自由な解釈、京都で2作家の空間競演

小出麻代(1983~)と越野潤(1967~)。世代、作風、素材が異なる2人が競演する展覧会『生業・ふるまい・チューニング』が、2月22日から「京都芸術センター」(京都市中京区)で始まります。

小出麻代は、主にインスタレーション作品を発表している作家です。作品の素材は、ガラス、鏡、電球、紙片、糸、版画など。素材同士が響き合ってある種の詩情を醸し出すのが特徴で、明確なメッセージを訴えると言うより、繊細なニュアンスを通して観客一人ひとりが自分なりの物語や世界を紡ぎ出すように誘います。小さく打てば小さく響くし、大きく打てば大きく響く、そんなタイプの作品です。

一方、越野潤は絵画や版画を制作しており、作品単体の展示はもちろん、インスタレーションとして作品を配置し、空間を作り出す仕事もしています。彼の作品は極めて限られた色を用いており、図像を描くことがありません。こういう作品はミニマルアートと呼ばれますが、越野の場合、空間への関心がほかの同系作品よりも強く感じられます。詩で例えれば、小出麻代はたおやかな叙情詩、越野潤は硬質な音響詩といったところでしょうか。

この対照的な2作家の作品を同時に体験するとき、鑑賞者の内面はどのように移ろうのか。そこに本展の醍醐味があります。小難しく考える必要はありません。自分の感受性を素直に作品にぶつければ、おのずとリターンがあるでしょう。答えはひとつではありません。多様な解釈を許すこと。それが現代美術の面白さなのです。

文/小吹隆文(美術ライター)

(Lmaga.jp)

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