まんぷくヒロインの安藤サクラ「撮影の時間が愛おしすぎる」

NHK連続テレビ小説の2018年後期作品『まんぷく』が10月1日よりスタート。大阪を舞台に「インスタントラーメン」を生み出した夫婦の知られざる物語を描いた本作で、ヒロインの今井福子を演じるのが、女優の安藤サクラ。映画『万引き家族』で海外でも高い評価を得た安藤が連続テレビ小説に寄せる思いとは? プライベートでは昨年6月に女の子を出産し、「連続テレビ小説史上初の子育て中のヒロイン」としても注目を集める彼女に話を聞いた。

取材・文/井口啓子 写真/一井りょう スタイリング/椎名直子(Tiber Garden)ヘアメイク/星野加奈子

スカート/ビューティフルピープル(ビューティフルピープル 三越銀座)

「義母の言葉に強く背中を押されました」(安藤サクラ)

──安藤さんは「映画の人」という印象もありますが、連続テレビ小説はこれまで何度もオーディションを受けるなど、憧れの存在だったそうですね。

やっぱりNHK連続テレビ小説って、本当に日本のすみずみまで届けられている作品なので、テレビドラマとか映画とか舞台とかいろんなジャンルのお芝居があるなかでもひとつのジャンルになっているぐらい、特別なものだと私は思っていて。これまでも映画の撮影で山奥に行って地元の方にお世話になる機会が多かったんですが、その映画がなかなかそこには届かないことも少なくなくて。いつか朝ドラに出たら恩返しができるかな・・・と思っていたので、夢が叶ってうれしいですね。

──今回オファーが来て出演を決められるまでには、出産直後ということもあって、かなり迷われたとうかがいましたが。

私は子どもを産んだら子育てに専念しなきゃいけないと思ってたんです。なので、お話をいただいたときも、このタイミングでできるわけがないって、すごく悔しかったんですね。自分のなかでやるという可能性はゼロだったんですけど、子どもを育てるなかでそれをネガティブな出来事にはしたくなくて。「この子がいなかったらやってた」とか考えるのは絶対嫌だし、でもやっぱり悔しくて、すごく悩みましたね。あ、しゃべってたら泣いちゃいそう(笑)。

でも、そんな私に対して夫(俳優の柄本佑)も義父(俳優の柄本明)もうちの父(俳優の奥田瑛二)も、なんでそんな一大事みたいな顔してんの? ?やればいいじゃん?って感じで、その軽さに逆に背中を押された。なかでも義母(女優の角替和枝)は、実際に自分も子どもを産んで、なおかつ女優をずっと続けてきた女性なので、義母の「これやらないんだったら事務所も仕事もやめちゃいな」という言葉には、強く背中を押されましたね。

だから家族には本当に感謝しかないし、あとはもちろん、NHKのなんでも笑顔で受け止めてくださる素敵なおじさま方(制作陣)がいたからこそ、心を決めることができました。

──安藤さんの出演にあたって、NHKでは働き方改革の一貫として大阪放送局内にキッズスペースが開設されるなどのサポートが生まれたそうですね。

本当にスタッフや役者さん、受付のお姉さんから掃除のおばちゃんまで、みんなが思いやりをもって接してくださっているので、「ママさん女優使ったから、NHKもちょっと子どもサポートしなきゃいけねえな」みたいなことではなく(笑)、家族のようにみんなで育ててくださってる気がしています。私も娘も人生のなかで本当に特別な時間をいただいていて、もちろん大変な時間もあるけど、みんなで手を繋いで冒険している感じで、その時間が愛おしすぎて、一分一秒でもこの時間を体中で味わわなきゃと思いながら撮影してます。

「私自身、人としていい生き物に生まれ変われるのでは」(安藤サクラ)

──いろんな意味でワクワクせずにいられません! 今回演じられる「福ちゃん」こと今井福子は、生来の楽天家で、後にインスタントラーメンを発明する夫に振り回されながらも、やがて夫を引っ張ってゆく強い女性へと成長していきます。ご自身と「福ちゃん」の共通点はありますか?

