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実力派女優・橋本愛が語る、演技へのスタンス

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2011年の長編デビュー映画『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』で、国内外に衝撃をまき散らした瀬田なつき監督の最新作『PARKS パークス』。東京「井の頭恩賜公園」と吉祥寺の街を舞台に、50年前の楽曲に込められた恋人たちの記憶、現代に生きる3人の若者たちの夢をリンクする青春音楽ムービーだ。主人公の女子大生・純を演じたのは、若手実力派女優の橋本愛。舞台挨拶で大阪を訪れた橋本に、話を訊いた。

取材・文/ミルクマン斉藤 写真/バンリ


「ずっと肩の力を抜いていられたので楽しかった」(橋本愛)

──瀬田監督の作品はすでに何本かご覧になっていたとか。

はい。特に『5windows』(2012年)が大好きで、出演のお話をいただいて一緒にやれるのはうれしいなと思って。脚本を読むと何かがあるだろうなと思ったし、瀬田監督独特の軽やかな映画になるんじゃないかなと。そういう予感がしたからすごくうれしかったですね。

──瀬田監督らしい「自転車シーン」で始まるオープニングですが、撮影はどのくらいで?

去年(2016年)の、5月から6月の1カ月間でした。でも桜のシーンだけは、クランクインの前に1日だけ撮ったんです。

──橋本さんが「井の頭公園」を走り抜けていく間、さまざまな人が交錯しますが、その位置関係が見事です。あれはあらかじめ設計されたものですか?

いえ、全然。ゲリラでやっていたので。最初のずーっと自転車漕いでいるシーンはけっこう早朝の6時前とかに撮影して。人がいないうちにやろう、ということだったと思うんですが、1時間くらいすぐに経つから通勤ラッシュになっちゃって。どんどん人が来るし、でも素材撮れてないからって、どんどん撮っていって。なので、ラジオ体操とかしてる人たちも全然仕込みじゃないんです。

──それはスゴいですね(笑)。

みんなで「面白いなぁ」って言いながら撮ってました。公園の人たちの「何をやってるんだろう」って目線も一切入らず、日常的な画が撮れたので本当にスゴいと思います。

──終盤、ハル役の永野芽郁さんを追いかけてくシーンがあるじゃないですか。あれもそう?

あそこの交錯は、エキストラの方々にやってもらいました。でも、普段のシーンもいろんな人が映りこんで成立したシーンがとても多くて、すごく自然でしたよね。

──橋本さんとしても、今回の『PARKS』はいつも以上に等身大の役柄ですよね。

純ちゃんは、ちょっとお調子者なところもあるので。大学の教授に「単位ください!」っていうシーンがありますけど、ああいう図々しさを演じるのが一番難しかったんです。純ちゃんは普段もちょっとだらしない女の子だし。でも、私もそうだし、みなさんにもそういう部分ってきっとありますよね(笑)。それを隠しているだけだったり、どうにか頑張って生きているだけだと思うので。そういう意味ではすごく楽でしたけど、だからこその難しさもたくさんありました。でも、ずっと肩の力を抜いていられたので楽しかったですね。



「第三者の映像がまず浮かんじゃうんです」(橋本愛)

──先日、瀬田監督にもインタビューさせていただいたのですが、そのとき橋本愛さんは、監督がどういう方向性を求めてこの画を撮っているか探りながら考えつつ、でも楽しんで演じている、とおっしゃっていました。

そうですね、なんかそう考えないと安心しないというか。

──それはいつもですか?

いつもですね。基本的に、映画が好きで普段からよく観ていることもあって、なんとなく観客の目線というか、第三者の映像がまず浮かんじゃうんですよね。どうやったらうまく演技がハマるかなぁとか、ああいう雰囲気を出すにはどういう動きをすればいいのかとか、そういうところをすごく考えてしまうんですよね。

──共演される俳優の間で、そうした演技のスタンスは希少な部類なんでしょうか。

いや、どうなんですかね? みんながどうやってるのかは分かりませんが、ただ、感覚的にやられる俳優さんもいますよね。私は逆にそれが憧れというか、そうできたらいいなと思うことがあります。考えるの疲れるし(笑)。だからといって、感覚的にやり過ぎてしまうのも怖いですね。

──ある種、極めて慎重に?

すごく慎重だと思います。

──この物語のメインは橋本さんと永野さん、2人の女の子同士の関係だと思います。年齢的・性格的にはお姉さんと妹的な感じであり、恋愛関係じゃないけどシスターフッド的な関係であり、最後には同一性を匂わすようなメタフィクション(註1)的な関係にまで至りますよね。これまでの橋本愛さんの作品には、『ワンダフルワールドエンド』(2015年・松居大悟監督)とか朝ドラ『あまちゃん』(2013年)とか、シスターフッド的な関係を扱ったものが印象的なのですが。
註1:ノンフィクションをフィクションに見立てる表現手法

確かに、女の子と一緒にやるのが多いですよね。この前、行定勲監督(註2)にも「ラブストーリーというか、恋愛するという画が浮かばない」と言われました。自分のことをめちゃくちゃ分析して考えちゃうからか、誰かの妹になることがあまりないんですよ。ちっちゃい子を可愛がる役が多い。
註2:橋本愛は行定監督の熊本映画プロジェクト短編『うつくしいひと』(2016年)のヒロイン役を演じている

