平均9462円アップ 企業の7割「今春の新卒初任給引き上げ」 小規模企業は“原資の壁”で対応苦慮
株式会社帝国データバンクは、2026年4月入社の新卒社員の初任給について企業アンケートを実施。1541社から回答を得た結果を公表した。
HPや求人票に明示していた、メインとなる学歴・職種の初任給を前年度から改定したか尋ねたところ、回答企業のうち、「引き上げる」企業の割合は67.5%と前年度比3.5ポイント低下したものの、7割近くに達した。一方、「引き上げない」企業は32.5%と3割台に上昇した。
初任給を引き上げる企業からは、「人材確保、インフレ対策のため」(メンテナンス・警備・検査)といった声が聞かれた。また、「物価高で経営は非常に苦しい状況にあるが、人材不足のため人材確保を目的に引き上げに踏み切った」(建設)のように、厳しい経営環境にありながらも、人材確保のため対応を迫られる企業が少なくなかった。他にも、「賃金テーブル全体のベースアップにともない初任給も引き上がった」(機械・器具卸売)といった声も寄せられ、賃上げの流れが強まるなか、ベアの実施が初任給引き上げにつながったケースもみられた。
一方、初任給を引き上げない企業からは、「引き上げたいが、既存社員との賃金バランスを考えると難しい。既存社員に対して大幅な賃上げを行える体力がない」(飲食料品・飼料製造)という声が寄せられた。「中小企業は物価高騰の影響を大きく受けており、対応が難しい」(その他サービス)との指摘もあり、既存社員の給与が新入社員を下回る“逆転現象”への懸念や、賃上げ余力の乏しさが浮き彫りとなった。その他、「初任給は2025年度に引き上げたため、2026年度は据え置きを予定している」(化学品卸売)と、前年度の引き上げを理由とする企業も一定数みられた。全体として、対応に苦慮する企業の姿がうかがえた。
「引き上げる」と回答した企業の割合を規模別にみると、「大企業」(65.6%、前年度比4.0ポイント減)と「中小企業」(68.2%、同3.2ポイント減)はともに6割台後半だった。一方で、「小規模企業」は同12.2ポイント低下して50.0%にとどまり、全体と比べても17.5ポイント下回るなど、「小規模企業」が取り残される結果となった。
資金余力が限られる「小規模企業」では、「収益が伸びない中で経費だけが増え、人件費を上げたくても実質的には難しい」(不動産)といった声が聞かれた。最低賃金の上昇への対応も負担が大きく、厳しい経営環境を背景に、初任給の引き上げに踏み切れない企業は少なくない。
前年度からの引き上げ額を尋ねたところ、「1万~2万円未満」の割合が47.4%で最も高く、次いで「5千~1万円未満」(31.6%)が続いた。平均額は前年度比348円増の9462円だった。規模別にみると、「大企業」の平均引き上げ額は9749円、「中小企業」は9371円と、「大企業」が「中小企業」を400円近く上回った。
初任給の金額を尋ねたところ、「20万~25万円未満」が61.7%(前年度比0.4ポイント減)で最も高い。次いで、「25万~30万円未満」が同6.4ポイント増の17.8%と2割近くで続き、「15万~20万円未満」(17.4%)を上回る結果となった。「20万円未満」は合計17.8%と、前年度(24.8%)から7.0ポイント低下し、初任給の上昇傾向がうかがえる。
規模別にみると、「大企業」では「25万円以上」が30.0%へ達したのに対し、「中小企業」は17.0%にとどまり、企業規模による初任給水準の差が依然としてみられる。
原材料費の高騰や物価上昇で企業コストが膨らむ中、特に中小企業では、初任給引き上げに充てる原資の確保が難しいとの声が複数あがっている。また、全体の賃上げを行う余力が乏しく、“逆転現象”への懸念にも対応できず、引き上げに踏み切れない、または小幅にとどめる企業もみられた。実際、「中小企業」では「大企業」の賃上げ動向に追随して引き上げに踏み切る動きが広がり、実施割合は「大企業」を上回ったものの、原資の乏しさから引き上げ幅は小幅にとどまり、初任給水準も比較的低い状況が続いている。他にも、前年度に引き上げたことを理由に、今年度は据え置く企業もみられた。このような事情が重なり、初任給を引き上げる企業の割合は前年度をわずかに下回った。
初任給の引き上げは採用面で一定の効果が期待される一方、社内の賃金バランスの調整や人件費総額の増加への対応も避けて通れない課題となる。こうした環境下でカギとなるのは、中小企業における“価格転嫁の進展”だ。取引先とのコミュニケーション強化や情報共有の仕組みづくり、コストの見える化など、価格転嫁を実現しやすくするための企業努力に加え、それを後押しする環境の整備など、政府・行政による多様な支援策の充実も不可欠と言える。
(よろず~ニュース調査班)
