サル痘の感染拡大 ロシアが生物兵器に利用?国際政治学者は「戦況不利になれば」と危惧

 欧州や北米などで感染症「サル痘」の患者が相次いで発生し、日本への影響も懸念されている。サル痘は根絶した天然痘に似た感染症で、アフリカのリスの仲間が持つサル痘ウイルスが原因という。厚生労働省は感染が疑われる患者の情報提供を自治体に要請。後藤茂之厚生労働大臣は27日、感染予防に有効とされる天然痘ワクチンをテロ対策の一環として国内で生産・備蓄していることを報道陣に明かした。一方、ウクライナ侵攻で苦戦するロシアが生物兵器としてサル痘を利用する可能性を示唆する海外の報道も一部にある。ジャーナリストの深月ユリア氏が、ウクライナ出身の国際政治学者に見解を聞いた。

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 【サル痘が感染拡大、「異常事態」】

 「サル痘」が欧米中心に世界で感染拡大している。サル痘の症状は天然痘に似ていて、発熱と発疹を伴う。国立感染研究所のデータによると死亡率は0-11%で、アフリカの医療体制が不充分な地域で小児が感染して放置した場合は致死率が高くなるが、現状、先進国での死亡例は報告されていない。予防には一部の天然痘ワクチンが有効だとされる。

 従来、サル痘の感染はアフリカ地域が中心で患者からの二次感染は数%といわれていたが、今回の欧米での急速な感染拡大はWHOいわく「異常事態」で、 WHOは感染拡大の可能性を警戒、我が国の外務省も発生国への渡航に注意を呼び掛けている。

 【ロシアのバイオテロ!?】

 今回のサル痘感染拡大の「異常事態」が「バイオテロではないか」という説もある。そして、一部の報道はサル痘まん延をウクライナに侵攻中のロシアと関連付けている。というのも、かねてよりウクライナ戦争で苦戦中のロシアが生物兵器を使用する可能性がささやかれてきたのだ。

 ロシアは3月16日に「ウクライナが生物兵器を研究している」というフェイクニュースを流していたが、ロシア軍には攻撃を自作自演する「偽旗作戦」ともとれる動きがあるとされ、米国とNATOはロシアが生物兵器・化学兵器を使用する可能性を懸念していた。

 そして、今回のサル痘まん延で、英国のタブロイド紙「The METRO」「Mirror」などの報道で、ソ連の生物兵器計画の実質的責任者で米国に亡命した微生物学者・生物兵器専門家ケン・アリベック博士の「生物兵器不拡散プロジェクト(CBWNP)」(1998年)における報告書が注目されている 。報告書と同氏がソ連の生物兵器開発を暴露した著書「バイオハザード」の内容は次の通り。

 ・ソ連では天然痘ウイルス、サル痘ウイルス、ワクシニアウイルス、マウスポックスウイルス、ウサギポックスウイルスなどのウイルスが生物兵器として利用する研究もされていた。

 ・ソ連崩壊後、 天然痘ワクチンができてから、ロシア国防相は天然痘の生物兵器利用を断念したが、 サル痘ウイルスの研究は90年代までは行われた。(以降は不明)

 ・ロシア軍の兵器庫には危険なウイルスが複数保管されているだろう。

 実に恐ろしい研究である。では、今回のサル痘も、ロシアの生物兵器に利用される可能性はあるのだろうか。

 【国際政治学者にインタビュー】

 ウクライナの国際政治学者アンドリー・グレンコ氏によると、「現時点では何とも言えませんが、今後もしロシアが『サル痘がウクライナの生物兵器』だと主張し出したとしたら、ロシアの自作自演の偽旗作戦の可能性はあるでしょう」と指摘する

 今後含め、ロシア軍は生物兵器を使用する可能性はあるのか?

 グレンコ氏は「現在、ロシア軍は東部戦線で有利な状況です。しかし、ロシア軍の戦況が不利になった際に、プーチンがやけくそになって生物兵器含め野蛮な兵器の使用に踏み出る可能性はあります。例えば、どこかの街を制圧したい場合、生物兵器を使ってその街を弱らせてから制圧する作戦に出る可能性はあるでしょう」と推測した。

 今回のサル痘がバイオテロかどうかは、今後の戦況と感染症研究機関の情報を注視しないと何とも言えないが、生物兵器の使用は1833か国が加盟している「生物兵器禁止条約」 で禁止されている。どの国も民間人を無差別に攻撃する兵器を決して使用すべきではない。

(ジャーナリスト・深月ユリア)

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