「葬式の名人」キャスト5人、ロケ地での同窓会で語ったこととは?

卒業から10年たったある日。母校・茨木高校を突然訪れ、突然逝ってしまったクラスメイト。かつての親友を失って、やりきれない悲しみで集まった同級生たちは、ひょんなことから母校の教室でお通夜をすることにする。そんな映画『葬式の名人』に出演する尾上寛之、中西美帆、奥野瑛太、佐藤都輝子、樋井明日香の5人が、ロケ地となった大阪・茨木高校に再び集合。同窓会さながら、思い出話に花を咲かせた。

取材・文/田辺ユウキ 写真/木村正史

「お前なんかがイバ高に行けるわけないやん、と」(尾上寛之)

──本作の『葬式の名人』は、大阪府茨木市でオールロケがおこなわれましたが、尾上さんはまさに茨木出身なんですよね。

尾上「そうなんです、映画に登場する場所のあたりで過ごしました。18歳まで茨木にいたので、学生時代に通っていた道もそうだし、あと、死んだ旧友を棺桶にいれて練り歩くシーンに出てくる商店街もほぼ毎日行っていました。だけど、撮影しているときは照れ臭さがありました。なんせ、茨木高校の卒業生という設定だったので」

奥野「あ、茨木高校って有数の進学校なんだよね。川端康成の母校としても有名ですし」

尾上「そうそう。だから、もし友だちがこの映画を観たら、『お前なんかがイバ高(茨木高校の通称)に行けるわけないやん』と笑われそうなんだよね」

樋井「でも、茨木は本当に楽しい街だなって思いました。クランクイン前からいろんな場所へ行きましたが、どこも楽しめました。私は南大阪(河内長野市)出身なので、あまり来ることがなかったから、すごく新鮮でした」

中西「私は神戸出身なので、大阪にも馴染みがあるのですが、茨木はとてものどかで、いい意味で大阪らしくない印象を受けました」

佐藤「私は京都市出身で、茨木は近い距離にはあったけど、なかなか来たことがありませんでした。すごくあたたかい街だなって。みなさんが映画を応援してくれている感じがしました。撮影をしていることもちゃんと知っていて、さまざまなご協力をいただけました」

奥野「ちょっと待ってください。今、全員が関西出身と聞いてショックを受けています。僕だけ、北海道出身・・・。だから疎外感があったのか(笑)」

佐藤「そんなことないでしょ!」

──みなさん今作では、高校時代の同級生の死をきっかけに集まる、かつての仲間たちの役。でもあの微妙な関係性って、すごく分かります。久しぶりに顔を合わせると、懐かしさにうれしい反面、なにをしゃべったらいいかという気まずさもありますよね。

樋井「そう。昔の友だちって、今会っても何を話して良いか分からないですよね。小学生のときの友だちとか、まったく会わなくなってしまった。結婚をしてお子さんもいて、というのは知っていても、いざ会ったら話すことがないかも。それこそ映画のなかの同級生たちのような雰囲気になりそう」

「みんなで酒を飲むシーン、なんだか羨ましかった」(奥野瑛太)

──この映画は、そのたどたどしさもある意味では、観るべき点かなと思います。

樋井「地元の同級生とは、ほとんど接点がなくなりますよね。もし会ったとしても、たとえば2人きりになってしまったら、絶対にこっ恥ずかしくなる。だから、大人数で会いたい」

尾上「同窓会とかないの?」

樋井「ない、というか呼ばれていないだけかも(笑)」

尾上「地元から離れるとそうなるよね」

中西「私は小さい頃、転勤が多くて小学校も3回ほど変わったので、幼馴染がいないんです。映画のなかでは、同級生が久しぶりに集まり、大人になったからこそ分かる思い出や感情が明らかになっていきますが、『私にも幼馴染とかいたら、こんな風になっていたのかな』と想像しながら、演じていました」

佐藤「私も、保育所のときの友だちと長く付き合いがあったのですが、それでも突然会わなくなり、それっきりになっています。このところずっと会っていません。会いたいと感じていても、わざわざ連絡をすることもないじゃないですか。なにかきっかけがないと無理ですよね。この映画のように共通の友人の訃報があれば集まるだろうけど、できればそういう出来事には出合いたくないし」

奥野「僕にはずっと、『いつかまた会いたいな』と思っている仲間がいるんです。小学生のときから10年間くらいは、何人かでよく集まっていて、進学しても遊んでいて、全員の居所がちゃんと分かっていた。でもハタチをこえたあたりから、1人だけどこに行ったか分からなくなってしまって。せっかくみんなでお酒が飲めるようになったのに。そいつのことは、ずっと気になっています。劇中の野球部の部室の場面で、みんなで酒を飲むシーンがあるけど、あれはなんだか羨ましかったですね」

尾上「みんな、それぞれに立場が生まれてくる。大人になって、久しぶりに元同級生とお酒を飲みに行きたくても、各自仕事や家庭があって、そのことをまず考えてしまう。『なんか、誘うのは悪いな』って。昔みたいに簡単に『遊ぼー』って言えない。相手に踏み込めなくなった。僕も、せっかくの地元での撮影だったから『会おう』という話になったけど、結局は実現できなかったし。時間の経過はある意味、残酷なものなのかもしれません」

──確かに『葬式の名人』には、時間が過ぎゆくことへの残酷さがありますよね。

尾上「それぞれに対して、溝があるわけでもない。それでも微妙な関係性になっていく。映画のなかのみんなだって、会おうと思ったらできたわけだけどそうしなくなった。誰にでも当てはまる物語ですよね」

中西「でもそれが、自立なのかもしれませんね。社会人としてみんな、それぞれの世界に入ってそこで頑張るようになる。これは樋口監督が仰っていたことですが、そのなかで勝ち組、負け組も生まれてしまいます。時間が過ぎていくことによって、かつて仲間だった人たちの関係が微妙に変わってしまうことなども、映画には描かれています。このノスタルジックな物語は、きっとどなたにも共感いただけると思います。ぜひ楽しんでいただけたらうれしいです」

(Lmaga.jp)

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