日南学園・谷川、母に聖地で恩返し
「全国高校野球・1回戦、東邦11-3日南学園」(12日、甲子園)
その姿を探した。一塁側アルプス席前であいさつを終える。日南学園(宮崎)の谷川瑛久外野手(3年)は最後のユニホーム姿を母・真弓さん(44)に見せたかった。
「母に育ててもらった。朝から夜まで働いていた。いつも頑張っていた」。甲子園でプレーできたのは支えがあったから。感謝の思いが胸にあった。
真弓さんは女手一つで兄・彬大さん(20)と2人の息子を育てた。会社員として残業もこなし、多い日は13時間も勤務した。「あの子たちを見ていたら、私も頑張らなくてはいけない」。息子の姿に勇気づけられ、弱音を吐いたことは一度もない。
日南学園入学後も、真弓さんは宮崎市を離れて寮生活を送る息子のために月に1、2度、車で日用品などを届けた。仕事の合間を縫って日南海岸を1時間以上も走った。息子は「本当にうれしかった」と感謝する。親子で戦った高校野球は、3打数無安打で終わった。しかし、母は「ここに連れて来てもらった。夢がかないました」と涙を見せた。
谷川は卒業後、宮崎市内での就職を希望する。母との生活がまた始まる。「1つ恩返しができた。でも、これだけでは足りない。育てて良かったと思ってもらえるように、もっと親孝行していきたい」。新たな夢に向け、再び走りだす。