──芯があるというか、他人からの干渉をあまり許さないような、凜とした雰囲気が橋本さんにあるから。

そうかもしれないですね。雰囲気というか、見た目的にあまり隙がある感じに見えないんじゃないですかね(笑)。

──今回も、トキオ役の染谷さんも割って入る隙がない感じでしたね(笑)。

そこは、監督が言ってたのですが、「トキオくんは純ちゃんのことを好きっぽいところもあるけど、純ちゃんは全然見てもないし気付いてもない」って、そんな関係性もすごくしっくりくるし。元々付き合ってた恋人とお別れしてから、それをちょっと引きずってるみたいなシーンもあったんですけど、編集上ばっさり切られていて。脚本もブラッシュアップされていくうちにそういう描写がどんどん無くなりました。

──彼氏と別れて、壁から想い出の写真を外すと、窓から風が吹き入ってくる。この風も作品を通してとても印象的かつ暗示的であるのですが、元カレとの写真が散らばるとともに、それに入れ替わるようにハル(永野芽郁)がやってくる。いわば、男性関係が吹き飛ぶと同時に、いきないシスターフッド的な匂いが漂ってくるんですよ。

そうですね。(純のアパートの階上と階下で)ハルが純ちゃんを見る視線もそうだし、あそこで2人の関係性も一瞬で出来上がったように感じます。



「真似ではなく、ちゃんと作ることは使命だと」(橋本愛)

──そして、この映画で大きな要となっているのが音楽ですよね。アパートでハルとじゃれあうようにして純ちゃんが弾き語りはじめるシーンも最高ですが、橋本さんは2年ほど前からギターを始められていたとか。

そうです。超自己流ですが、趣味でやっていて。ただ、この映画に入る1年くらい前から触ってなかったので、難しいテクニカルなことはひとつもできないと言うことだけはお伝えして。だから初心者でも弾きやすい曲になっているんですね。フォークミュージックらしくシンプルなのに、どこか違和感があって複雑。でも、すごく艶やかな曲になっていてスゴいなぁと。

──シンプルなコード進行だからこそ、60年代の学生フォークっぽいところが出てますしね。楽器のプレイ面でトクマルシューゴさんのアドバイスはあったんですか?

いや、特になかったですね。だから本格的な練習みたいなことはしてなくて。何回か弾いて慣れていくってことでしたね。ただエレキを持って「ジャーン!えへへ」みたいなシーンの、その手の動きだけ見てもらいましたけど。

──パンキッシュに暴走するシーンですね。

そう。純ちゃん自身も、あまり触ってなかったという設定でしたし、そんなに詰めて練習する必要性もなかったというか。

──この映画は、過去の世代と今の世代を「音楽」で繋ぐというのが、ひとつの軸になっています。純ちゃんは途中で迷走しているのを感じたとき「過去の人の思いは判らない」とか「過去の音楽を再構成して新しい音楽を作ることが私たちのできることじゃないか」みたいなことをちょっと投げやりに言うんだけど、そこに過去の遺産を今に繋げる/未来に繋げることの難しさ、あるいは歓びがあると思うんです。

はい、そうかも知れませんね。

──さきほど、普段からよく映画を観るとおっしゃってましたが、いろいろなところで過去の作品を観に映画館へ出かけているというお話も聞きします。そんな橋本さんの存在は、密かに映画ファンをとても勇気づけているんですが(笑)、昔の映画を観て、過去の演技なり演出なりを、今の自分に反映させたりすることはありますか?

う~ん、個人的にはそういう自分の勉強としてまったく観てなくて。単純に、今でも名前の残っている、スゴい力のある人たちが作ってきた映画って、どういうものなんだろうって興味で観てきたので。それが自分のお芝居になにかしら影響があるかというと、自分ではよくは分かってはないんですね。ただ、映画がちゃんと栄えていたというか、今よりもっと娯楽として浸透していた時代の人たちが、名作と謳ったり、感動していたものがいったいどんなものなのか、というところに関しては今にも通じるところはあると思います。

──やはりクールで分析的な見方ですね。

脚本を読んでいるとき、こういう描写はすごく良いなぁとか、あのとき観た映画みたいになると良いなぁとか、そういうのは時々あります。けど、それももちろん真似ではなくて、もうちょっと超えたところのオリジナル性みたいなものをちゃんと作ることは使命だと思っていますね。

──近々に公開される『美しい星』(5月26日公開・吉田大八監督)では、美と強さの象徴のような役を見事に凛として演じてられてますが、これからやってみたい役などありますか?

それは基本、無いんですけど・・・それじゃ、面白くないですね(笑)。う~ん、宇宙人も幽霊も妖怪もやったしなぁ。あ、ちょっと抽象的ですけれども、年齢に相応した役をやっていきたいですね。これから歳を重ねていくときに、その年齢のかたが共感できるような何かを含ませた役というのをちゃんとずっと演っていければ、おばあちゃんになってもちゃんとうまくいくんじゃないかなと。あまり若さに執着したくないなと思っています。


(エルマガジン)

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