「横尾忠則の緊急事態宣言」、新型コロナで創作活動も一変した美術家の提案とは?
新型コロナは我々の生活を一変させたが、芸術家の創作活動にも大きな影響を与えている。美術家の横尾忠則もそのひとりだ。「横尾忠則現代美術館」(神戸市灘区)で開催中の展覧会『横尾忠則の緊急事態宣言』では、その様子が興味深く表現されている。
本展では、危機的状況を描いた横尾作品が紹介される。たとえば《ライオンと緑の月》(1996年)という作品。ルソーの名作《眠りジプシー女》を下敷きにしたものだ。原作では眠るジプシー女の傍らにライオンが寄り添っているが、横尾はライオンがジプシー女を襲う様子を別のアングルから描いた。
また《Devil Man》(1996年)は永井豪の名作漫画「デビルマン」を引用している。新型コロナで人々の心が疑心暗鬼になった状況を「まるでデビルマンの世界」と言ったユーチューバーがいたが、今の時期に同作を見るのはきわめてタイムリーだ。
ほかには、湾岸戦争を扱った《時代の肖像》(1991年)、スーツ姿の3人の男性が危機的状況に巻き込まれる様子を描いた「凶事シリーズ」などの作品が出展。また現在、ウェブ上で発表されている作品《With Corona》を展示各所に散りばめるようなインスタレーションも展開される。これはさまざまなビジュアルにマスクや口腔のイメージをコラージュした作品だ。
横尾忠則が危機的状況をどのように捉え、表現したのかを新旧作品で読み解く興味深い企画だ。期間は12月20日まで、料金は一般700円。
文/小吹隆文(美術ライター)
(Lmaga.jp)