小学生時代に“祖父・横井英樹氏の事件”でいじめ体験 ヒップホップで「いじめ撲滅」Zeebraら13人でPV啓発

 子どもたちの「いじめ問題」が社会問題化して久しい。そんな状況を背景に、日本を代表するヒップホップ・アクティビストのZeebra(ジブラ)が、米国の刑務所で過酷な体験をした後に日本で社会奉仕活動を続ける「一般社団法人Homie子ども未来育成会」代表理事の井上ケイ氏とタッグを組んだ。第一線で活躍するラッパーやDJらが集結して、いじめ撲滅チャリティーソング「No Bully(ノー・ブリー)」のPVを今春完成させ、初秋の頃にライブも計画している。両氏がよろず~ニュースの取材に対し、思いを語った。

 「アクティビスト」とは直訳すれば「活動家」といった意味になるが、Zeebraにとって「ヒップホップを通して社会をより良い方向に変えていくために活動する人」という生き方を示す。その「活動」の一つがいじめ撲滅プロジェクト。メンバーはZeebraをはじめ、OZworld、KEIJU、IO、JESSE(RIZE/The BONEZ)、ANARCHY、D.O、漢 a.k.a. GAMI、BOO a.k.a. フルスイング、田中雄士、GDX a.k.a. SHU、般若、そしてバックトラックを作るDJ WATARAIの13人だ。

 Zeebraは1971年生まれ。自身も子ども時代にいじめを体験し、それがバネになったことを当サイトに明かした。

 「小学生の時、うちの祖父(実業家・横井英樹氏)のホテルが焼けた時(※82年2月に発生したホテルニュージャパン火災)、ふだん接触のない上級生とかに『人殺しの子ども』と学校で言われました。別の上級生とキックベースやった時は、セーフだったのに『お前はアウトだ』とか言われたりして、すげぇ悔しかったですね。確かに、祖父は悪いですけど、そこからいじめられることに不条理みたいなことをものすごく感じた。でも、おかげさまでそれが自分のバネになって、他のヤツより頑張ろうと思えるようになったことは間違いない。逆に言えば、いじめられている子にはポテンシャルがあるということ」

 米国の黒人文化であるヒップホップとは、ラッパー(MC)、DJ、ブレイクダンサー、グラフィティアーティストらによって構成される複合的なカルチャーの総称。その潮流が日本にたどり着いた83年頃、洗礼を受けた。

 「日本って実はアメリカから一番早くヒップホップがたどり着いた国なんです。『ワイルド・スタイル』という、ヒップポップの基本中の基本みたいな映画があって、米国以外で初めて(83年に)上映された国が日本で、僕より10歳くらい上の第1世代の人たちが『新しい音楽だ』と飛びついた。自分はその時、12歳くらいだったので、翌年、まずはブレイクダンスから入って、DJをやり始めた」

 ヒップホップとの出会いを振り返った上で、Zeebraは「いじめ撲滅」というテーマに対する、この音楽スタイルの有効性を説いた。

 「普通の歌より、ラップには3~4倍の歌詞がある。それだけ言えることがいっぱい詰められ、具体的なことも言えるし、何人も参加して、それぞれの意見を詞にして数珠つなぎでラップのマイクリレーができる。我々も12人いれば、みんな一緒ではなく、それぞれ少しずつ違う意見であったりするけど、確実に言えることは、全員がポジティブな意見を言っているということ。その中のどこかに引っかかって、『ああ、そうか』と思ってくれたら」

 61年生まれのケイ氏は「自分たちと今の時代はいじめの体質が違う。そこが問題です。自分らの時代は、いじめている子がいても、他の子からはいじめさせなかった。他のやつがいじめに来たら、自分はこいつを守ってあげる。ドラえもんの『のび太とジャイアンの関係』が昔のいじめだった。今は『1対学校全員』みたいになってるんで、そこを改善しないと、最後に自殺するしかなくなっちゃう」と指摘した。

 文部科学省は昨年2月、「犯罪に当たる重大ないじめ事案は直ちに相談・通報を」と各都道府県の教育委員会に要請したが、ケイ氏は「それでも学校は“いじめ”を認めない。汚点になるから。いじめている子どもは『どうせ(報告)されないからやっちゃえ』とエスカレートして悪い方向に行く。いじめがない学校なんてないですからね。きちんと報告して警察が介入すれば、ひどいいじめはなくなるはずなのに。そこはもっと徹底しないとダメだと思います」と問題提起した。

 Zeebraも「いじめは『あるのが当たり前』だと思って接するべき」と指摘。その上で「中学や高校、慶応大学でもアート・センターの教員としてヒップホップの授業を持っていて、20年近く前には(群馬県の)赤城少年院でライブもやった。うれしいことに、その時の子たちが大人になってお子さんとか連れてライブに来てくれた。そこからアーティストになった子もいる。ヒップホップって、まさに人生をやり直すのに一番むいてるツールだと思う。今回のメンバーで番外編のラップ授業もしながら伝えられたら」と構想を描いた。

 ケイ氏は「今回、教育委員会も後ろに付いてもらいます。学校の朝礼とか給食の時間とかにPVを流してもらえば、いじめる子も、いじめられている子も、毎週聞いて耳につくと思うんですよ。歌詞とか覚えている内に、『自分たち、何やってんだ』と分かってくれれば」と期待を込めた。

 まだ、スタート地点。校内では解決できない「いじめ」という根深い問題に外から向き合っていく。

(デイリースポーツ/よろず~ニュース・北村 泰介)

関連ニュース

編集者のオススメ記事

サブカル系最新ニュース

もっとみる

    主要ニュース

    ランキング(芸能)

    話題の写真ランキング

    デイリーおすすめアイテム

    写真

    リアルタイムランキング

    注目トピックス