【馬主・北島三郎7】ブラックは「神様からの贈り物」

 「馬主・北島三郎7」

 「ブラックはオレにとっては息子のようなものだ」。北島は常々こう言い、愛情を持って接してきた。

 歌手という職業柄、また大御所という立場。いいことばかりでなく悪いことが報じられることがある。それでも人気商売と割り切り受け入れている。だが同じ報道でもブラックに関しては違った。予想とはいえ、バッサリと切り捨てる発言には、怒りをあらわにしたことも。

 「それぞれ見解はある。でも言い方があるのではないか。オレにとっては息子のようなもの。それを、あからさまにけなされたら気分は良くない」

 ブラックも孝行息子のような見事な走りで応えた。

 2013年で紅白を卒業。15年1月29日に劇場での座長公演も終えた。ブラックはその2日後にデビューし新馬勝ち。同年の菊花賞では50年超の馬主歴で初のG1タイトルをもたらした。「頸椎(けいつい)性脊髄症」の手術をした直後の16年11月にジャパンCを制覇。今年も8月に白内障の手術をし、10月に天皇賞・秋を勝利。体が万全でない苦しい時に好結果を運んできた。

 「頑張ってきたオレに、ご褒美とばかりに走ってくれて。そして調子悪い時には、勝って元気をくれた。もう本当に神様からの贈り物です」

 そんな愛馬のラストラン。「多くの方がまだ走れると言ってくれます。でもここまでよく頑張ってくれた。次なる道もある。そこに導いてあげるのも親の役目です」

 ブラックとやり残したことがある。「勝利の口取り写真はあるけど、ブラックとのツーショットが1枚もない。引退して北海道に行く前、最後に一緒に写真を撮るんだ」。本業ではみせたことのないやさしい笑顔で言った。北島がブラックを語る時、その姿はいつも好々爺(や)のようだった。=敬称略=

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