西村一孔編 1年で散った豪腕 22勝で新人王

 猛虎の長い球団史の中で、最も鮮烈に咲き、最も短く散った豪腕投手と言えば誰か‐。本紙評論家・小山正明氏は間髪入れず「西村一孔」と答えた。1955年に彗星のように現れ、22勝を挙げて新人王に輝きながら、故障でその後を棒に振った。今回の「猛虎豪傑列伝」は、そんな西村氏の素顔に迫ります。

ええ身体しとった

 僕より3年遅れて入団してきた投手が、この西村一孔やった。1年目に22勝して新人王を獲るんやけど、投げ方は全然ダメで「絶対肩を壊しよるな」と思っとった。そしたら案の定や。あの1年でほとんど終わってしもた感じやもんな。

 しかし、ええ身体しとったよなあ。しかも、向こうっ気が強いから、ピッチングも「行け行けドンドン」や。今の投手で言うたらどんなタイプかな。投げ方自体がよおなかったから、何とも言えんが、タイプで判断するなら久保田やろか。外角低めにダーン!!と決めとったもん。それは見事な球を投げてたよ。今でも強烈に印象に残っとるけど、あんな球を投げる投手は今はおらんね。

 それと縦割れの大きなカーブや。首を振って変な格好から投げてくるもんやから、あのカーブは相当打ち辛かったと思うよ、打者は。ただ、あの投げ方では長続きはせんよな。渡辺省三さんしかり、小山正明しかり…。うまく投げてきている投手というのは、そのフォームに無理がない。いい投げ方の人は、いい状態が長く続く。これは今も昔も変わらん。

巨人に真っ向勝負

 本当に短い期間の活躍やったけど、彼は逃げることをせんかった。それでも「引くところは引く」というように、投球を心得とったな。あの22勝した1955年(昭和30年)は、ライバルの巨人に対してもよく勝ってたんと違うか。

 当時の巨人は、川上さん(哲治氏=元監督)を筆頭に、ウォーリー・与那嶺さん(元中日監督)な。これはよかったがな。打てる、走れる、守れる外野手でなあ。それに宇野さん、南村さん…。遊撃は広岡さん(達朗氏=元西武監督)な。打線は強かったよ。それに対して真っ向勝負していくんやから、それは気持ちよかったで。

 あの年、西村とは対照的に僕はわずか7勝に終わった。前年の途中に右肩に違和感を覚え、1カ月ほどリタイアしたことがあった。それが年を越してもまだ影響しとったんやろう。球が全く走らんかったんよ。バンバン投げる西村を見とって羨ましかった。「俺も治ったらやったるで!!」と思ったもんや。

夜も豪快やった

 こんなことを書くのは何やけど、西村は“夜”が好きやった。甲子園での試合が終わったら、真っ先に“ミナミ”へ行くわけや。難波のとあるスナックの常連になってたんやけど、そこに「SKD(松竹歌劇団)」に所属している若い子たちも来とったんやな。今の“タカラヅカ”のようなものを松竹が持っていて、その中の1人と親密になってな。その先は…もう書かんでええわな。

 肩の故障があって、実働はわずか4年。今考えても惜しいわなあ。しかし、あの1年はタイガースの球団史にさん然と輝いとるよ。

〈WHO’SWHO〉

▽西村 一孔(にしむら・かずのり)1935年10月11日生まれ。山梨県出身。現役時代は投手。都留高から全藤倉を経て、55年阪神入団。同年、2リーグ分立後では球団2人目の開幕投手となり、22勝17敗、防御率2・01で球団初の新人王獲得。60年に現役引退し、61年に2軍投手コーチを務めた後に退団。通算成績は100試合31勝20敗、防御率1・95。99年3月1日死去。

▽小山 正明(こやま・まさあき)1934年7月28日生まれ、75歳。兵庫県出身。高砂高から53年、阪神にテスト生として入団。62年には27勝を挙げ、優勝に貢献。64年、山内一弘との“世紀のトレード”で、東京(現ロッテ)に移籍。73年の大洋を最後に現役引退。最高勝率・最多奪三振・沢村賞(いずれも62年)、最多勝(64年)。通算856試合320勝(歴代3位)232敗、防御率2・45。01年、野球殿堂入り。現本紙評論家。

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