“ジョブ型雇用”はサラリーマンの救世主となるか メリット&デメリットとは【社労士が解説】
大手メーカーで総合職として働く男性のAさんは、数年ごとのジョブローテーションで希望しない部署に配属されたり、予期せぬ転勤を命じられたりと、会社主導のキャリア形成に疑問を感じていた。
Aさんが「もっと一つの分野を極めたい」「家族との時間を大切にしたい」と考えていた矢先、会社が「ジョブ型雇用」の導入を発表。周囲は「実力主義で給料が下がるかも」と不安がっているが、彼は「これって、自分の希望する働き方を実現するチャンスなのでは?」と期待を抱き始める。
ジョブ型雇用は、働く個人にどのようなメリットをもたらすのだろうか。社会保険労務士法人こころ社労士事務所の香川昌彦さんに聞いた。
ー従来の「メンバーシップ型」と「ジョブ型」の決定的な違いは何ですか?
一言で言えば、メンバーシップ型は「人に仕事をあてがう」仕組みであり、ジョブ型は「仕事に人をあてがう」仕組みです。
メンバーシップ型は、まず「人」を採用し、入社後に適性を見て人事や営業、製造などさまざまな職務を経験させます。これはジェネラリストを育てるには適していますが、個人の職務は限定されません。
対してジョブ型は、プログラミングや営業といった特定の「仕事」がまず存在し、そのパズルのピースに合うスキルを持つ人を採用・配置します。会社への「入社」ではなく、職種への「入職」という側面が強くなるのが決定的な違いです。
ージョブ型雇用で働く従業員が得られるメリットとはどのようなことがありますか。
最大のメリットは、自分のキャリアを自分でコントロールできる点にあります。職務内容や勤務地が契約で明確に定められるため、本人の意に沿わない不本意な配属や、突然の転勤を命じられるリスクが低くなります。
また、特定の分野を極めることで、社内だけでなく労働市場全体で通用するスキルを磨くことができます。専門性が高まれば、転職市場での価値も上がり、結果として一つの会社にしがみつく必要がなくなるでしょう。これは、自律的なキャリア形成を望む人にとって非常に大きな武器となります。
ー逆に、ジョブ型雇用のデメリットやリスクにどう備えるべきですか。
ジョブ型には、その仕事がなくなった時に社内で別の仕事を探すのが難しいというリスクがあります。メンバーシップ型なら「工場が閉鎖しても営業へ」という調整が可能ですが、ジョブ型は原則として契約した職務がなくなれば雇用リスクに直結します。
また、技術の陳腐化も深刻な問題です。例えばAIの進化によって自分のスキルが不要になれば、一気に価値が失われます。
これに備えるには、会社に教育を依存せず、常に最新のニーズを把握して自分をアップデートし続ける「自己研鑽」が不可欠です。会社は場所やツールは提供してくれますが、成長の責任は自分にある。その覚悟を持つことが、ジョブ型時代を生き抜く防衛策となります。
◆香川昌彦(かがわ・まさひこ)社会保険労務士/こころ社労士事務所代表
大阪府茨木市から労使の共存共栄を目指す職場づくりを支援。人材育成・定着のための就業規則整備や評価制度構築、障害者雇用、同一労働同一賃金への対応といった実務支援は、常に現場の視点に立つ。ネットニュース監修や講演にて情報発信を行う一方で、SNSでは「#ラーメン社労士」としても活動し、親しみやすい人柄で信頼を得ている。
(よろず~ニュース特約ライター・夢書房)
