コメディで小粋なセンスを発揮、宙組・芹香斗亜の主演作が開幕

「もう迷いはしない!」と高らかに歌い上げる姿がまぶしい。宝塚歌劇団宙組男役スター・芹香斗亜(せりか とあ)が主演する『プロミセス、プロミセス』が、11月13日に「梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ」(大阪市北区)で開幕した。

名作映画「アパートの鍵貸します」をニール・サイモンが脚色、バート・バカラック(作曲)&ハル・デヴィッド(作詞)の名コンビが音楽を手掛けたブロードウェイ・ミュージカルを、原田 諒が翻訳・演出。高さのあるセットを回転させながら、1960年代の大都会に住む大人たちの恋物語を華やかに描き出した。

冒頭から弾むような音楽に乗せて、ニューヨーカーの朝の日常が繰り広げられる。芹香が演じる保険会社の経理担当・チャックは、真面目でお人好し。上司たちの逢引きのために自らの部屋の鍵を貸すことで、出世への道が見えてくるが、なかなかうまくはいかない。

自己評価の低いチャックだが、実はしっかりと夢を持ち、社員食堂に勤めるフラン(天彩峰里(あまいろ みねり))に一途な想いを寄せている。芹香は伸びやかなロングトーンも披露しながら数々のナンバーを歌い、人間的に懐の深いチャックの魅力を、軽やかな芝居で存分に引き出した。

道ならぬ恋に悩みながら自分の生き方を見つけていくヒロインのフランを好演した天彩は、美しい歌声でも魅せた。フランと付き合っている人事部長のシェルドレイク役は、この公演後、雪組に組替えとなる男役スターの和希(かずき)そら。チャックと「男同士の約束 裏切りはなしだ」と粋に歌う場面もあれば、愛の言葉を次々と投げかけるシーンもあり新境地を開いた。

専科の輝月(きづき)ゆうまは、チャックのアパートの隣に住む医者のドレファス役で、特に後半、芹香と絶妙な掛け合いを見せる。また、休演の愛海(まなみ)ひかるの代役を担った留依蒔世(るい まきせ)は、女性のマージ役で色気と強さを発揮、その後フランの兄としても登場し、男気あふれる芝居で観客を沸かせる。

それぞれの価値観で人生を謳歌し、たくましく生きる人々。ハッピーなクリスマス色にも彩られた物語は、いまの時期にぴったりだ。カーテンコールの陽気な歌にまで宙組のコーラスパワーが反映され、クラップ&ステップに心浮き立つ。大阪公演は18日まで。その後、11月30日~12月7日まで「東京建物 Brillia HALL」(東京都豊島区)で上演される。

取材・文/小野寺亜紀

(Lmaga.jp)

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