大河『光る君へ』一条天皇の即位式 着座の「頭」は誰が置いたのか 異様な逸話のナゾ  識者が語る

 NHK大河ドラマ「光る君へ」第11回「まどう心」。花山天皇が藤原兼家の策謀により退位され、わずか7歳の一条天皇(円融上皇と兼家の娘・詮子との子)が即位されます(986年)。一条天皇の御即位の日の異様な逸話を『大鏡』(平安時代後期に編纂された歴史物語)は収録しています。

 それは、大極殿(大内裏朝堂院の正殿)の高御座(即位・朝賀などの大礼の際に天皇が着座される)に血に塗れた生首が置かれていたというものです。大河ドラマ「光る君へ」第11回目では、この生首の具体的描写はありませんでしたが、『大鏡』には「髪つきたるもの」(有髪)の頭(生首)と記されているだけです。この衝撃的事件は、すぐに藤原兼家に報告されます。

 しかし、その事件を報告されても、兼家は眠そうな様子で言葉を発せず。報告者が再度、同じ事を伝える時には、ウトウト眠っていたそうです。さて不思議なことと報告者が感じていると、突如、兼家は目覚め「大極殿の装飾は終わったのか」と尋ねるではありませんか。

 兼家は生首の件を知らぬ存ぜぬで押し通したいのだと悟った報告者は、そのまま何も言わず、その場を立ち去ります。人の死や血というものは当時、穢れと認識され、忌避されていました。血に塗れた生首が高御座に置かれていたとなると、普通は即位の儀式は延期となってしまうでしょう。

 しかし、めでたい盛儀を急に取りやめてしまうのは、兼家にとって本意ではなかった。よって、狸寝入りを決めこんで、生首の件を聞かぬことにしたのです。即位の儀は滞りなく終了した事を『大鏡』は兼家の機転のお陰としています。

 それにしても、高御座に生首を置くというような、物騒で不敬なことを一体、誰が実行したのか。『大鏡』はその犯人については何も語っていませんが、想像を逞しくするに、兼家の謀略により退位に追い込まれた花山天皇方の仕業ではないでしょうか。平安時代と言うと、優雅な時代だったと思われるかもしれませんが『大鏡』の逸話は我々のその想像を見事に突き崩してくれます。

(歴史学者・濱田 浩一郎)

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