福ちゃんはとにかく前向きで貧乏とか本来マイナスなこともハッピーなものに変換してゆく力のある女性。私もできているかどうかはわかりませんが、常に同じ時間を過ごすならよりよい時間にしたいと思って生きているので、福ちゃんを演じることでそういう力を共有できたらいいなと思ってます。

──安藤さんはこれまでシリアスな役が多い印象もあったので、天真爛漫な福ちゃんをどのように演じられるのか楽しみです。

確かに、どちらかというと曲がった、まっすぐ立ってない、まっすぐものが見られない女性の役が多くて。福ちゃんほど人間としてまっすぐ立ってる人は演じたことがないので、そういう女性を時間をかけて演じることで、私自身、人としていい生き物に生まれ変われるのではないかと思ってます。

──共演者の方とはどのように過ごされていますか?

撮影の初日は今井家のシーンから始まったんですが、お母さん役の松坂慶子さんもお姉ちゃん役の内田有紀さんも松下奈緒さんも、みなさん両手を広げてくださってたような印象で、もちろん緊張感はあったんですが、変なものを背負わずに現場に入れました。今井家の女4人のバランスがとっても私は好きで、本当に居心地がいいですね。あと福子の勤務先の先輩役である橋本マナミさんがとっても素敵で大好きです。

──萬平さん役の長谷川博己さんはいかがですか?

長谷川さんとは初めて共演させていただいたんですが、毎回想像とはまったく違うようなお芝居が返ってくるので本当におもしろくて。たまたまスタジオの外で素の長谷川さんを見かけたら、こんなに色っぽいイケメンなんだ!って、そのギャップにいつもびっくりします(笑)。萬平さんはまっすぐでお茶目で、長谷川さんでないと成立しない、見ているだけでニコニコしちゃうような可愛らしい男性ですね。

──『まんぷく』はヒロインの成長物語であり夫婦愛の物語でもあります。萬平さんは旦那さんに重なる部分がありますか?

2人とも不器用でトンチンカンなところがあるんですが、そんな2人の恋心がうまい具合にくっついて、結婚してからも凸凹しながらもうまく寄り添って、2人で前に進んでいってる感じが微笑ましくって素敵だなと思いますね。うちの夫もこだわりが強くて、なにか自分の好きなことに没頭するタイプなので、そういう部分は似ているかもしれません。萬平さんのがむしゃらさのなかにある不器用さとやさしさみたいなのもわかるし、2人が初めてケンカするシーンは台本を読んでおもわず共感しちゃいました(笑)。

──福田靖さんの脚本はいかがですか?

すごくおもしろいです。登場人物がみんな愛おしいし、なんてことのない会話のなかにも味わいがあって、本当にマンガでもこんなに楽しみに新刊を待ったことがない!というぐらい毎回台本が届くのが楽しみで。先日リハーサルのとき萬平さんが腹を抱えて大笑いしていたので何?と思ったら、台本読みながら爆笑してました。私も毎回笑ったり泣いたりして、自分自身これ以上に演じられるかなとプレッシャーを感じながらも、なんて幸せな作品なんだろうって思ってます。

──『まんぷく』は大阪が舞台の物語で、大阪放送局の制作なので、撮影で大阪に長期滞在されています。大阪の印象を教えていただけますか。

私にとっては、すごく住み心地がいいですね。みんな壁がないし、すぐ手を差し伸べてくださるんですね。先日も子どもを抱っこしてたら雨が降ってきて、傘がなかったので屋根のあるとこまで走ってたら、知らない方が「これ使いな!」って傘を差し出してくださって。スーパーとかお店でもみなさんあたたかく接してくださって、いいなあって。やっぱり東京とはエネルギーとか人との距離感が違うし、福ちゃんという大阪の女の子を演じるうえでもありがたい環境ですね。

(Lmaga.jp)

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