのシーンはきっとずっと忘れない」(木竜)

──その直哉を演じた藤原季節さんとのシーンが本作の中心でしたが、藤原さんとは初共演ですよね?

藤原さんとは今まで共演したことはありませんが、以前から尊敬する友人のひとりでした。だから、今回の共演はすごくうれしかったし、こんなに早く共演できるとは思っていませんでした。撮影が始まって私が緊張していたときに、ポンと肩を叩いて「一緒に頑張ろうね」と言ってくれて。

──それは心に刺さりますね。

たぶん、本人は何気なく言ったんだと思いますが、私は、その言葉でハッと気づかされたことがあって。そもそもみんなでひとつの映画を作ろうとしているのに、なにを1人で気負っているんだ、と。

もう思い上がりも甚だしいと思って。今からこんな状態だったらみんなでいいものが作れるわけがないと気づいて、藤原さんにお礼を言ったら「なにが?」と言われましたが、「改めてよろしくお願いします」と伝えました(笑)。

──そこからさらに関係性が深まったんですね。

その日から藤原さんには不安なことや思ったことを全部伝えて、撮影中もこの人は全部受け止めてくれると安心していました。うまくいかないときも休憩中に吐き出すことができましたし、改めて尊敬できる俳優さんだと思いました。

私は彼のことを戦友のように思っていますし、どこかでこの人には敵わないと思いながら、また共演したいから頑張るぞと奮い立たせてくれる俳優さんです。

──ラストに待ち受ける長回しでの藤原さんとの2人芝居は、その関係性があったからこそできた濃密なシーンでしたね。

あのシーンは、いろんなものを飛び越えて今まで経験したこともないような気持ちになりました。完成した作品を観て、私はポンポン会話をしていた感覚だったのに沈黙が長くて驚きました。

藤原さんは泣くつもりがなかったところで涙がこぼれてしまったらしく、私は私で泣いている藤原さんを見て、言葉ではいい表しづらい感情が生まれていたと思います。あのシーンはきっとずっと忘れないと思います。

──本作は観終わった後、いろんな考察をするのも面白い映画ですよね。例えば、優実が女友だちと一緒に行ったホテルの、しかも同じ部屋に直哉が優実を連れてきた理由とか。ネットで検索したのかな?と想像していました。

私は、直哉が以前女の子を連れてきたとき喜んだから、このホテルは間違いないと思ったんじゃないかと想像しました。この脚本を考えた加藤監督はスゴいですよね。しかも同じ部屋って(笑)。

ネットで検索して、女の子に人気のホテルだったから・・・だといいんですけどね。仮に元カノと来たことがあってリピートだったら・・・(笑)。そういうことを想像したり、考察しながら観て欲しいです。

(Lmaga.jp)

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